モニカ・シャヒさんは今日、ネパールに新たな歴史を刻みました。性別欄で女性または男性以外の選択が可能な旅券を取得した、最初のネパール人となったのです。シャヒさんの長年にわたる活動の結果、法制度がついに、自認する性を認めるにいたりました。
ネパールが最初に第3の性を認識するきっかけになったのは2007年。この年、性別は個人が「自らをどう感じるか」を基に法的に認められるべきであり、その選択は「女性」または「男性」に限る必要はない、との判断を最高裁が示したのです。以来活動家たちは、市民権関連の文書や公共トイレ、はては国勢調査にも次々と第3の性を加えることに成功してきました。シャヒさんの旅券には「女性」でも「男性」でもなく、「その他」と記載されています。
旅券にこうした形を反映している国は、まだ数えるほどしかありません。男女の記載しか許されていない旅券のために、シャヒさんのような人たちが旅行するとき、様々な困難に直面する可能性があるのです。ただ、正式な文書上で、男女の枠を超えた性別といった法的認識が示されることは可能であり、そうあるべきだとする政府は増えつつあります。
自らが判断した性自認を公式文書に記録することが、なぜそんなに大事なのでしょうか。生まれた際に与えられた性別ではなく、自認する性別が記載された文書を所持することで、渡航の際の侮辱や、害のある精査を避けられることが、これまでの経験から明らかになっています。そのほかにも、医療制度へのアクセスや学校への入学、投票ほか、基本的な市民生活の場面に参加することが、これまでよりも容易になるでしょう。
対テロにおける人権および基本的自由の促進・保護に関する国連の特別報告者は、次のように述べています。「身分証明書の発給、変更、確証の手続きをより厳格にするといった、渡航文書のセキュリティ強化をめぐる諸措置は、その容姿とデータに変更の可能性があるトランスジェンダーの人びとに、不当な不利益をもたらすリスクをはらんでいる。」
バングラデシュ、インド、オーストラリア、ニュージーランド、ネパール、パキスタン、マルタの少なくとも7カ国が、男女以外の性別を現在何らかのかたちで法的に認めています。オランダの活動家たちは、当たり前になっている性別欄を各文書から取り払ってしまうことが、多様性を受け入れるために効果的かつ敬意のある方法だと主張してきました。
このような方法はまだ一般的とは言えないかもしれません。国連の国際民間航空機関(ICAO)も、旅券所持者の性別を示すことを義務づけています。しかし同時に、こうしたかなり精密な文書でさえも、性別欄にX(不特定)と記載することが法的に認められているのだという事実を忘れてはなりません。モニカ・シャヒさんの新しい旅券は、37年間のこれまでの人生で得られることができなかった、自らの性自認に対する尊重のあかしです。世界各国の政府は、市民が自分の性別を認識するままでいることを認めたネパールの行動から、多くを学ぶ必要があるのではないでしょうか。