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カンボジア

ヒューマン・ライツ・ウォッチ年次報告書 ワールド・レポート 2008

2007年は、フン・セン首相が、1997年のクーデターで、当時のノロドム・ラナリット共同首相を追放して10年。その後も、カンボジアでは人権侵害に対する不処罰が続いている。2007年も、相変わらず、農地の違法収用、都市に住む貧民の強制立退き、人権擁護活動家への攻撃が続いた。労働組合リーダー、森林資源保護活動家、僧侶の殺害などが起きている。司法は今も行政府の指示で動く。汚職や天然資源の略奪は後を絶たず、これを解決しようとする動きもない。クメール・ルージュ法廷は3年の期限の折り返し地点まできた。しかし、汚職疑惑と政府による干渉に直面している。

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World Report Chapter

4月に地方議会選挙が行われ、フン・セン首相率いる与党カンボジア人民党(CPP)の勝利に終わった。過去に比べれば政治的暴力は少なかった。ラナリット氏は今も国外滞在中。3月、従前属していた党の本部の不動産の売却について背任罪で欠席裁判が行われ、禁固18ヶ月の刑を宣告された。  
 
表現、結社、集会の自由の弾圧  
政府は、政府を批判するすべてのテレビ、ほとんどのラジオ局、その他メディアに対し、業務停止や法的手段も辞さないという姿勢で規制を続けている。政府は2007年6月、政府高官が違法伐採に関与していたとする国際NGOグローバル・ウィットネスの報告書の配布を禁止。この件の報道をするジャーナリストや協力者は匿名での殺害の脅迫を受けている。フランス語新聞の「Cambodge Soir」は、この件を報道した記者が解雇されたことに対する抗議のストライキを行い、6月に休刊となった。  
 
8月、プルサの記者の自宅が 2度放火された(未遂)。地元の警察署長は、違法伐採の件を報道したためと述べた。森林保護に関わっていた地元の活動家は他にも攻撃を受けた。7月、セン・サロム氏はスタン・トレンで殺害された。同じく7月、サット・サヴト氏は、オッドー・ミアンチェイ州の自宅に手榴弾を投げ入れられた。同人は、自宅を捨てて避難せざるを得なくなった。  
 
カンボジア弁護士会は政府の支配下にある。7月、カンボジア弁護士会は、同弁護士会との協定に署名したNGO以外、弁護士を合法的に雇用したり、法律業務のサービスを受けたりすることはできないと主張。6月、キアット・コルニー氏(キアット・チョン経済財政大臣の妹)は、法律援助弁護士9名に対し、ラナキリ村での土地紛争について彼女を訴えるよう村人たちを「教唆した」として、同弁護士会に申立を行った。  
 
2月24日、カンボジア自由労働組合(FTUWKC)の委員長ヒー・ヴティーが、プノンペンのサンテックスの工場で射殺された。この3年間に殺害されたFTUWKCのメンバーは3人になる。5月には、労働者千人が、労働組合を組織していた従業員の解雇に抗議してカンダルの工場でストライキを行ったが、機動隊がこれを阻止した。  
 
当局は、デモを阻止、あるいは申請を却下し続けている。10月、政府は、デモを行う場合の地元当局への5日前の申告を義務づけ、かつ、デモ中に起きたあらゆる行為について当該デモの責任者の責任とするデモ法を制定した。  
 
カンプチア・クロム僧侶の弾圧  
2007年2月27日、ベトナム系のクメール族「カンプチア・クロム」の僧侶が、在プノンペン・ベトナム大使館近くでデモを行ったところ、重装備警官らが介入。僧侶らは追い散らされた。僧侶たちは、ベトナムで起きた宗教的・民族的迫害に対する抗議デモを行っていた。同夜、抗議活動に参加していた僧侶のエアン・ソック・ソーン氏は、所属するパゴダで死体で発見された。警察は自殺と断定。直ちに埋葬を指示した上、僧侶たちが葬儀を行うことを禁じた。4月20日も、プノンペン警察がカンプチア・クロムによる別の抗議行動を強制解散させた。その際、僧侶らが暴行された。6月、カンボジア仏教会の大僧正テップ・ボーン氏と宗教省は、僧侶のデモ参加を禁じる命令を出した。  
 
6月30日、カンボジア当局は、カンボジア国籍のカンプチア・クロム僧侶でタケオにあるクメール・カンプチア・クロム連盟 (KKF) 代表者ティム・サコーン氏の聖職を剥奪し国境まで追放。テップ・ボーン大僧正は、サコーンはKKFのパンフレットを配布し、カンボジアとベトナムの友好関係を損なう宣伝工作を行ったと主張。11月、サコーン氏はベトナムの法廷で、国家統一を乱した容疑で禁固1年の刑を宣告された。  
 
法の支配  
2007年6月、国民議会は、長年の懸案だった刑事訴訟法を裁決。同法は公判前の身柄拘束、逮捕後の被疑者の権利、身柄引渡しに関する保護規定を欠いている。7月、憲法評議会は、カンボジアは、子どもを刑罰に処する場合、子どもの権利条約上のコミットメントに従うよう示した。  
 
新しい目撃者証言にもかかわらず、控訴裁判所は4月、2004年に起きた労働組合委員長チア・ヴィチア殺害の容疑者とされているボーン・サムナン氏とソック・サム・オーン氏の有罪判決を容認。一審審理と控訴裁判所の判決は、公正な裁判基準に満たないとして、国連当局や人権団体から批判を受けている。  
 
土地収用  
外資系企業や政府当局、政府高官関係者に対する土地利権の違法譲渡が横行。都市部や農村部の貧民が犠牲となって土地を失っている。フン・セン首相は2007年3月、カンボジア人民党員が土地収用に関わることを禁止すると約束。しかし、約束は実行されていない。11月、プレアヴィヒア州の317家族の強制立退きに際し、軍や警察が非武装の村民2人を射殺。立退きに際し、警察が過度の有形力を濫用する事件が起きている。  
 
クメール・ルージュ法廷  
2007年、クメール・ルージュ(KR)の高官5人(トゥール・スレン刑務所ことSー21の元所長、カン・ケク・イウ(通称ドゥック)、ポル・ポトの右腕だったヌオン・チア、KRの元外務大臣イエン・サリ、KRの元国家元首キュー・サムファン)が、クメール・ルージュ法廷の拘置所に拘禁された。人道に対する罪および戦争犯罪の容疑に問われている(イエン・サリは人道に対する罪のみ)。  
 
同法廷の問題のひとつは、カンボジアのスタッフが、身分保障と引換えに政府当局に強制的にリベートを支払わされている疑いがあること。2月、開かれた社会司法イニシアティブ(Open Society Justice Initiative (OSJI))が、汚職の嫌疑の調査をするよう要請した際、政府当局はOSJIのスタッフの法廷への立入りを禁止し、同組織の外国人スタッフをカンボジアから追放すると脅した。国際社会の圧力で、政府はこれを撤回した。  
 
同法廷の被害者サポートや証人保護のユニットは未だ十分ではない。公判は2008年4月に開始予定とされている。  
 
難民と庇護申請者  
カンボジアは、大量のベトナム人の山岳民族を、国連難民高等弁務官(UNHCR)への庇護申請前に強制的に追放し続けている。これは難民条約上の義務に違反する行為だ。2007年9月時点で、360人の山岳民族がUNHCRの保護下にある。4月には、ラタナキリで山岳民族のUNHCRに対する庇護申請を手伝ったカンボジア人3人が、山岳民族から金銭を授受したとの容疑で人身売買罪で逮捕された。その後、容疑は取下げられた。  
 
国際社会の主要なアクター  
カンボジアの国家予算の半分は外国からの援助でまかなわれている。2007年6月にドナー国やドナー機関が示した年間供与援助パッケージは6億9千万ドルに増加(中国の援助が初めて正式な援助パッケージに含まれた)。主な援助国は日本、中国、EUである。6月、国際通貨基金(IMF)はカンボジアの「インフォーマルフィーにおける高いコスト」と、汚職対策法案が議会を通過しなかったと批判した。世界銀行は2006年、カンボジア政府高官の汚職ゆえに、貧困削減プロジェクトのために援助資金の一部を凍結。しかし、8月、7千万ドル相当の貧困削減プロジェクト資金をプレッジした。  
 
米国は8月、カンボジアとの対テロ協力を強化すると発表。これはカンボジアが米国の石油大手シェブロンに対し沖合での採掘契約を与えたのと同時期の出来事だった。米国は2月にも、1997年のクーデターによる対カンボジア援助禁止を解除。新しい援助には、カンボジアの軍部による非致死性「超防衛装備」購入に対する対外軍事融資の適用及び国際軍事教育訓練基金が含まれる。米国FBIは4月、政治的暴力や麻薬の密売、人身売買への関与が疑われる国家警察のトップ、ホク・ルンディ氏をワシントンに招待。対テロ討議を行っている。  
 
3月、カンボジアはクラスター爆弾の廃絶を目的とするオスロ宣言を支持した。
 

 
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