A South Omo resident describes: “Our great, great, great grandmothers and grandfathers lived in this land. Our fathers lived here and me I live here… The men take a fish hook and go to the river and catch a fish and bring it to me to eat. They also go and hunt to bring food for the children. Whose land is this? It belongs to me.”

© 2007 Brent Stirton/Reportage by Getty Images

(ナイロビ)-エチオピア政府は、国営砂糖キビ農場計画のために、適切な協議や補償もしないまま、オモ川下流域の先住民族畜産農業コミュニティを強制移住させている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表した報告書で述べた。報告書には、政府が以前公表しなかった地図が掲載されており、そこには灌漑用水路、砂糖精製工場、10万ヘクタールに及ぶ他の商業的農業用地など、オモ川流域の広大な開発計画が示されている。

73ページの報告書、「飢饉が来たらどうなる?:エチオピア・オモ川流域の先住民への人権侵害」は、政府の治安部隊が暴力や脅迫を使って、補償や代替となる生計を立てる手段を選択する余地も与えないまま、先住民コミュニティの生活全体を脅かし、古くから先住民らが住んでいた土地から強制移住させている実態の調査報告。エチオピア政府当局は、開発計画に疑問を呈したり抵抗したりするオモ川下流域住民に対し、恣意的逮捕、拘禁、暴行その他の暴力を行使してきた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ上級調査員のベン・ローレンスは「エチオピア政府のオモ川流域に対する野心的な計画は、そこに住む人びとの権利を無視している。開発に近道はない。協議や補償を行い、長い間生計を立てる手段を土地に依拠してきた人びとの財産権を尊重するほかないのだ」と語る。

オモ川下流域は、地球上でも特筆すべき文化的多様な辺境地帯で、あらゆる人の記憶の当初から先住民らが住み続けてきた土地である。この20万人ほどの先住民たちは、畜産で生計を立てる8つの独特のコミュニティからなり、その生活様式とアイデンティティは、土地とオモ川と分かちがたく結び付いている。オモ川流域はケニアとの国境近く、エチオピアの南部諸民族州(以下SNNPR)内にあり、1980年にユネスコ世界遺産に指定されている。

論議の的となっているアフリカで最も高いダム、オモ川沿岸のギベ第3水力発電所プロジェクトに関連して、オモ川流域を大きく変える計画が持ち上がった。灌漑用水路に依拠したサトウキビ農場が下流に建設される予定となった。ギベ・ダム・プロジェクトに対する独立評価が複数行われてはいるが、現在まで、エチオピア政府はオモ川流域内での、サトウキビ農場などの商業的農業開発に対する環境的・社会的影響調査を何も公表してこなかった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは20116月に35人以上の住民、それ以後に加えて10人の援助国・機関職員、そして、30人以上の証人から聞き取り調査を行った。ヒューマン・ライツ・ウォッチが訪れた当時、軍の小部隊が定期的に村々に来て住民を脅し、サトウキビ農場開発に反対意見を持つ住民たちを弾圧していた。そして、兵士は日頃から、家畜を盗んだり殺したりしていた。

あるムルシ族の男性は、「何を食べればいい?彼らは家に1頭だけ繋いでおいて、あとの牛はみんな連れて行って売れと言ったんだ。1頭だけで何ができる?俺はムルシ族だ。飢饉がきたら、牛の首を撃って血を飲むんだ。みんな売ってしまって金にしたら、俺たちはどうやって食っていくんだ?」と話していた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが現地を訪問して以後収集した証拠は、州政府当局と治安部隊が昨年、サトウキビ農場建設計画区域内で生活し、農業を営んでいる先住民族コミュニティから土地を強制収用したことを明らかにした。

オモ川へのアクセスは流域に住む畜産農家の食糧安全保障と生活にとって極めて重要な意味を持つ。複数のコミュニティ代表者の話によると、州政府当局者は、何の協議もないまま、コミュニティは家畜の数を減らして別の場所に移住しなくてはならず、オモ川へのアクセスを失うと話した、と言う。

20126月現在、灌漑用水路が掘られ、土地は更地にされて、サトウキビの栽培は川の東側土手から始まっている。ヒューマン・ライツ・ウォッチが写真撮影した政府の地図は、サトウキビ栽培が進行中のエリアが、“シュガーブロック・ワン”と分類された区画であることを示している。サトウキビ栽培用に更に、2つの“ブロック”の収用が続く見込みだ。エチオピア政府によるこれまでのギベダムの影響評価は、サトウキビ栽培と灌漑によるオモ川の流れへの影響や下流にあるトゥルカナ湖に対する影響を盛り込んでいない。地図上には広大な灌漑用水路網が示されており、これまでの影響評価では不十分であることを示している。

計画の完全実施は、オモ川流域の少なくとも20万の住民、更に国境を越えたトゥルカナ湖周辺に住む30万のケニア住民に影響を与える可能性がある。トゥルカナ湖の水量の最大90%はオモ川を水源とする。ケニア政府は、ギベ第3ダム及び灌漑商業用農業計画の累積影響を調査する、新たな環境・社会的影響評価を行うよう働きかけるべきだ。

これらの開発は、オモ川流域先住民族の経済的・社会的・文化的権利を脅かすとともに、国内人権保護基準そして国際人権保護基準に違反して行われている。人権保護基準は、意味ある協議と同意及び土地、生計、食糧安全保障の喪失に対する補償を伴う財産権を認めており、とりわけ、古くから居住している故郷から先住民族を移住させることは、一番最終の手段でなくてはならないとしている。

先住民族の権利はエチオピアの法律と憲法、さらに「先住民族の権利に関する国際連合宣言」や、アフリカ人権委員会が解釈するアフリカ人権憲章などの地域的な人権保護条約やメカニズムでも扱われている。それらの法律や協定のもと、国家は、先住民族が歴史的に占有してきた土地について財産権を有していることを認めなければならず、自由意思に従った事前の情報に基づく同意を先住民族から得た場合にのみ、先住民を移住させる事が出来る。同意が得られた場合でも、先住民族はあらゆる土地、財産或いは生計手段の喪失に対して、充分に補償されなければならない。

しかし実際には、エチオピア政府は同地域の先住民族コミュニティの土地に対する権利を、土地所有権を含めて一切認めていない。エチオピア政府は、オモ川流域の先住民族住民から同意を得ることはもちろん、住民の殆どが十分な公教育を受けていないことを考慮した適切な協議も行っていない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが提起した懸念に対し、エチオピア政府は、農場は雇用という形態で先住民族住民に利益をもたらすはずである、と指摘することで応じた。雇用は影響を受ける先住民社会にとって、利益となるかもしれない。しかし先住民族コミュニティーの土地に対する権利が認められていたのか、同意は求められたのか、移住や土地収用は本当に必要だったのか、相当な措置だったのか、補償はされたのかなどの問題についてしっかりした評価が行われるまで、雇用が多少増える可能性があるからといって、政府は農場開発を停止する切迫した必要があることに変わりはない。

ギベ第3水力発電所プロジェクトの社会的・環境的影響については、多くの国際NGOが懸念を表明すると共に、エチオピア政府に対し、透明性と独立した評価が欠如していると批判してきた。エチオピア政府は、ギベ・ダム・プロジェクトについての世界銀行とアフリカ開発銀行への資金融資の申請を取り下げたが、その理由については明らかにしていない。ユネスコ世界遺産委員会は、トゥルカナ湖への影響に関する、更なる独立した評価が行われている間、同プロジェクトを停止するよう勧告した。

エチオピア政府は、開発計画の予算の大半を国際援助に依拠している。治安部隊と州及び地方行政府の職員は、協議を行わず、住民の権利も認めないままにサトウキビ農場開発の計画を実施すると共に、地元住民に移住せよと伝えている。複数の国・機関が資金を拠出している地方政府に対する財政支援プログラム(以下Protection of Basic Services, PBS)は、保健・教育その他の分野の支援に数百万ドルを提供すると共に、SNNPR州を含むエチオピア全域の地方政府職員の給与の資金を供給している。PBSの主要資金提供者は世界銀行と英国、EU、オランダ、ドイツである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、エチオピア政府に対し、ギベ第3ダムとそれに関連するサトウキビ農場の建設を、それらの開発が国内法及び国際的人権保護基準に沿った手法で実施できるようになるまで、停止するよう求めた。エチオピア政府は、南オモにおける更なる産業振興に先立ち、オモ川流域の先住民族コミュニティが古くから占有してきた土地に対する権利を認めると共に、その権利を認めた上で、土地の将来の使用と補償について意味のある話し合いに取り組まなければならない。援助国・機関は、援助資金が強制移住や不法な土地収用に利用されることのないよう、確保しなければならない。

前出のアフリカ調査員ローレンスは「エチオピア政府の経済発展を促進するという目標は称賛に値するものの、近年のオモ川流域での政府の行動は、先住民族コミュニティの権利と生計手段に、受け入れがたい犠牲を強いている。政府は基本的な基準を満たすまで、一連の行為を停止すべきである。そして、援助国・機関は、自らの支援が人権侵害を助長することのないよう確保しなければならない」と語る。

 

「飢饉が来たらどうなる?」に記録された証言の抜粋

「サトウキビ畑のことならみんな政府に反対してるよ。だけど移住を力づくでやるかもしれないって怖がってるから、あんまり言わないのさ。ここじゃ政府は凄く怖いんだよ。不平を言ったら、刑務所行きになる。」

-ボディ族男性、20116

「乾季には問題が起きるはずだよ。今は水があるけど、なくなる時にオモ川流域に戻れないなら、政府に水を運んできてもらう必要がある。そうしてくれないと、[俺たちと]俺たちの牛は死んでしまう。とにかくオモ川に行けなきゃ、俺たちは死んでしまう。政府が駄目だっていうなら、そこで俺たちを殺せばいいさ。」

-ムルシ村民、20116

「俺は何を食べればいいのか?彼らは家に1頭だけ繋いどいて、あとの牛はみんな連れて行って売れと言ったんだ。1頭だけで何ができる?俺はムルシ族だ。飢饉がきたら、牛の首を撃って血を飲むんだ。みんな売ってしまって金にしたら、俺たちはどうやって食っていくんだ?俺たちは結婚する時、牛とも結婚するんだ。今度は何と結婚すりゃいいんだ?何を食えばいいんだ?飢饉がきたら、子どもに何を食べさせるんだ?鶏だけ飼って、スープかミルクでも飲ませてたらいいのかね?エチオピア高地の連中は、『この土地は私の土地だ、お前らはヒヒみたいに森の中に行け』って言っているんだよ。」

201112月に家畜の大切さについて証言したムルシ族男性

「彼ら[政府の役人][クウェグ族とボディ族の]耕作地帯を更地にしたんだ。かなりの部分を更地にしてモロコシを掘り起こした。モロコシは熟れかけていたんだけど、トラックが1台それを無茶苦茶にして、棄てたんだ。耕作地帯は壊されて、クウェグ族の中には何にも持ってない人もいるよ。モロコシを無茶苦茶にされたら、あの連中は何を食べればいいんだ?子どもに何を食べさせればいいんだ?」

201112月に更地にされたクウェグ族とボディ族の農地に何が起きたかを証言した男性

「牛を全部政府にやってしまったら、このあたりはえらいことになる。今はアフリカの角辺りじゃ干ばつで本当にひどい事になっているのに、ここらの人は何を食べるんだ。ダムが出来て、川に水がなくなって、土地をとられて、牛を政府にやって、これで飢饉になったら貧乏な人はどうなるんだ。畜産をやってる者を追い出そうとしてる連中は、1日に3度、飯を食ってる。飢饉が来たらどうなるんだ?」

-ムルシ族男性、20115月