Skip to main content
寄付をする

ユネスコ:腐敗した独裁者となぜ協力?

赤道ギニアの大統領の疑惑資金で創設された ユネスコの「オビアン科学賞」

(ニューヨーク)-国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、アフリカ・赤道ギニアの独裁者・オビアン大統領の拠出金をもとに、オビアン大統領の名を冠した生命科学賞を授与する、としており、この「オビアン賞」に反対して、世界各地から数百の個人や団体が抗議の声をあげている。ヒューマン・ライツ・ウォッチなど世界各地のNGOは、本日、ユネスコに共同書簡を送付し、オビアン賞の資金源について、徹底した調査を求めた。

「ユネスコは、腐敗にまみれた残虐な独裁者の悪評を打ち消すのに利用されている。ユネスコはそれを受け入れている」と人権NGO「赤道ギニアに公正を」(EG Justice) のツツ・アリカンテ(Tutu Alicante)氏は述べる。「オビアン賞の創設のために拠出された300万米ドルは、オビアン大統領の栄誉のために使われるべきではない。赤道ギニア国民の教育と福祉にこそ使われるべきだ。」

これまでも、人権団体研究者などが、ユネスコに対して、オビアン賞創設の懸念を伝えてきた。しかし、ユネスコは、オビアン賞授与を取りやめることもなく、また、その資金源の調査も行なっていない。また、ユネスコは、強く求められると、オビアン賞の検討状況を開示したが、情報は矛盾していた。1月、ユネスコ広報官は、ユネスコ賞を再検討に付するので、オビアン賞もこの再検討まで保留となる、と対外発表した。しかし、後日、ユネスコ消息筋によって、ノミネート数の不足ゆえに賞は延期されただけ、と明らかにされた。

4月初旬、ユネスコ事務局長のイリナ・ボコヴァ(Irina Bokova)氏は、執行委員会で、この賞について議論が沸騰している状況について短いコメントを述べ、賞をもういちど延期すると語った。執行委員会は、4月15日、オビアン賞を結局どうするのか決定しないまま終了。しかし、その翌週、ボコヴァ事務局長は、「2010年6月に賞を授与する予定」とする書簡を各国政府に送付した。

ユネスコの「オビアン・ンゲマ・ムバソゴ生命科学研究国際賞」は、2008年、「人の生活の質を改善する科学的業績」を顕彰するためとして創設された。しかし、賞の名となっているオビアン大統領の統治のもとの、赤道ギニアの「人の生活の質」は悲惨である。豊かな石油資源を誇り、サハラ以南で4番目の産油国となった赤道ギニアであるが、一般の人びとは最悪の生活環境におかれたままである。

石油生産の結果、赤道ギニアは、国民一人あたりのGDPでは、イタリア、韓国、イスラエルと肩を並べる。しかし、国民の75%以上が貧困の中にあることを、政府も認めている。赤道ギニア国民の大多数は、清潔な飲料水もなく、平均寿命は50歳にも満たない。国連の人権調査官たちも、赤道ギニア政府による不公正な裁判・恣意的逮捕・隔離拘禁・組織的拷問を長年にわたり批判してきている。

政府の腐敗が、赤道ギニアの惨憺な人権状況にさらに影をおとしている。膨大な数の政府関係者が汚職にまみれているため、赤道ギニア国民の経済的・社会的権利の実現のために使うべき資金が消えている。2004年と2010年に米国上院常任小委員会が行った調査で明かにされた証拠によると、オビアン大統領とその直近親族たちは、赤道ギニアの天然資源から得られた富のうち数千万ドルを横領し、私的な蓄財にあてているとみられる。現在スペインの司法が、刑事訴追にむけた捜査を開始している。

賞の表向きの目的が科学振興であるとはいっても、ユネスコがこの疑惑資金を受領したことが、世界各地の人権団体を激怒させている。オビアン賞に関するユネスコ作成の資料も、資金源についての懸念の解消していない。ユネスコの文書によると、オビアン賞のための300万ドルの寄付は、表向きは、私立の慈善団体(「オビアン・ンゲマ・ムバソゴ 命の保護基金」)の拠出であるとされているが、賞の設立と寄付金提供を決定したのは赤道ギニア政府であることも明らかにされている。

「ユネスコが、世界で最悪の悪名高い独裁者の一人と、黒い協力関係にある。これは、ユネスコの貴重な活動に暗い影を投げ掛けるものだ」と共同書簡は述べる。人権諸団体は、このユネスコ事務局長にあての共同書簡で、ユネスコに方針転換を強く求めている。また同時に、人権諸団体は、ユネスコの執行委員会に代表を送っている58カ国政府にも本書簡の写しを送付した。

オビアン大統領が、自らを讃えるユネスコ賞の創設を初めて提案したのは2007年10月。これをうけて、ユネスコ執行委員会は、2008年、この賞の創設を承認した。オビアン大統領が提供した300万ドルは、当初5年間、毎年30万ドルの賞金に当てられるとともに、同賞の運営費に毎年同じく30万ドルが当てられる。オビアン賞授与にむけて、2009年9月25日を提出締め切りとした2009年度のノミネートが開始された。締め切りは、後に12月30日に延期され、その後さらに2010年4月30日に延期された。

GIVING TUESDAY MATCH EXTENDED:

Did you miss Giving Tuesday? Our special 3X match has been EXTENDED through Friday at midnight. Your gift will now go three times further to help HRW investigate violations, expose what's happening on the ground and push for change.