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スリランカ:政府が重火器を使用したことを認めたことは、国連調査の必要性を示す

スリランカを訪問する政府特使らは、民間人保護を最優先事項に

(ニューヨーク)-スリランカ政府が、国内避難民たちが密集する地域で重火器を使用してきたことを認めたことは、政府軍とタミル・イーラム・解放のトラ(LTTE)による戦時国際法(戦争法)違反についての国際調査委員会を設立する必要性を改めて明白にした、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

スリランカ大統領官房は本日、これまでの発表では使用を止めたと述べてきた重火器を、最近の戦闘で実は使用してきたということを認めた。「我々の軍は、民間人に犠牲者を出す可能性のある、大口径の銃火器、戦闘用航空機、空中発射兵器の使用を中止するよう指示をうけた」とスリランカ大統領官房の声明は述べている。

「スリランカ政府が、これまでずっと重火器を使用して来たことをようやく認めたことで、スリランカ政府が残虐な戦術を取り続けていたことと虚偽説明を公式に行ってきたことが、極めて明白になった」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「国連安全保障理事会は、スリランカに関し、現実から目をそらしてきたこれまでの対応を改め、両陣営による人権侵害を調査する国際事実調査委員会を緊急に設置しなければならない。」

スリランカ政府は、何ヶ月にもわたってLTTEに対する作戦行動が民間人を殺害していることを否定するとともに、民間人に避難先として勧めた政府指定の「非戦闘地域」への攻撃の停止を求める国連その他国際社会のメンバーからの要請を無視してきた。一例を挙げれば、4月23日、ゴタバヤ・ラジャパクサ(Gotabhaya Rajapaksa)国防大臣は、BBCに対して「我々は取り残されている民間人を救出すため、非戦闘地域の南に向かって非常にゆっくりと前進している。我々の部隊は重火器を使用せず、小火器と個人用武器だけを使用している」と述べていた。

政府軍とLTTEとの戦闘で、重砲による砲撃と航空機による爆撃が継続して行われている事実を、写真や人工衛星映像に加え、目撃者による多数の証言が示していた。国連によると、2009年1月以来、戦闘地域でおよそ6,400名が死亡し、13,000名以上が負傷した。

国連は、5万人以上の民間人が未だに戦闘が行なわれている地域に閉じ込められたままと推定。LTTEが、多数の人々の避難を阻止し続けているとの報告もある。こうした極めて危険な立場におかれた民間人たちの状況は、食料・水・医薬品の深刻な不足によってさらに悪化している。スリランカ政府は、「非戦闘地域」への無差別攻撃に加えて、人道援助要員の適切な立ち入りと、必要不可欠な援助物資の配給を許可しない政策を取り続けているため、今すぐに必要な民間人への支援は拒絶されたままである。しかも、スリランカ政府は、ジャーナリストや人権監視員などの公平な立場で事態をモニターする人びとの戦闘地域へ立ち入り禁止にしているという点でも、民間人の安全を決定的に阻害している。

政府支配地域に流入しつつある多くの国内避難民たちは、ここ何日間も、何も食べていない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。国内避難民たちは、政府が「福祉センター」と名づけた閉鎖された強制収容所に移送され拘束される。その移送・拘禁の前に、避難民たちは、政府による検査と登録をしなくてはならないが、それを待つ間も、民間人たちは、食料・水・避難先・衛生設備が不足した状況におかれ続けている。

2009年4月29日、コロンボに向かう予定の英国・フランス・スウェーデンの各外務大臣に対し、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国内避難民となった民間人たちの保護及び福祉のためにスリランカ政府が責任を果たすことを、何よりもの最優先事項とするよう強く求めた。

「英国・フランス・スウェーデンの各外務大臣がスリランカを訪問することは、戦闘が行なわれている地域にいまだに閉じ込められている民間人たちにとって最後の希望かもしれない」とアダムズは述べた。「外務大臣たちは、スリランカ高官らに対して、民間人への攻撃や民間人への人道援助を阻害していることに関して、責任を追及されるであろうと明確に伝えるべきだ。」

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