Displaced woman, Ashia Suleiman Abbackar, with her two children Fatna, 2, and Shadia, 7, in their hut in a displaced persons settlement in Tawilla, North Darfur, after fleeing violence in their village in September.

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(ヨハネスブルク)-間近に迫った南部スーダンの独立に世界の関心が集まる一方で、ダルフールでの人権侵害が過去6ヶ月の間に増加している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表した報告書で述べた。国連安全保障理事会は、2011年6月11日にダルフールに関する報告を受ける予定だ。アフリカ連合は、ダルフールで続く戦争犯罪の責任者を確実に法で裁くよう一層努力するべきであり、スーダン政府がダルフールの民間人への攻撃や人権活動家の恣意的逮捕を止め、国の治安機構を改革するよう圧力を掛けなければならない。

報告書「闇の中のダルフール:スーダン政府による民間人・人権への絶え間ない攻撃」(全28ページ)は、過去6ヶ月で8年にわたる紛争が激化している実態を取りまとめている。「2010年12月以降、政府による人口密集地帯への攻撃の急増と空爆作戦により、多数の民間人が死傷し、家屋が破壊され、7万人以上が避難する事態になっている。難民の多くは反乱軍と関係のあるザガワ族とフール族の者だ」とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長ダニエル・ベケレは「ダルフール地方は一時メディアの見出しを独占していたが、今や忘れられつつある。スーダンが南北に分離するまでもう1ヶ月しかない。ダルフールで続く政府による人権侵害と戦争犯罪への不処罰を終わらせるため、以前にもまして早急な国際社会の圧力が必要だ」と述べる。

6月8日、国際刑事裁判所(在オランダ・ハーグ、以下ICC)の検察官が、国連安全保障理事会でダルフールでの国際犯罪に関する報告を行う。これは各国政府にとって、スーダン政府にICCへの協力を強く求め、同国政府への圧力を強める重要な機会だ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ダルフールでの犯罪でICCから立件されているスーダン国民は、オマル・アル・バシール大統領を含めて誰一人、法の裁きを受けていない。

このヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書は、2011年1月から5月にかけて南北ダルフールとハルツームで行った調査に基づいて作成されている。複数のヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員が、武力攻撃や人権侵害の被害者ならびに目撃者、政府当局者、弁護士、町村や難民キャンプ内の一般市民など計50名以上に聞き取り調査を行った。

ダルフールで新たに戦闘が始まったのは、12月10日。政府が南ダルフールのホール・アベシェ及び北ダルフールのシャンギル・トバヤを攻撃したのだ。反政府勢力のスーダン解放軍(以下SLA)の大物指導者で、2006年のダルフール和平協定に唯一人署名したミニ・ミナウィ氏と政府の関係が悪化した直後のことである。

政府軍部隊は反乱軍部隊へ攻撃の中で、戦争法違反を続けているが、捜査訴追は全くされていない。例えば、南北ダルフールに加え、東ジェベル・マラでも、武力衝突ならびに民間人への攻撃があった。2010年初頭以来の戦闘で、東部ジェベル・マラでは既に数万人の民間人が山奥への避難を余儀なくされていたところに、である。報告によれば5月中旬だけでも、政府による南北ダルフールへの空爆で20名以上の民間人が殺害されている。

「新たな戦闘は、多くの場合民族を理由とする明らかにパターン化した人権侵害を伴っている。政府が長期にわたり戦争犯罪者達を無罪放免にしてきたことが、終わりのない紛争に拍車を掛けている」と前出のアフリカ局長ベケレは語る。

12月21日に政府がシャンギル・トバヤを攻撃した際、ヒューマン・ライツ・ウォッチが記録したケースでは、およそ20名の政府軍がシェイク(地元指導者)の自宅を包囲。兵士はシェイクに何部族に属するかを聞いたのちに「やつら[ザガーワ族]は皆殺し、部族の女はレイプしてやる」と脅し、さらに農機具を奪い、SLA反乱勢力のメンバーだと言い掛かりをつけて22歳の従兄弟を拉致した。

政府が活動家に対する人権侵害を強めていることもヒューマン・ライツ・ウォッチは明らかにした。5月6日、政府の治安当局は、エルファシェルにあるアブ・ショウク難民キャンプ在住の活動家で、アフリカ連合・国連のダルフールでの平和維持合同ミッション(UNAMID)に勤務している女性ハワ・アブドラ氏を逮捕。5月8日に国営通信は、彼女が難民キャンプの子どもを「キリスト教徒化」するとともに、反政府勢力の関係者だった、と非難する記事を載せた。この犯罪は、スーダンの法律の下では死刑の対象となる。記事と共に掲載されたアブドラ氏が聖書を携えている写真からは、彼女が目に見えて疲労している様子と顔に複数の痣らしきものが見てとれる。

その他にも数十名のダルフールの活動家及び難民がダルフールやハルツームで拘束されており、その多くは犯罪立件もないままに、スーダンの法律で許される拘留期限をはるかに超えて拘束されている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。全国情報治安サービスは、平和維持ミッションに勤務する有名な活動家をもう一人、4月24日以降、容疑事実もなく拘禁している。10月に行われた国連安全保障理事会の視察の際に逮捕された、アブ・ショウクキャンプの男性2名もまた、エルファシャで拘束された。ある難民グループのリーダー4名もまた、緊急事態法の下でおよそ2年間拘束されたままだ。

難民キャンプの住民への襲撃、学生による平和的なデモへの弾圧、性的暴力への関与など、政府治安部隊による事件の数々をヒューマン・ライツ・ウォッチは取りまとめている。しかしながら、政府がダルフールの殆どの地域への平和維持部隊と人道援助団体双方の立ち入りを制限し続けているので、人的被害や人権侵害の規模についてはまだ明らかでない。

スーダン政府はまた、賛否両論がある「領域内政治プロセス」をダルフールで追及していると見られる。これは、ダルフール紛争の解決に関する対話にダルフール社会を参加させるものだ。ダルフールの反政府勢力との和平対話や、南部スーダンの分離を受けてのスーダン北部の新憲法の準備作業に、これらの対話が及ぼす影響ははっきりしない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べている。政府は西及び南ダルフールに新たな州を2つ創設すると表明し、7月にダルフールの行政上の地位に関して住民投票を行う計画である。これに対し反政府勢力やダルフール専門家は、和平交渉を複雑にする、と批判している。

スーダンの22年に及ぶ内戦を終了させた、2005年包括和平合意の規定に基づき1月に行われた南部独立に関する住民投票の結果を受け、南部スーダンは7月9日にスーダン政府から正式に分離する見込みである。

アフリカ連合と国連の双方は、その新たなダルフールの領域内政治プロセスを、スーダン政府が参加者の権利と自由を保証することが「可能な環境」を作る、という条件で支援すると表明した。ダルフールの状況の変化を評価する指標や、評価方法については、まだ明らかにされていない。

「ダルフール地方で極めて重要な役割を果たしているアフリカ連合と国連は、その合同平和維持ミッションが人権状況を適切にモニター出来るよう保証する必要がある」と前出のベケレは語る。「しかし、スーダンに提供されるすべての支援は、権利を推進・保護するものであるべきで、損なうものであってはならない。」

3月にスーダン政府は、ダルフールで何らかの政治的プロセスに先立つ改革を求める声に対し、見かけ上の譲歩として、司法審査なしで人びとを拘束する権力を政府に与える緊急事態令を撤廃すると述べた。しかし、それはまだ実現していない。

司法審査なしで人びとを長期間拘束する権力を与えられ、被拘束者に対して虐待や拷問を行っている事で広く知られている全国情報治安サービスを改革するよう、人権保護団体はスーダン政府に長い間求めてきた。

国連安全保障理事会はダルフールの事態を2005年にICCに付託。ICCはその後ダルフールで行われた犯罪に関して、ジェノサイド罪、戦争犯罪、人道に対する罪などの容疑で3名に逮捕状を発行した。アル・バシール大統領に加え、その容疑者はアーメド・ハルーン南コルドファン州知事、そして「ジャンジャウィード」民兵組織指導者アリ・クシャイブである。

スーダン政府は、アフリカ連合委員会によって2009年10月に発表されたダルフール報告書に書かれている、重要な司法上の勧告を何一つ実行していない。その報告書は、ダルフールで行われた最悪の犯罪を訴追することの重要性を強調している。

「国連安全保障理事会はダルフールの事態をICCに持ち込んだ。」とベケレは話す。「今度は、何千もの犠牲者に対する約束をかたく守るとともに、スーダン政府にICCに協力するよう圧力をかける事が必要である。」