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World Report 2014: スリランカ

2013年の出来事

Keynote

 
Rights Struggles of 2013

Stopping Mass Atrocities, Majority Bullying, and Abusive Counterterrorism

Essays

 
Putting Development to Rights

Integrating Rights into a Post-2015 Agenda

 
The Right Whose Time Has Come (Again)

Privacy in the Age of Surveillance

 
The Human Rights Case for Drug Reform

How Drug Criminalization Destroys Lives, Feeds Abuses, and Subverts the Rule of Law

スリランカのマヒンダ・ラージャパクサ大統領の政権は、約30年に及ぶ長期内戦での深刻な人権問題の責任追及を、2013年にほとんど進展させなかった。内戦は2009年に終結している。3月、国連人権理事会は2年連続、2回目の決議を採択した。スリランカに対し、自国で設置された「過去の教訓と和解委員会」(LLRC)勧告を実施し、内戦下で両軍が行ったとされる戦争犯罪の責任追及を行うことを求めるもの。スリランカ政府は同委員会の勧告を実施中と主張。しかしその主張の裏付けを取ることは難しく、責任追及の取り組みについては信頼性を欠いている。

2013年中、戦闘的な仏教徒集団によるヒンドゥー教徒とムスリムへの攻撃が激化した。

司法権の独立は疑問視されている。ラジャパクサ政権が2012年12月、シラニ・バンダラナヤケ最高裁長官が政府提出の重要法案に違憲決定を下したことを受けて、同長官の弾劾を行ったためだ。

9月に北部州議会選挙が実施された。独立監視団は脅迫、暴力行為、不適切な軍の介入が数十件あったと報告した。タミル国民連盟(TNA) は北部州議会選挙で大勝した。選挙は、内戦下で戦闘の大半が行われたタミル人多数派地域で行われた。

内戦終結時に、投降したタミル=イーラム解放の虎(LTTE) メンバーと支持者推計12,000人が「復帰」目的で拘束された。9月時点で政府はこのうち230人の拘束を続けていた。

責任追及

スリランカは過去数年にわたり戦争犯罪の訴えを放置している。この不作為を受けて、国連人権理事会は3月に決議を採択し、スリランカに対して国際人道法と国際人権法の違反行為を独立かつ信頼できる形で調査することを求めた。この決議はまた、ナビ・ピライ国連人権高等弁務官に対し、人権理事会の9月会期でスリランカの人権状況に関する口頭報告を行うとともに、2014年3月会期で書面による報告を提出することを求めた。

人権理事会決議を受けて、スリランカ政府は教訓と和解委員会の勧告実施について複数のアップデートを発表した。これには2、3の戦争犯罪の訴えに関する調査などが含まれていた。政府の主張は、その大半が政府に透明性がないため検証が困難。またそれがたとえ正確であっても、肝心な点で、決議で求められる手順を欠いている。

特別軍事調査法廷が2012年に設置され、国軍は戦争法違反行為に関する法律に違反していないとした。実際には正反対を示す証拠が多数存在する。政府は、警察特殊部隊隊員12人を、2006年1月にトリコンマリーでタミル人青年5人が殺害された事件の調査の一環として逮捕したが、この事件に関与した警察の上官を逮捕しなかった。教訓と和解委員会が強制失踪に懸念を表明したことを受け、政府は、これまでいくつも設置してきた「調査委員会」を新たに設けた。これまで同様にマンデートは制限され、政府が結果を公表するかについて明確な基準はない。

ピライ高等弁務官はスリランカを8月に訪問した。9月の人権理事会への口頭報告で、同氏は内戦後の責任追及を政府が怠っていることを容赦なく批判。そしてスリランカ政府が、戦争犯罪の「訴えについて独立した、または信頼できる調査」に取り組んだ形跡が見当たらないと述べた。また政府は教訓と和解委員会の勧告の多くを実施していないと報告。さらに、警察の国防省からの分離という同委員会の主要勧告の実施が不完全であり、警察は元国軍将校の指揮下に置かれていると指摘した。

拷問と強かん

治安部隊による、拘束中の人物への拷問その他の虐待は、武力紛争中からの広範な問題である。ヒューマン・ライツ・ウォッチは2月に新たな証拠を提出。強かんと性暴力が、LTTEメンバー及びその支持者と疑われた人物に対し、内戦終結後もなお広範に用いられている主要な拷問であることを示した。拷問としての性暴力は、LTTEへのかかわりを「自白」させると共に、タミル系住民に広く恐怖心を与えて、LTTEへの関与を思いとどまらせるために用いられている。

政府はこれらの証拠を退け、海外での難民申請の訴えを粉飾しようとする人間の創作だと主張した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、性暴力の報告について政府が調査を行った事例を一切認知していない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチがこの報告を行って以降、複数のEU加盟国が、LTTEとかかわりのあるタミル人の送還を停止している。帰国により拷問の危険があると判断したためだ。UNHCRは2012年12月に庇護申請評価のガイドラインを改定し、LTTEと一定のつながりがある人物については、帰国に伴うリスクがあると見なされるべきだと勧告した。

恣意的拘禁と強制失踪

スリランカのテロ防止法により、警察には拘束中の容疑者に対する広範な権力が与えられている。また同法は、治安関係の容疑者を裁判せずに長期拘束することの正当化根拠として、当局者がかなり頻繁に利用している。同法は現在も変わらず使用されている。政府は同法で拘束された人物全員の氏名と収容場所一覧を公開していると主張する。しかし家族らは2013年にこの情報を利用することが難しいと述べている。ピライ氏は8月のスリランカ訪問で、同国北部の強制失踪被害者家族と会談した際に「これほど強い、止めどなくあふれる悲しみには接したことがない」と述べた。

市民運動団体と報道機関の自由

市民運動団体と報道機関の自由は、恣意的規制と脅迫に依然直面している。6月に、政府は危険で曖昧なメディア規制を提案した。これは13種類の発言を禁止するものだ。「公衆の期待を害するか、公衆の嗜好と道徳を劣化させる傾向のある」内容などが対象。また禁止の対象は「行政、司法、立法の統一に反する素材を含む」内容も禁止される。これはつまり政府批判を禁止するということだ。この規制案は、大量の否定的な報道に遭って撤回された。

政府は、政府に批判的なニュース・サイトの一部について、一般のアクセスを現在もブロックしている。近年起きた複数のジャーナリストの殺害または「失踪」事件も未解決のままだ。

活動家や運動体、とくに北部と東部で活動するものは、嫌がらせや脅迫が続いていることを報告している。ピライ氏は、北部と東部で面会した人々が、氏の訪問から数時間以内に治安部隊の訪問を受けたと述べた。政府はこの報告を調査せずに、ピライ氏の訴えを退けて、情報源を明らかにするよう求めた。そして政府による弾圧は北部と東部に留まらない。国軍はウェリウェリヤで清潔な飲料水を求めるデモ参加者に発砲し、3人を殺害した。

7月、スリランカの高級外交官は、カルム・マクリ(Callum Macrae)氏を公の場で批判した。氏は、内戦終結時の戦争犯罪とされる出来事を扱ったドキュメンタリー映画『交戦地帯なし(No Fire Zone) 』の監督だ。この外交官はツイッターでマクリ氏がLTTEから「汚い金」を受け取っているテロリストであるとほのめかした。政府はこの発言を行った外交官を処分しなかった。マクリ氏ら英チャンネル4の取材陣は、11月のコロンボでの英連邦首脳会議期間中、継続的な嫌がらせを受けた。

不穏な傾向として、宗教的少数者に対する暴力の増加がある。大半は仏教徒団体ボドゥ・バラ・セーナ(BBS)によるものだ。政府はこうした攻撃をほとんど捜査せず、防止策もとっていない。ボドゥ・バラ・セーナがスリランカのムスリム住民に攻撃を行っている期間に、大統領の弟である国防省次官はこの団体に招かれて公開行事に参加した。9月の口頭報告で、ピライ高等弁務官はヘイト・スピーチの増加に警戒を表明し、暴力行為の防止に政府がもっと強力な対応を行うよう求めた。

北部と東部での国軍による人権侵害

政府は北部と東部に駐留する国軍部隊を大幅に減らしたと主張する。しかし国軍兵士がいまだに民間人の生活に頻繁に干渉しているとの信頼できる報告がある。国防省と国軍のウェブサイトは、国軍が民間問題で果たす役割に関する記事を定期的に発表している。地元住民と現地の開発を統制する意志を示すものと見られる。9月に行われた北部州議会選挙の独立監視団は、軍による現地での与党支持キャンペーンと、それにより、選挙に先立ちタミル系住民のあいだで不安感と緊張感が高まったことに懸念を表明した。

北部と東部の成人女性と少女は、性的嫌がらせと性暴力に極めてさらされやすい状況に置かれたままだ。いずれについても国軍は防止対策をとらず、それに荷担することもある。タミル人地域で活動する女性の権利団体は、国軍が抑圧的なかたちで駐留しているため、人権侵害を記録することがとくに難しいと述べている。

国際社会の主要アクター

人権理事会の3月会期で、政府は、戦時下の深刻な人権侵害の責任追及に関する決議採択を理事会が行わないよう働きかけたが、失敗した。米国やインドなどが支持したこの決議は、スリランカが決議実施に向けた有効な措置をとらなければ、2014年の会期で独立調査を呼びかけるきっかけとなるものだ。

カナダのスティーヴン・ハーパー首相は、モーリシャスの首相とともに、人権問題への懸念から11月にコロンボで行われた英連邦首脳会議(CHOGM)に出席しなかった。インド首相も国内問題を理由に会議を欠席した。スリランカの人権状況と戦時下の残虐行為はマスコミ報道の対象となった。英国のデイヴィッド・キャメロン首相は首脳会議に出席し、戦争の被害を受けた北部の訪問と、現地の活動家との会談に時間の大半を費やした。キャメロン首相は、スリランカ政府が独立調査を行わなければ、戦争犯罪に関する国際調査を支持すると述べた。この立場は米国とカナダが支持している。

中国はスリランカに明確な関与と投資を行っており、人権理事会決議にはっきり反対した。インドは、スリランカに対して北部州議会選挙を有効なかたちで実施するよう強く求めた後、地方分権に向けた憲法改正の完全実施を引き続き求めた。