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イエメン:南部で厳しい弾圧 やめよ

丸腰で抗議活動しただけの人びとへの発砲、報道機関への攻撃

(サヌア)-イエメン政府は、イエメン南部で、丸腰で抗議行動を行っただけの人びとに対し、発砲。このような不当な有形力の行使をやめるとともに、メディアへの攻撃も止めるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表した報告書で述べた。

本報告書「統一の名の下の暴力:南部での抗議運動に対するイエメン政府の残虐な対応の実態」(73ページ)は、政府を批判する南部運動(Southern Movement)の支持者や、ジャーナリスト、研究者、その他の社会のリーダーに対する治安機関の攻撃を調査して明らかにした報告書。本報告書は、イエメン南部の都市アデン(Aden)やムカッラ(Mukalla)で行われた80回を超える被害者への聞き取り調査を基にして作成された。本報告書は、治安機関が、少なくとも6回、非武装のデモ参加者に対し、命の危険をもたらす有形力を行使したことを明らかにしている。過去1年の間 に、イエメン当局は、平和的な集会を行う権利を行使しただけの数千名の人びとを恣意的に逮捕し、政府の政策に批判的な中立的メディアの活動を停止させ、ジャーナリストや評論家を濡れ衣の罪の容疑で拘禁してきた。

「イエメン政府は、国家の統一を維持するとの名のもと、基本的人権を侵害している」とヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局長代理ジョー・ストークは述べた。「イエメン南部の人びとは、平和的な集会を行う権利や意見を述べる権利を保障されなければならない。分離独立のような重大な問題であっても、例外ではない。」

南北イエメンは1990年5月に1つの国として統合。1994年には内戦が勃発、北イエメンが勝利した。その後、中央政府は、多くの南部出身者を軍や政府の雇用の場から排除し、国家資源をイエメン南部へ公正に分配していない、とイエメン南部の人びとは強く抗議している。2007年の抗議運動は、当初、退役軍人が、年金の増額や復職を要求する運動であったが、急速に拡大し、雇用増大、汚職の解決、原油収入の分配増大なども要求する運動に広がっていった。

その後、イエメンにおける抗議活動は、南部運動(Southern Movement)という抗議活動の指導者たちのゆるやかな連合体に率いられるようになった。そして、南イエメンの分離及び独立国家形成まで要求するようになっていった。2008年と2009年には、治安機関が、非武装の抗議運動参加者に発砲する事件が6件発生したことが、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査により明らかになった。多くの場合、人びとは、警告もないまま至近距離から発砲されており、少なくとも11名が死亡、数十名が負傷した。

抗議活動は、今年5月31日にアルダリ(al-Dhali)で、同月30日にシャハル(Shahr)で、同月21日にアデン市のハシミ(Hashimi)広場で、今年4月15日にハビライン(Habilain)で、昨年7月4日にアルダリのマフラク・アル-シュアイブ(Mafraq al-Shu'aib)で、今年1月13日にアデン市のハシミ広場で発生。

イエメン南部の民間人の多くは武器を所有してはいるものの、南部運動は、抗議活動は平和的に行うと公言。しかし今年7月以来、抗議への参加者が、デモに武器を持ってきているとの報道が多くなった。7月23日にアビヤン州ザンジバル(Zanjibar)で行われた南部運動による抗議運動のあと、南部運動の指導者シャイクー・タリク・アル-ファドゥリ(Shaikh Tariq al-Fadhli)の武装した護衛が、抗議運動の現場から少し離れた所で、治安機関と大規模な銃撃戦を行った。この銃撃戦で少なくとも12名が死亡、18名が負傷した。

南部運動の抗議活動は、1967年に英国から独立した独立記念日など、歴史的に重要な日に行われることが多い。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本報告書のなかで、これらの抗議活動の前やその途中に、子どもを含む多くの人びとが恣意的に逮捕されている実態を取りまとめている。逮捕された人びとの中には、平和的なデモに参加していただけの者や、単なる通りすがりの人びとも含まれている。イエメン政府当局は、殆どの人びとは数日で釈放されているものの、抗議行動の指導者と疑われた人びとは、長期にわたり拘禁されている。拘禁された人びとの釈放を求める新たなデモがおき、それに対して警察が暴力をふるうという悪循環がおきている。

イエメン政府は、今年5月から弾圧を強化。新聞の発刊を停止し、報道関係者の事務所を攻撃し、自らの意見を平和的に述べただけのジャーナリストを逮捕した。ジャーナリストの中には、訴追され裁判に掛けられた人もいた。

イエメンのハサン・アル-ルジ(al-Luzi)情報大臣は今年5月、8紙の新聞の販売を停止。7月までには、このうち数紙が発行再開を許された。5月12日には、イエメンで最も歴史が長く、発行部数も最多のアル-アッヤム(Al-Ayyam)紙のアデン市事務所構内で、治安機関とアル・アッヤム紙の警備員たちが1時間に及ぶ銃撃戦を行い、民間人1名を殺害、その他1名に重傷を負わせた。

アル-シャリ(Al-Shari')紙とアル-タウリ(Al-Thawri)紙のラドファン(Radfan)特派員であるガイド・ナスル・アリ(Gha'id Nasr Ali)は、2008年4月と2009年1月に抗議行動の取材に関連し逮捕された。今年5月と7月には、アデンのアルジャジーラ衛星テレビ局特派員が、抗議行動の取材のためホテルの部屋を出ようとしたのを治安機関が阻止。イエメン当局は、他にも抗議行動を取材したウェブサイト編集者と記者を逮捕した。

政府は、数人の反体制派及び社会リーダーたちを、表現の自由を行使したかどで訴追。裁判は今年始まった。南イエメン州のカシム・アスカル(Qasim ‘Askar)前大使と、アデン大学教授兼南部運動広報担当のフセイン・アキル(Husain ‘Aqil)氏は、「国家統合を脅かした」容疑で裁判にかけられている。ウェブサイト編集者であるサラー・アル-サクラディ(Salah al-Saqladi)は11月中旬、「大統領の侮辱」「闘争及び反統合活動の煽動」、「海外の分離独立派との接触」、「暴力の煽動」の各容疑で裁判に掛けられた。ラハジ(Lahj)州クバイタの第一審裁判所は今年7月、南部での抗議行動の取材を理由として、地元アル-アッヤム特派員のアニス・マンスル(Anis Mansur)を懲役14ヶ月の刑に処した。

「イエメンは、誰でも自由に発言できる国だった。その評判は、大きく傷ついた。」とストークは述べた。「政府によるメディアとジャーナリストに対する最近の攻撃は前例のない規模だ。もしこれが続けば、国家による弾圧の暗い歴史の一章の到来となろう。」

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