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国連:北朝鮮の人権状況審査近づく 厳しい審査と強い働きかけを

死刑、集団処罰、脱北難民の処罰 に対する非難 必要

(ジュネーブ)-国連人権理事会(ジュネーブ)で、2009年12月7日、北朝鮮の人権状況が審査される。この審査で、国連加盟国は、北朝鮮政府に対し、北朝鮮政府による重大な人権侵害を止めるよう求めるべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。各国政府は、死刑、集団処罰、許可なく脱北した人々への処罰などについて提起し批判すべきである。

12月7日の審査は、北朝鮮政府にとって、初の国連 普遍的定期的審査 (UPR、Universal Periodic Review)となる。同審査は、すべての国連加盟国が、四年に一度受ける人権状況の審査で、ジュネーブの国連人権理事会で行なわれる。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国連人権理事会に対し、北朝鮮の人権状況についての報告書を提出しており、食糧に対する権利や子どもの権利、労働者の権利などの諸問題について報告している。北朝鮮政府は、国連の総会や人権理事会が採択した北朝鮮の人権状況を非難する決議については完全拒絶する一方、他国に対する人権状況審査には参加してきている。

「北朝鮮政府は、自国についての国連決議は単なる中傷キャンペーンだと決め付けて拒絶している一方、UPR審査では、他国の人権状況を批判してきている」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理エレーン・ピアソンは述べた。「他国を批判しておきながら、自らへの批判は完全拒否、など許されない。」

たとえば、2008年5月に行なわれた韓国に対するUPR審査の際、北朝鮮政府は、韓国の治安維持法を批判。「特に、表現の自由と集会の自由に対する組織的侵害の原因となっている」と述べた。

北朝鮮の最高人民会議(国会に該当)は、今年4月、憲法を改正。北朝鮮政府が「人権を尊重し保護する」という規定を盛り込んだ。北朝鮮問題の専門家たちは、この憲法改正を、同国の悲惨な人権状況に対する批判が続いていることから、国際的イメージを改善しようとした動き、と見ている。

その他、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国連人権理事会に対して提出した報告書のなかで、北朝鮮での人道支援にも言及。北朝鮮政府は、世界食糧計画(World Food Programme)などの国際人道機関が透明性とアカウンタビリティに関する国際基準にそった形で援助物資配布のモニタリングをするのを許すべきだと述べた。援助物資配布の国際基準には、全国すべての地域へのアクセス、事前通知なしでの視察の自由、聞取り調査対象者の選択の自由などの確保などが定められている。北朝鮮は1990年代の飢餓からは回復したものの、いまも、北朝鮮全国で、食料不足は深刻。

北朝鮮政府は、自国民が国の内外を自由に移動することを認めるとともに、外国へ逃れた後に北朝鮮に強制送還されたり、あるいは、自主的に帰国した北朝鮮の人びとを処罰するのをやめなくてはならない、ともヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。また、北朝鮮は子どもの権利条約を批准している。北朝鮮政府は、同条約で定められた諸権利を尊重し、なかでも、子どもにも類を及ぼす集団処罰をすぐやめるべきだ。また、北朝鮮政府は、国際労働機関(International Labour Organization:ILO)に加入するとともに、ILOの主要条約に加入すべきである。そして、ILO の北朝鮮訪問を認めて調査を許すとともに、労働者の権利の保護と促進にむけた議論を行なうべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

また、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、北朝鮮政府に対し、繰り返し、死刑廃止を求めてきた。北朝鮮政府は、政府所有財産の窃盗や食料買いだめなどを「反社会主義」犯罪とし、そうした容疑で、多くの人びとを処刑している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが国連に提出した報告書には、そのほかにも、北朝鮮政府が人権関係の国連機関と協力して国連の特別報告者の訪問を受け入れるとともに、国連人権高等弁務官事務所からの技術支援を受け入れるべきであることや、独立した中立的国際専門家に対してすべての種類の拘禁施設の視察を許すとともに視察調査を踏まえて出される勧告/提言の実施を重要課題として取り組むことなども勧告/提言している。

「憲法改正というリップサービスだけではいけない。北朝鮮政府は、人権侵害を解決するための具体的措置を講じなくてはならない」とピアソンは語った。「その第一歩は、国連システムと協力し、国連の人権専門家の訪問を受け入れて、その調査やアドバイスを受けることから始まる。」

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