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(ワシントンDC)-2010年3月7日に迫るイラクの連邦議会選挙にむけて、各政党及び候補者は、人権尊重を公約に掲げるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表された報告書で述べた。イラクが政治的安定と人権尊重の方向に向かうのか、そして、2005年の選挙後にイラクで吹き荒れた宗派間の抗争に戻ることはないのか----この議会選挙はイラクの今後をうらなう重要な選挙となる。

今回発表された報告書「イラクの2010年議会選挙:候補者への人権尊重公約の提言」は5つの主要な人権課題に関する6ページの報告書。具体的には、選挙への出馬拒否問題、表現の自由の剥奪、被拘禁者の虐待や拷問、マイノリティに対する暴力、悲惨な状態にある難民や国内避難民に対する対応を取り上げている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本報告書で、これらの課題について具体的で実現可能な政策を提言。各政党に対し、これらの提言を選挙公約に盛り込むよう求めている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局長代理ジョー・ストークは、「この選挙は、イラクで起きている特に深刻な人権問題を解決するために、政治家たちが行動するよい機会だ。政治家たちは、拷問をやめるために声をあげるべきだ。そして、避難民や拘束中の人びとやジャーナリスト、マイノリティ、女性たちの安全を守るために、見解を明らかにすべきだ」と述べる。

先日、責任と公正委員会が、多くの候補者に対して出馬資格なしと決定したことは、人権改革を優先事項とする必要性が極めて高いことを浮き彫りにした、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。この決定では、バース党と関係があるとしてスンニ派の著名な政治家や世俗的なシーア派政治家たちが、個別検討を経ることもなく出馬を禁止された。

2005年にイラクで行われた前回の議会選挙の後には、宗派間の抗争が発生し、イラク中心部と南部にあるシーア派とスンニ派のコミュニティーが荒廃。大規模な抗争は収まったものの、武装グループたちは、現在も、マイノリティに対する迫害を続ける一方、彼らは処罰もされずに野放しにされている。また、女性や子どもに対する暴力も全国で深刻な問題となっている。

こうした暴力事件の結果、数十万人もの人びとが、隣国に逃れたりイラク国内で避難生活を送ることを余儀なくされている。しかし、イラク政府には、こうした人びとの帰還に向けた具体的政策はないのが実態。また、政府の拘禁施設は過密状態で、しかも、身柄拘束に関する司法審査の大幅な遅れがこの過密拘禁をさらに悪化させている。そして、ジャーナリストたちにとって、未だにイラクは世界で最も危険な国をひとつ。しかも、イラク政府関係者がジャーナリストに嫌がらせを行なったり、訴訟を起こす事件が続いている。

これらの問題を解決するため、本報告書は、候補者や政党が以下の諸点を公約するよう提言している。

・責任と公正委員会の設立法を改正し、同委員会が候補者を不公平又は恣意的に除外しないよう確保すること

・「宗派主義の教唆」の禁止など、内容審査が必要な曖昧な規制を廃止又は定義をより明確化し、もって、表現の自由に関する国際基準を満たすようイラク法を改正すること

・刑法と刑事訴訟法を改正し(特に自白の強要や拷問によって得られた証拠の利用の禁止)もって、被告人の権利に関する国際基準を満たすよう確保すること

・民間人、なかでも、特に脆弱なグル-プ(女性やマイノリティ、同性愛者とみなされた男性たちなど)に対する暴力を公に非難すること。治安部隊や民兵による暴力事件の通報に対してしっかり捜査を行ない、責任者を処罰すること

・国内避難民や難民たちが、尊厳をもった安全な自主的帰還をできるよう国家計画を策定すること

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