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Trans rights event at the Japanese National Diet, October 2022. © 2022 Kanae Doi/Human Rights Watch

2023年10月25日、最高裁判所大法廷は、トランスジェンダーの法律上の性別認定の条件として断種手術を課す国内法を違憲と判断した。この裁判は、医療のベストプラクティスや国際人権法に反し、人権侵害をもたらし、時代に逆行する要件の撤廃を求めてきた、長年のアドボカシーと訴訟の成果である。

2004年以降、日本ではトランスジェンダーが法律上の性別変更を希望する場合、家庭裁判所に審判を請求する必要がある。性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(性同一性障害者特例法)では、請求者には、精神科医2名による診断書、外科的断種(生殖腺除去)手術のほか、「他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えている」必要がある。また、結婚をしておらず、未成年(18歳未満)の子どもがいないことも条件となる。

2017年、日本はこの法律の改正を公約した。国連専門家チーム世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会(WPATH)はともに、この法律の差別的要件を撤廃するよう日本に求めてきた。2019年、最高裁は同法が憲法違反には当たらないとの下級審判決を支持したものの、審理を行った最高裁判事4人のうち2人は補足意見で改革の必要を認め、「性同一性障害者の性別に関する苦痛は、性自認の多様性を包容すべき社会の側の問題でもある」と記した。

2023年5月の最高裁判決では、トランスジェンダー女性の国家公務員が、みずからのジェンダーアイデンティティ(性自認)に従ってトイレを使用する権利が認められた。2022年11月、神奈川県は、トランス女性の会社員がうつ病になったのは、上司からのハラスメントが原因だとして労働災害を認定している。

今日の判決では、トランス女性が、断種手術の義務は幸福追求権と差別から保護される権利を侵害していると主張した。判事15人は全員一致で、「外性器除去術等を受けることが強制される場合には、身体への侵襲を受けない自由に対する重大な制約に当たるというべきである」とし、この規定が憲法に反するとの判断を示した。

最高裁は、断種手術要件を違憲とする一方で、「他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えている」という要件について高等裁判所に審理を差し戻した。とはいえ、今回の判決は、日本におけるトランスジェンダーの人びとの健康とプライバシー、身体的自律への権利を擁護する上で大きな一歩である。また、トランスジェンダーの法律上の性別認定制度は、医療的介入とは切り離される必要があることを認める政府が増えるなかで、地域的にも世界的にも反響を呼ぶことになるだろう。

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