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(ニューヨーク)―各国政府は、新型コロナウイルス感染症ワクチンへの広いアクセスと手頃な価格を最大限に確保するとともに、ワクチンの開発・提供に公的資金を使う場合は、(ワクチン開発者との)合意条件を透明にすべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。各国政府は、ワクチンの量産とすべての人への手頃な価格での提供を可能にするため、グローバルな知的財産(IP)規定の一部を免除するという、インド政府および南アフリカ共和国政府の提案を支持するべきだ。

報告書「『ワクチン開発に成功者はだれであれ、それをシェアすべき』:新型コロナウイルス感染症ワクチン 人権と透明性強化のために」(全77ページ)では、安全で効果的であることが証明されたワクチンへのユニバーサルかつ公平なアクセスへの障害を、透明性・供給・価格設定の3点から検証した報告書。本報告書でヒューマン・ライツ・ウォッチは、公的資金を用いた科学的研究の成果について、人びとの生命・健康・暮らしを守るために可能な限り広く共有されるよう保障する各国政府の人権義務を詳細に解説している。 また、(ワクチン開発者との)合意条件を公開せずに公的資金を用いることは、透明性と説明責任という人権原則に反すると指摘。各国政府は、安全で効果的なワクチンへのアクセスならびに手頃な価格を最大限に確保するとともに、低中所得国が負う債務を最小限度に抑える措置を講じる必要がある。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのビジネスと人権担当上級顧問で本報告書共同執筆者のアルナ・カシャップは、「各国政府は、資金拠出した科学研究の成果を共有するため速やかに一丸となって、透明性を確保しながら協力すべきだ。人類を救うためだ」と述べる。「これまでに100万人超が死亡し、年末までにさらに100万人の犠牲が予想されている。各国政府は、企業の損得勘定でワクチンを接種できる人が決まるということのないよう、資金拠出者そして規制当局者としての権限を行使すべきだ。」

安全で効果的なワクチンへのユニバーサルかつ公平なアクセスを実現することは、暮らしを守り、子どもたちが学校に戻って学び、経済回復をしながら、重篤な病気や死を防ぐために必要不可欠だ。他の感染症と同様に、新型コロナウイルス感染症は国境を越えて急速に広がりうる。今後開発されるワクチンが持続的免疫をもたらさない可能性もあり、季節的な感染の周期や感染の波に対して各国がぜい弱な状態に置かれる可能性もある。国際通貨基金は、ワクチンについて世界各国が結束できれば、世界経済の回復が早まる結果、2025年までに9兆米ドルをもたらす可能性もあると言及した。新型コロナウイルス感染症から回復した人々や遺族などのグループが「people’s vaccine(民衆のワクチン)」を求める運動が拡大しつつある。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、医薬品へのアクセス、知的財産、人権の専門家らから聞き取り調査を行い、国際人権法、各国国内法・政策、膨大な数の公的に入手可能な関連文書ならびに二次資料を分析。本報告書は過去6か月間にわたり、医療従事者を含むさまざまなグループがパンデミックで受けた影響に関する世界各地の状況を検証した。

A line of people in face masks

Birgit Schwarz talks to Human Rights Watch senior counsel for business and human rights, Aruna Kashyap, and senior researcher on children’s rights, Margaret Wurth, about the need for more transparency and the equitable allocation of vaccines on the basis of health needs, not money.

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パキスタンのカラチにある公立病院の新型コロナウイルス感染症専用病棟に勤務するある看護師は、「実際に困っている貧しい人たちがいつワクチンを接種できるというのか、考えたくもありません」と訴えた。「最初は病院関係者、医師、政治家。その他の人びとは、まだ残りがあれば、でしょう。」

各国政府は公的資金を使いながら、前例のない規模でワクチン開発を援助している。オーストラリアに本拠を置くシンクタンクPolicy Cures Research(PCR)は、9月中旬までに各国政府がワクチンの研究・開発・製造・流通に投じた公的資金は190億米ドル以上と推定した。拠出規模のトップは米国、ドイツ、英国、ノルウェーおよび欧州委員会だ。10月13日には世界銀行が新型コロナウイルス感染症の検査・治療・ワクチンに120億米ドルの融資を承認している。

政府の資金拠出と合意条件について透明性がほぼ完全に欠如しているため、ワクチンへの世界的なアクセスに対する影響を把握するのは非常に困難だ。一部の政府はワクチンの将来的な確保(多くの場合自らの独占的使用のため)にむけて、製薬会社などと直接、不透明な二者間取引交渉している。2020年9月にOxfam Internationalは、世界人口の13%を占めるにすぎない高所得国各国が、いくつかの有望なワクチン候補の全投与量の51%をすでに確保済みだと報告した。

こうした取引により、安全かつ効果的であることが判明したワクチンへのユニバーサルかつ公平な世界的アクセスが、とりわけ低中所得国にとって困難になる。ワクチンに公的資金を投じた政府は国民に対して説明責任を負うものであり、何に対してどのような条件で拠出したのかを公開すべきだ。

ワクチン不足をめぐる懸念も未解決のままだ。安全かつ効果的なワクチンの世界的な需要は、供給量をはるかに超えると予測されている。10月19日の時点で臨床試験の最終段階にあるワクチンの候補数は10だが、安全かつ効果的であることが証明されたワクチンが広く利用可能になるよう、できる限りの量産が必須となってくる。
 

A woman hugs her 85-year-old mother through a transparent plastic curtain at a nursing home for older people in São Paulo, Brazil in June 2020. © 2020 Nelson Almeida/AFP via Getty Images

各国政府はワクチン開発者に対し、オープンかつ非独占的なライセンス契約で、技術移転や、知的財産・データ・技術革新の背景にあるノウハウの共有をするよう、求めるべきだ。そのためには、公的資金の拠出者としてそして規制当局としてその権限の行使を含むあらゆる手段をとるべきだ。ワクチン製造の専門性やノウハウを有する国はほんの一握りに限られているため、この点が特に肝要になる。

低中所得国政府や知的財産法専門家から、知的財産の壁がワクチン量産を妨げると指摘する声が高まってきている。訴訟の数も増えている。しかしほとんどの政府、特に高所得国は、この問題を無視、否定、軽視している。

各国政府は、「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS)が定める知的財産権保護の重要部分の一部免除に向けたインドと南アフリカ共和国の提案を支持すべきだ。政府はその規制権限を行使し、オープンかつ非独占的なライセンス契約を通じて知的財産権を共有するよう企業に求めるべきだ。

コスタリカ政府がリードして今年5月、世界各国に対し、「Covid-19テクノロジー・アクセス・プール」(C-TAP)枠組みを作ろうと世界保健機関(WHO)とともに行動喚起を行った。この枠組みは、ワクチンなど新型コロナウイルス感染症対策に必要なあらゆる医療用製品製造のテクノロジー、データ、ノウハウを、世界中誰でも活用できるようにする権利共有プールだ。すべての政府が速やかに、このイニシアチブに参加し行動をとる必要がある。また、ワクチン製造能力を検討するために、速やかに協力すべきだ。

ワクチンの価格設定も、ユニバーサルで公平なワクチンへのアクセスを阻む重大な障壁となる可能性がある。世界中の多くの場所では、すべての人が利用できる価格とはすなわち無償を意味する。各国政府は公的資金が私的利益ではなく、公益のために用いられるよう確保し、低中所得国が負う債務が最小限に抑えるよう努めるべきだ。そして、第三者監査で検証された透明性のある価格設定の採用を企業に求めるべきだ。

低中所得国によるワクチンの確保を支援するための世界的なワクチン調達メカニズムであるCOVAXファシリティに資金を提供している政府もある。が、COVAXファシリティは各企業と結んだ契約をまだ公開していない。COVAXファシリティに参加する政府は、COVAXファシリティの決定が自国の人権義務およびWHOのC-TAP原則と一致しているか確認すべきだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの子どもの権利担当上級調査員で、本報告書共同執筆者のマーガレット・ワースは、「公的資金が投入されているにもかかわらず、最高額を示した入札者に対し製薬会社が価格設定してワクチンを供給するような事態になれば、世界的なパンデミックと闘うことはできない」と指摘する。「安全で効果的なワクチンが開発されたら、どこの誰でも手頃な価格で利用できるようにすべきだ。」

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