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ヒューマン・ライツ・ウォッチの福田康夫日本国首相宛書簡

2008年1月8日  
 
〒100-0014 日本国東京都千代田区永田町2-3-1  
内閣総理大臣 福田康夫 殿  
 
人権と北京オリンピックについて  
 
内閣総理大臣 福田康夫 殿

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english 
2008年北京オリンピックに先立ち、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、日本政府が、中国における人権状況に好ましい変化をもたらすため、主要な役割を担うことができる、と思料いたします。貴殿は、中国訪問を成功させ、来春には胡錦濤国家主席の日本訪問を控えておられ、こうした役割を担うにつきまたとない立場におられます。これは、日本政府にとって、国際連合に対する「日本の自発的誓約」(「人権が国際社会の正当な関心事項であるとの強い信念」について言及しています。)に従い、人権促進への貢献を示すよい機会でもあると存じます。  
 
この地域における日本の立場に鑑み、こうした日本政府のイニシアチブは特に重要です。こうしたイニシアチブは、北京五輪に参加する他の多くの国の行動に影響を及ぼす他、主要な企業スポンサーはもちろん日本オリンピック委員会からも実りある歩みを引き出すことにつながると思われます。昨年の11月、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、日本オリンピック委員会の方々とお会いし、情報を提供させていただき、関心をお持ちいただきました。  
 
2001年2月、当時、五輪招致活動を行っていた劉敬民(Liu Jingmin)北京五輪組織委員会執行副主席は、招致を勝ち得た場合、「中国における人権状況をより改善するのに役立つ」と述べました。しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、今に至るまで中国における多くの人権侵害を調査・記録しています。しかも、その多くは、中国政府の五輪招致に特に関連する人権侵害です。  
 
1 報道の自由に対する侵害  中国政府は、2001年、オリンピックの間メディアに報道の自由を与える、と具体的に公約しました。2006年12月、中国政府は、公約の一環として、2008年北京五輪の期間中及びその準備期間中、認定を受けた外国人ジャーナリストに対し、より広範な自由を与えるため、新たな暫定的規則を発表しました。この決定により、報道活動に対する厳格な公的統制(こうした統制の結果、中国における外国特派員の表現の自由は、長期間制限されてきました)がかなり緩和されたかに見えました。しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、上記暫定規則が執拗に無視され続けており、外国人ジャーナリストたちが、中国政府の役人、治安部隊、そして、政府の命令で活動していると思われる私服の暴徒により、日常的に嫌がらせを受け、身柄拘束され、脅迫され続けていることを示しています。一方、中国人のジャーナリスト、調査員、通訳者、アシスタント、外国特派員には、公式のプロパガンダシステムの背後でこうした措置が取られていることを報道すれば、政府から悪意の報復を受ける危険が存する状態が続いています。  
 
2 北京における出稼ぎ建設労働者の権利の侵害  2001年、北京が2008年五輪の開催地に選定されたことで、建築ブームに火がつきました。この建築ブームは、100万人以上もの圧倒的多数の出稼ぎ建設労働者に支えられていますが、これらの労働者たちは、日常的に賃金を騙取られ、危険な労働条件下におかれ、基本的な社会サービスを受けられないことはもちろん、医療保険や事故保険も適用されません。  
 
3 五輪関連のインフラのための北京住民の大量立退きと住宅取壊し  オリンピック会場や新道路の建設、地下鉄網の拡張などのインフラ建設のため、北京の広域にわたって再開発が行われ、莫大な人的被害が発生しています。特に、数千人もの北京市民たちが、適正手続や法定の補償金の支払いもないまま、自宅から強制的に立ち退かされ、その後、自宅を取り壊されています。  
 
4 反体制活動家を封込め沈黙させるための自宅軟禁など、超法規的手段の使用の増大  
 2008年北京五輪に先立ち、政府が人権を尊重しないことを批判する中国市民は、自宅軟禁などの超法規的手段で身柄拘束され、沈黙を強いられています。自宅軟禁などの手段は、個人の自由への無期限の制限として強制されており、警察が直接実行しています。曖昧な法的根拠や被疑事実によって実行されることが多く、中国市民は公開裁判を受ける基本的な権利も認められていません。著名な中国の反体制活動家である胡佳(Hu Jia)氏と曾金燕(Zeng Jinyan)氏は、2008年五輪に先立ち、中国政府の人権状況を批判したため、2007年5月より北京で自宅軟禁されています。  
 
 以上の人権侵害、そしてその他の人権侵害の詳細につきましては、北京オリンピックに関するヒューマン・ライツ・ウォッチのウェブサイトをご参照下さい。  
 
 上記の状況に鑑み、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、日本政府に対し、以下を明らかにするよう要請いたします。
  • 日本政府は、中国政府に対し、2008年オリンピック大会に関連する人権侵害についての懸念を表明するため、どのような行動を取られますか。大会開始前のこの数ヶ月の間に懸念を表明するための、日本の外務省の戦略をお知らせください。  
  • 貴殿又は日本政府のメンバーがオリンピックに出席予定の場合、オリンピック大会前及び大会期間中、オリンピックという機会を捉えた戦略の一環として、いかなる発言及び行動を取られるおつもりですか。  
  • 日本政府は、北京入りする多数の日本人のジャーナリスト、国際・国内通訳者、コーディネーター、写真家などが、中国政府の報道の自由に対する公約を額面どおりに捉えた場合に、拘禁、ハラスメントなどの嫌がらせを受けないようにするため、オリンピック大会前及び期間中、いかなる措置を取られますか。  
  • 日本政府は、日本オリンピック委員会及び国際オリンピック委員会が、中国における人権に関して、いかなる義務を果たすと期待されますか。
福田総理大臣、貴殿は、オリンピックへのカウントダウンが続く今、これらの人権問題、並びに、北朝鮮からの脱北者の頻繁な逮捕や強制送還等を含むその他の緊急の人権問題について、中国の指導者らに、実質的に関与するという希有な機会をお持ちです。  
 
 ヒューマン・ライツ・ウォッチは、そのための、貴殿のご尽力を支援したく希望します。そして、中国の人権状況について話し合うため、貴殿との面談の機会をいただければ幸いです。そして、貴殿と日本政府が事態に変化をもたらす方法について、具体的に提言させていただきます。ヒューマン・ライツ・ウォッチには、日本駐在スタッフがおりますので、貴殿のご都合がよい最も早い日時に、お会いさていただくことが可能です。  
 
ご検討に感謝いたします。  
 
 
 
エグゼクティブ・ディレクター  
ケネス・ロス
 

 
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