Afghan women attend a rally for a presidential candidate in the 2009 elections.

© 2009 Lynsey Addario / VII Network

(ニューヨーク)-タリバン政権崩壊から8年が経過する今、アフガニスタンの少女や女性たちは、いまだに暴力と差別にさらされ、司法制度へのアクセスを拒まれ教育を受けることもままならない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表したレポートで述べた。公職についていた有名な女性たちを殺害した犯人たちは訴追もされておらず、アフガニスタン政府は、アフガン社会を、女性への暴力を許す社会としてしまっている。

96ページのレポート「国際社会の空虚な約束:アフガニスタンでの女性の権利の現状」は、アフガニスタンでおきている以下の5つの分野に関する人権侵害に関連する代表的な事件について詳述した報告書である。

  • 公職にある女性への襲撃
  • 女性への暴力
  • 児童婚と強制結婚
  • 司法制度へのアクセス
  • 中等教育への少女のアクセス

「アフガニスタン少女や女性を取り巻く状況は悲惨だ。しかも、状況は更に悪化する可能性がある。」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアフガニスタン調査員レイチェル・レイドは述べた。「世界は、オバマ政権の新しいアフガン戦略に注目している。でも、アフガニスタン政府も援助国も、女性と少女の権利の保護には、単なるリップサービス以上の注意を払っていない。この状況を変えなくてはならない。」

タリバン政権下で、女性の権利が蹂躙されていたことは、2001年のアフガニスタン侵攻を正当化する理由のひとつとして利用された。しかし、実際には、アフガン政府も援助国も、女性の権利に優先的に取り組み続けてきたわけではない。アフガニスタンの女性の人権状況は、2001年タリバン政権崩壊以降、教育・労働・移動の自由などの分野で一定の前進をみせた。しかし、アフガン政府内の原理主義勢力が勢いを増し、武装勢力への人びとの支持が広がり、タリバンの一部との何らかの和解を目指す動きが強まる中、アフガニスタンの女性たちが辛くも勝ち取ってきたこうした前進は、重大な脅威にさらされている。

「アフガン政府も、国際社会も、女性の権利を優先課題としてはいない」と女性国会議員のシンカイ・カロクハイル(Shinkai Karokhail)はヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。「私たち女性は、忘れられているんです。」

公職にある女性たちは、しばしば脅迫にさらされている。社会的に高い地位についた女性が何人も暗殺されただけでなく、暗殺犯たちは、訴追もされていない。シタラ・アチャクザイ(Sitara Achakzai)は、人権活動家でハッキリものを言う勇敢な政治家だったが、2009年4月に殺害された。公職について活発に活動を続けているすべての女性にとって、彼女の暗殺は、大きな恐怖となった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチがこの報告書作成の過程で聞き取り調査を行った社会的地位のある女性たちは、脅迫をうけていると政府に訴えても真剣に取り合ってもらえない、と語る。ある国会議員は、(他の女性国会議員たちと同様)聞き取り調査に回答したことが明らかになると危険だからという理由で匿名を条件にこう語った。

「たくさん脅されてます。時々政府に届け出ますが、『敵を作らないように、静かにしてなさい』って言うだけです。でも、女性の権利や人権のために、声をあげるのを止めるわけにはいかないでしょう?」

殺すと脅迫を受けたある女性警官は以下のように語った。

「娘たちを殺すって私に言ってきました。いつも怖いんです。元の家には戻れないんです。そこで、政府は私たちを守ってくれませんから。もう二度と、元の生活に戻ることはできないんです。」

アフガニスタン女性に対する暴力についてのある全国調査によると、回答者の52%は暴力を経験したと答え、17%が性暴力を受けたと回答。警察に届けて犯人を裁判にかけてもらいたいと思っても、社会的にも法律的にも女性が司法にアクセスするのは困難であり、そのため、少女も女性もほとんどは、政府機関に暴力を届け出ることもせずに泣き寝入りしているのが現状だ。特に、レイプ事件では、警察に立件してもらうのが難しい。女性活動家たちや女性議員たちの猛烈な運動の結果、今年初めて、レイプ(強姦)が法律上の犯罪と規定されるに至った。しかし、捜査当局には、レイプ事件を重大犯罪として取り締まる意思はなく、社会の考え方を変えるための啓もうキャンペーンを行う考えも示していない。

そもそも脆弱な立場に置かれた女性たち。司法へのアクセスが難しく、法の正義(ジャスティス)に訴えることもできないことから、その立場はさらに弱いものとなっている。強いコネを持つ地方司令官に輪姦されたある女性は、長い闘いの末、とうとう強姦犯人の訴追を実現した。しかし、その強姦犯人は、大統領命令で釈放されてしまった。その直後の2009年、彼女の夫は暗殺された。その女性はヒューマン・ライツ・ウォッチに、「夫は私の権利のために闘ってくれたわ。だから殺されたんです。」と語った。

「息子を失ったわ。それから、強姦され、今度は、夫まで失ってしまった」と彼女は語った。「ただの貧しい女でしかない私の話を、いったい誰が聞いて助けてくれるでしょう?」

全国調査は、全結婚の半数において妻は16歳未満で、しかも、70%から80%の結婚が、女性側の同意なしで成立していることを示している。幼くして強制的に結婚させられた少女たちがドメスティック・バイオレンスの犠牲になることが多いという相関関係が存在するのと同様、こうした慣行は、アフガニスタンの女性たちが直面している多くの問題の原因となっている。

強制的に結婚させられたある少女(13歳)は、その後思い切って夫から逃げ出したところ、夫の家族に追跡された、とヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。「夫の家族がやってきて、帰って来るよう私に頼んだの。私はいやって言った。それでも何度もやってきたから、私もいやだといい続けた・・・帰れないって。夫の家族は私を殺したいのよ。」この少女に避難シェルターを提供した女性活動家たちは、議会で厳しく非難された。数年たった今になっても、少女は、(そもそも違法な結婚だったのだが)離婚を求めて闘っている。

この事件は、司法制度から閉め出された女性たちが様々な根本的問題に直面している現状のほんの一端を示す事件でしかない。複数の調査によると、アフガニスタンで身柄拘束されている女性たちの半数以上が、不倫や家出などの「道徳犯罪」を理由に投獄されている。家出は、アフガニスタン法でもシャリア法でも犯罪とされていないにもかかわらず、である。社会的地位のある女性が脅迫されようが、少女たちが幼くして結婚したくないと願っていようが、自分を強姦した犯人を裁判にかけてほしいと願っていようが、警察や裁判所の反応は、多くの場合女性に敵対的である。

「警察官たちも裁判官たちも、女性への暴力は法に違反しないと考えています。だから、犯人を訴追しないんです。」アフガニスタン独立人権委員会のソラヤ・ソブーラン(Soraya Sobhrang)博士はヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。

女性の権利を守る法律を作ることは重要である。しかし、人びとの考え方を変え、人権侵害を予防するには、政治家たちのリーダーシップも求められている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「アフガン政府は、少女や女性を暴力から守る責任があるということを、もっと真摯に受け止めなくてはならない。」とレイドは語った。「カルザイ大統領が女性の権利についての"穏健派"という評判を回復するためには、沢山の措置をとる必要がある。」

タリバンは多くの女子校を破壊。その結果、女子教育は、アフガニスタンにおける援助国の活動の中でも最もシンボリックな活動になった。女性の権利には相当の前進があったが、厳然、大きな格差が残る。女子の過半数は、いまも、小学校にすら通えてない。中等教育を受ける年齢の女子が、7年生から9年生に通学している率はたった11%に過ぎない。10年生から12年生では、女子の率は僅か4%となっている。学校に通う子どもの数は、男子も女子も中学校になる段階で劇的に減るが、その減り方は女子がはるかに多いのである。

アフガニスタンで女性の権利が後退している問題が、この3月、再び重要な政治課題となった。極めて女性差別的な「シーア派身分法」が議会を通過し、カルザイ大統領がこれに署名したのだ。国内外の抗議を受け、カルザイ大統領は、「シーア派身分法」の修正を容認。しかし、「合理的な法的理由」(具体的理由は定められていない)がある場合を除き妻は外出の前に夫の許可を求めなければならないという規定や、子どもの親権は父親と祖父にのみに限るとする規定など、多くの問題のある条項はそのまま残り、シーア派女性の権利を大幅に制約する結果となった。

「国際社会から、この『シーア派身分法』に寄せられた抗議に感謝しているんです。--本当に--素晴らしいことをたくさん言ってくれました。2001年が戻ってきたかのようでした。」と女性の権利活動家ワズヒマ・フログー(Wazhma Frogh)は語った。「国際社会は私たち女性に約束してくれました。でも今になっても、国際社会は、行動を起こしてくれてはいません。私たちは待ち続けているんです。」

カルザイ大統領は、『シーア派身分法』を改正し、女性の権利の保護に完全に合致する内容にするとともに、女性の権利の保護のために積極的に活動してきた女性たちを、政権の中枢に指名すべきであるとヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「『シーア派身分法』の件は、アフガニスタンの女性たちが政治的取引に使われたり、女性の権利保護という約束がいとも簡単に破られてしまう実態を、如実に示している。」とレイドは語った。「カルザイ大統領は、新しい大統領任期をはじめるにあたって、両性の平等を進めるという明確な決意を女性に示すべきだ。」

「国際社会の空虚な約束:アフガニスタンでの女性の権利の現状」における主要な政策提言/勧告は以下となる。

  • アフガン政府と援助国は、女性の権利の向上と保護を、アフガニスタン復興における主要優先事項と位置づけるとともに、同国の政治・経済・治安戦略における中心的柱にすえること。
  • アフガン政府は、援助国の支援のもと、法執行機関・裁判官・国会・公務員・アフガニスタン民衆に対し、レイプ(強姦)は犯罪であるということの認識を高めるための大規模な啓もうキャンペーンを始めること。本キャンペーンは、強姦被害者へのいわれなき非難を減らすことも目的とすべきである。
  • アフガン政府は、もっと多くの地域で婚姻を届けられるようにするとともに、婚姻届けを義務化すること。
  • カルザイ大統領は、「家出」容疑で不当に拘束されているすべての少女と女性を釈放するとともに、彼女らに対し、謝罪をしたうえで賠償すること。
  • アフガン政府は、援助国の支援のもと、女子中学校をもっと建設して数を増やすと共に、女子中学が存在する地域を拡大し、女性教師をもっと採用し迅速に訓練すること。
  • アフガン政府は、国連及び援助国の支援のもと、2010年の議会選の選挙期間中、女性の候補者と女性の有権者の身の安全を優先事項にして取り組むこと。
  • 援助国と国連は、女性省と協力して、アフガニスタン政府の全支出に対し、ジェンダー面からの全面的監査を行うこと。