今週ミャンマーで起きたクーデターは世界中の企業に警鐘として受け止められるべきである。同国で数十年間続いた軍事独裁から文民政府への移管が2011 年に始まって以来、多国籍企業は同国に少しずつ再進出していた。しかし今回のクーデターによって、これらの企業の取締役たちが以前より検討されるべきだった「わが社はミャンマー国軍に直接、または間接的に資金を提供しているか?」という問いに注目が集まっている。
ミャンマー国軍を相手に事業を続けることの人権、信用、法律すべての面でのリスクは非常に高い。タッマドーとして知られるミャンマー国軍は、ロヒンギャ ・ムスリムに対するジェノサイドや人道に対する罪のほか、他の少数民族に対する戦争犯罪を犯したと非難されている。そして今、タッマドーは2020年11月に得票率80パーセント以上という圧倒的な支持を受けて再選された文民政府を転覆させた。
ミャンマーで活動する企業は長らく、ミャンマー国軍による重大な人権侵害や汚職について信用できる情報を得られる環境にあった。2019年に発表された国連の報告書によれば、ミャンマー国軍とその関連企業であるミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)とミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)と商業関係を持つ企業は「タッマドーの財政能力を支える一助となっている」。報告書は、これらの企業は「人権法と国際人道法の違反の一因となる、またはそれらの違反と関連づけられる危険性が高い」と述べた。国連調査団の勧告は明確だった。つまり、ミャンマーで活動する、またはミャンマーに投資する企業は「ミャンマーの治安部隊、特にタッマドー、またはそれらが所有もしくは支配する企業とその子会社やその構成員」と事業を行うべきではない、というものである。
親会社と子会社も含めてすべての企業は今、ミャンマーでの商業関係を再評価し、国軍と関連する事業とのいかなる関係も保留にするべきである。そのような事業の一部はまもなく米国、英国、欧州連合(EU)、その他の国による部分的制裁の対象となる可能性もある。また、すべての企業はミャンマーで共に事業を行っている相手の名前、所在地、所有者、その他の関連情報も公開するべきである。どんな消費者や投資家も、ミャンマーの人びとが自分たちの政府を選ぶ権利や国軍による残虐行為の否定を直接または間接的に支持するべきではないが、企業はミャンマーの治安部隊やその構成員、またはそれらが所有もしくは支配する企業と関係を持っていないことを確実にする責任を持っている。こうした措置を取らなければ、企業の幹部はミャンマー国軍による人権侵害に関与する危険だけでなく、顧客や投資家の信用を失う危険も冒すことになる。