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性同一性障害者特例法 世界から改正を求められる

国際的な専門家組織が断種要件の廃止を求める

トランスジェンダー男性の杉山文野さん。性別が女性と記されたパスポートのページを掲げる。都内の自宅にて撮影。 © 2019 Human Rights Watch

トランスジェンダーの健康に関する有力な国際組織が、日本政府に対し、トランスジェンダーの性別認定制度の改革を求めています

ヘルスケア分野の専門家2,200人以上が加盟する、世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会(WPATH)は、5月28日付けの厚生労働大臣と法務大臣宛書簡で、法律上の性別変更を希望するトランスジェンダーの人びとに対し、「性同一性障害」との診断書を取り、断種(生殖腺除去)手術を受けることを義務づける要件を改正することを求めました。

現在、日本で性別の取扱いの変更を望む場合には、2004年に成立した性同一性障害者特例法に基づき、家庭裁判所に審判を求めなければなりません。しかしこの手続は差別的です。というのは、申請者には、婚姻をしていない、未成年の子がいないという要件に加えて、精神科医から「性同一性障害」との診断を受けること、さらに断種さえも義務づけられているのです。

WPATHの書簡は「性別適合の一環として、ホルモン療法、外科的処置、またはその他の医学的介入を希望するトランスジェンダーの人びとはいます。それらを望まない人もいます」と指摘した上で、「法的な性別認定プロセスの一環として、医療サービスの利用を強制することは、科学や人権に基づき推奨されません」と述べています。

2019年5月25日、世界保健機関(WHO)では「国際疾病分類」の大幅な変更が承認されました。「性同一性障害」は「性別不合(gender non-conforming)」とする新たな枠組みに位置づけられ、「精神疾患」からセクシュアル・ヘルスの章へ移動しました。「精神疾患」の診断抜きで医療を受けることがまもなくできるようになる点で、トランスジェンダーの人びとにとっての大きな進歩です。

この書簡で、WPATH代表理事のヴィン・タンプリチャ医学博士(内分泌学)は、断種要件の削除は最も緊急性が高いとし、「2020年東京オリンピック・パラリンピックは、日本政府が世界に対して、日本があらゆる人の権利を尊重していることを世界に示す、重要な契機となるでしょう」と述べています。

WPATHだけが現行法の改正を求めているのではありません。2018年、日本政府は国連人権理事会で、性自認(ジェンダー・アイデンティティ)による差別の撤廃に向けて行動すると述べています。東京都では、LGBT差別を禁止する条例(東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例)が成立しています。厚生労働省と法務省にも、速やかな行動が求められているのです。

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