In Guinea’s capital, Conakry, family members cry after identifying the body of a relative killed on September 28, 2009, when security forces fired on opposition supporters as they marched to and later held a rally in the September 28 Stadium. The body of their relative was one of 57 dead displayed at the Grand Fayçal Mosque on October 2, 2009.

© 2009 Reuters

(パリ)-2009年9月28日、 西アフリカのギニアで、軍政の治安部隊が、軍事政権に反対する集会を鎮圧し、その際、数百名を殺害したり強姦したりした。この残虐行為は、人道に対する罪にあたる可能性が高い、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書で述べた。前年12月の軍事クーデターで実権を握ったムサ・ダディ・カマラ陸軍大尉に対し、その側近が発砲して負傷させるという事件が12月3日に発生し、ギニアの政治混乱はさらに深刻化している。大統領自身も銃撃した側近も、この9月の虐殺事件に関与しているとみられ、この事件のアカウンタビリティ(真相究明と責任追及)の実現は、この政治危機の沈静化に必須である。

本報告書「血の月曜日:治安部隊による9・28虐殺と強姦」(108ページ)は、西アフリカ・ギニアの首都コナクリにあるスタジアムで行なわれた軍事政権に反対する集会で、ギニア精鋭の大統領防衛隊が中心となって、集団殺害、性暴行などの残虐行為に及んだ実態について詳細にとりまとめている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この襲撃が前もって計画されていたことを示唆する証拠を入手。更に、本報告書では、治安部隊が、多くの遺体をスタジアムと病院の安置所から持ち出してまとめて埋めてしまうなど、虐殺を組織的に隠蔽した実態についても詳しく明らかにしている。

「9月28日にギニアで起きた残虐な人権侵害について、ギニア政府は、命令に違反した末端の兵士たちの勝手な行動ゆえにおきたとしているが、実態は正反対だ」とヒューマン・ライツ・ウォッチの緊急事態担当ディレクターのピーター・ブッカーは述べた。「ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、この事件はあらかじめ計画されていたことを明らかにしている。そして、政府の高官たちも、少なくとも計画を事前に認識していた。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この報告書を作成するために、約240名の被害者、目撃者、軍関係者、医療従事者、人道援助当局者、外交官、ジャーナリストに聞き取り調査を実施。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、9月28日の大量の殺害・性暴行などの残虐な人権侵害行為の中心になったのは、クーデターで実権を掌握したカマラ陸軍大尉の副官アブバカル・ "トウンバ"・ディアキテ中尉(Lieutenant Abubakar "Toumba" Diakité)が指揮する大統領防衛部隊だったと明らかにした。その他にも、「麻薬密輸及び重大犯罪との闘い」担当国務大臣であるムサ・ティエグボロ・カマラ大尉の指揮下にあった精鋭憲兵隊や、警官たち、それから、ナタとナイフで武装した私服の男たちが、この残虐な虐殺・強姦事件の犯人として浮かび上がった。

12月3日、別々の軍内部の抗争で負傷したダディス・カマラ陸軍大尉とティエグボロ大臣は、治療のため、9月28日の事件以来初めてギニアを出国してモロッコに向かった。ダディス・カマラ陸軍大尉の銃撃事件への関与を疑われているディアキテ中尉は身を隠したままだ。

ギニア治安部隊がスタジアムに突入し、文民統治への復帰を求める集会の参加者数万人に発砲した様子について、背筋の凍るような目撃証言がたくさん本報告書に掲載されている。スタジアムの競技場を、銃撃しながら兵士が前進。その後ろには、負傷者と遺体の山が残されていた。遺体が競技場に散乱し、半分開いたゲートでつぶされ、壁が死体で覆われた様子を、目撃者たちは説明してくれた。その他にも、目撃者たちは、パニックになったデモ参加者たちがスタジアムの壁をよじ登ろうとして射殺された様子や、トンネルやトイレや座席の下に隠れていたのを見つかって捕まった後至近距離から撃ち殺された様子や、安全な通路を教えるフリをする兵士たちにだまされて出てきたところを無差別に殺戮された様子などについて語ってくれた。

数十人の女性たちが、兵士に強姦され、あるいは集団強姦された経験、それから、棒やライフルの台尻・銃剣などで性暴行を受けたつらい体験を話してくれた。また、少なくとも4名の女性が強姦されている間、またはその直後に殺されたのを複数の人が目撃していた。うち一人は、スタジアムの競技場に仰向けに横たわって命乞いをしている最中に、性器にライフルを撃ち込まれた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員たちは、性暴力の被害者28名から聞き取り調査を行った。その内18名は、集団から強姦された。被害者たちは、性暴力を受ける前、最中、そして性暴力の後に、蹴られたり、殴られた経験を説明してくれた。多くの被害者たちが、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、擦傷、背中・尻・局部のナイフによる傷、大腿部・手首・腹部の爪で引っかかれた跡を見せてくれた。

また、多くの女性たちが、大統領防衛隊の兵士たちによってスタジアムから連れ出された、とも説明してくれた。あるケースでは、治療をしてもらうために病院にいた女性の一団もそこから連れ出された。そして、連行された女性たちは、民家に連れて行かれ、そこで何日も集団強姦された、という。

ギニア軍が、自らの犯罪の証拠を隠蔽するとともに、9・28事件の際に殺害された人の数を矮小化するため、組織的な隠蔽工作を行なったことを示す強力な証拠が、調査の結果発見された。これらの証拠には、軍の内部者から秘密で提供されたものや、医療従事者から提供されたものなどがある。

ギニア政府が発表した死者数は57名。ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、実際の死者数は、150名から200名の間である可能性が高いことを明らかにした。虐殺が始まった直後、大統領防衛隊はスタジアムを閉鎖。そして、死体安置所の管理権を奪うとともに、遺体を持ち去って埋めてしまった。死体がどこに埋められているのか、一部発見されたものの、一部はまだわかっていない。ある消息筋は、深夜に軍基地から65の遺体が持ち去られたのを見た、という。これらの遺体は、集団で埋められたと考えられる。もう1人の消息筋は、大統領防衛隊が9月29日の朝早くに病院の死体安置所から遺体を持ち去り集団で埋めたのを見た、と証言した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは9.28の虐殺によって死亡した50名以上の人びとの遺族から話を聞いた。その半分以上のケースで、遺族は未だに遺体を回収できていない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのこの報告書は、スタジアムでの虐殺・レイプの後も、数時間から数日にわたり、集会参加者の多くが住むスタジアム近郊で、兵士や民兵たちが、引き続き、殺人・レイプ・略奪など、多くの人権侵害を犯した実態についても明らかにしている。また、治安部隊は、スタジアムを脱出しようとした男性たちをたくさん恣意的に拘束。その後のスタジアム近辺への襲撃の際にも、多くの男性を拘束した。ヒューマン・ライツ・ウォッチがインタビューした男性たちのうち13名が、暴力やムチ打ちにされたり、無理やり裸にされたり、無理な姿勢を強制されたり、模擬処刑などにさらされた経験を話してくれた。

この犯罪の規模、そして、デモ参加者側に何らの暴力行為や挑発行為がなかったという事実は、治安部隊がスタジアム襲撃の際に組織的行動をとっていた事実とあいまって、犯罪が事前に計画され組織化されていたことをうかがわせる、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。その証拠として、報告書は、このスタジアムに各治安部隊が同時に到着していることや、デモ参加者が逃げるのを明らかに予想した上で戦略上の拠点に各治安部隊が組織的に配置されていたこと、群衆を解散させるために「命を奪うには至らない」レベルの威嚇をまず使うということをせずに突然虐殺に至っていること、公安の責任を担う大臣など幹部将校たちがスタジアムにいたことなどを挙げている。

国際慣習法及び国際刑事裁判所(ICC)のローマ規程の下、人道に対する罪とは、民間人に対する広範な、または、組織的な攻撃の一環として行われた殺人、強姦、その他同程度の重大性を有する性暴力などの行為と定められている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査にも拘わらず、スタジアムやスポーツ施設の中で、治安部隊が負傷若しくは殺害されたことを示す証拠はなかった。この事実は、9.28事件が、政府治部隊側からの一方的な性質のものだったことを明らかにしている。ビデオ映像など、ヒューマン・ライツ・ウォッチが収集した全ての証拠は、軍事政権に反対する集会が非武装の平和的集会であったことを示している。

ギニア軍事政権は、この事件に対する捜査を開始していない。ましてや、大量殺人及び大量強姦などの残虐な人権侵害に関わった容疑について、治安部隊の兵士のひとりも責任を問われてはいない。9月28日の弾圧の際に行なわれた残虐な人権侵害に関して、ギニア政府は、最も重い責任を負う治安部隊の高官たちを、国際的基準に沿って速やかに捜査し、起訴・処罰してアカウンタビリティを果たすべきである。その際、目撃者たち全員の安全を確保することも必要である。ギニア政府がアカウンタビリティを果たさない場合には、関係する諸外国政府・機関は、アカウンタビリティの実現に向けた国際的措置を支持すべきである。

国連は、迅速に国際的な事実調査委員会を設置した。同委員会は既にギニアを視察している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国連事務総長に対し、同委員会の報告書を速やかに公開するとともに、この国連調査が認定した事実や勧告をしっかり議論し、実行するよう求めた。

「ギニア治安情勢は不安定で、9月の虐殺に最も深く関与した者たちの一部は、所在を隠している」とブッカーは語った。「それでも、ギニア政府と国際社会は、このような身の毛もよだつような恐ろしい犯罪を全面的に捜査し、関与した者の訴追を強く主張する必要がある。」