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カンボジア:野党政治家の立件、撤回すべき

ドナー側は、司法の政治利用停止にむけ共同の働きかけを

(ニューヨーク)-カンボジアでは野党幹部6人がねつ造された容疑で立件された。当局は全員の起訴を取り下げ、即時無条件釈放すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。2014年7月16日、プノンペンの裁判所はカンボジア救国党 (CNRP)の国会議員を反乱、意図的暴力、公務執行妨害で立件した。

抗議行動が許可された場所の閉鎖に抗議する7月15日のデモで、野党支持者は治安担当の準警察組織に暴力を振るう一方、政府治安部隊はデモ参加者に過剰な実力を行使した。当局はこの事件を捜査し、適切なかたちで訴追すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「野党支持者は、デモの強制解散措置にどれだけ不満があったとしても、治安部隊に激しい暴力を振るう口実にはならない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「しかしだからといって、当局が救国党の政治家を暴力行為の扇動で起訴する根拠にはならない。『反乱』などという罪も相当にばかげたものだ。野党政治家を刑務所に入れるぞと脅す、いつものやり口だ。」

起訴された6人のうち、ムー・ソファ(Mu Sochua)、ホー・ヴァン(Ho Vann)、ケオ・ピロン(Keo Phirum)、メン・ソタヴァリン(Men Sothavrin)、リエル・ケマリン(Riel Khemarin)の5氏は国会議員。もう1人はアウン・ナリット(Oeun Narith)氏。保釈は却下され、全員がプノンペン郊外のプレイ・サー(Prey Sar)刑務所に拘禁されている。国営メディアによれば、このほかにも救国党幹部への出頭命令が出されている。

7月15日、救国党当局者は首都プノンペンにある民主広場(別名「自由公園」)再開を求める非暴力デモを企画した。広場では2009年の法律により、集会および表現の自由の権利を行使できる。フンセン首相率いる与党カンボジア人民党政権は、根本的な欠陥を抱えた2013年7月の総選挙と、ストライキに関わる騒乱で縫製労働者が殺害された2014年1月の事件への抗議を封じ込めるため、この公園を閉鎖した。

現場は今もバリケードがほどこされ、警察や憲兵、治安担当準警察組織などの治安部隊が警備にあたっている。政府は他の場所でもデモを全面禁止している。

救国党とNGO側は政府に対し、非暴力集会の権利についての国内規制を全面解除するよう、これまでも繰り返し求めてきた。一連の要求は、カンボジアの人権状況に関する国連特別報告者、および平和的集会と結社の自由の権利に関する国連特別報告者のほか、先日国連人権理事会で行われた、カンボジアの人権状況に関する普遍的定期的審査で発言した多くの政府から支持されている。

救国党幹部のム-・ソファ氏は、民主広場再開を求める活動に特に力を入れており、複数の党幹部とともにたびたび現地を訪れ、閉鎖に抗議してきた。現地での非暴力による抗議行動は、治安部隊から手荒な制止をたびたび受けている。隊員は火器を携行していないが、警棒などの致死力のない武器を使用している。

治安部隊は、プノンペンの地元政府当局から直接指揮を受け、デモ隊、ジャーナリスト、見物人を何度も殴打している。負傷者が出ることも多い。当局は暴力をふるった隊員について、懲戒や刑事訴追で責任を追及する姿勢を見せていない。これは救国党員や一般の党支持者の一部が怒りを募らせる一因となっていた。

7月15日の抗議デモには、かなり大勢の党幹部や活動家、支持者が参加していた。治安部隊要員は、鉄条網のバリケードにくくりつけられた救国党の横断幕をはがそうとしてデモ隊を押し返し始めた。また治安部隊が警棒で参加者を殴ったことに対して、激しい抗議の声が上がった。複数の参加者が治安部隊要員を殴り、3人が重傷を負った。

当局は救国党幹部6人を刑事犯として立件した。容疑は「反乱を主導」し(刑法459条)、悪質な意図的暴力をはたらき(同218条)、他人に重罪を教唆した(同495条)「扇動者」(同28条)である。有罪の場合、各人への最高刑は37年となる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この6人全員について、暴力行為を組織または扇動し、あるいはこれに参加したことを示唆する証拠を一切発見できなかった。救国党がこれまで行った数十回の集会や行事で、救国党幹部はつねに非暴力を訴えてきた。

平和的集会と結社の自由の権利に関する国連特別報告者は2012年5月21日付けの報告書で、その他の部分では非暴力的に行われた「集会主催者とその参加者は、他者がはたらいた暴力行為の責任を帰せられるべきではなく、問われるべきでもない」と述べている。今回の件に関してヒューマン・ライツ・ウォッチは、「扇動者」条項が求める証拠、すなわち被疑者のいずれかが、犯罪の実行について指示または命令を与えた、そうでないならば、贈り物、約束、脅迫、扇動、説得によって犯罪を引き起こしたという証拠を一切見出していない。

今回の出来事は、フンセン政権による裁判所を使った野党政治家攻撃の最新の事例だ。ドナー側はこうしたやり方に厳しい姿勢で臨むべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「救国党幹部の立件に関して、ドナー側は一致した応答を行うべきだ。司法手続きの公正さを望むと述べるような駆け引きは止めるべきだ」と、前出のアダムズは述べた。「そうではなくドナー側は、政府が態度を改めて、暴力行為と無関係な人びとへの起訴を取り消し、無条件で釈放するよう求めるべきだ。」

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