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(ニューヨーク)― 今回撮影の衛星画像で、ビルマのラカイン州北部の少なくとも10の地域で広範な火災が確認されたと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。この火災は、ロヒンギャ過激派集団による2017年8月25日の検問所や警察施設への連続襲撃事件以降に発生した。

ビルマ政府は独立したモニタリング組織に当該地域への立入りを認め、火災の原因究明と人権侵害の訴えの調査を行うべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

「新たな衛星画像データは懸念を生じさせるものだ。ドナー国と国連機関はビルマ政府に対し、ラカイン州で進行する破壊行為の被害範囲を明らかにするよう求めるべきだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンは述べた。「すべての非を暴徒に押しつけても、ビルマ政府は人権侵害を停止させ、被害の訴えを調査する国際的な義務から免れるわけではない。」

8月25日に「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ASRA)はラカイン州北部3郡で、警察施設や検問所少なくとも20カ所以上と国軍基地1カ所を襲撃。政府は当初、戦闘による死者を政府治安部隊11人を含む数十人と発表した。しかしその後の報道によれば被害はもっと深刻で、死者は100人を越える。多くがロヒンギャ武装グループとされる人びとだ。

一連の襲撃事件に先立ち、ロヒンギャ・ムスリムが住民の大多数を占めるラカイン州北部では、第33軽歩兵大隊が配備され、国軍の軍事プレゼンスが強化されていた。報道によれば、政府は当該地域での治安作戦を強化している。ARSAとビルマ国軍はともに、人権侵害を行ったのは相手方だと主張している。数千人が戦闘を逃れて避難民となっている。

衛星画像は当初、8月25日の午後の早い時間帯に、ラテーダウン郡ザイディピン、コータンカウックの両村落区で火の手が上がっている様子をとらえた。8月28日にはマウンドーの町内8カ所、およびマウンドー郡内の複数の村落で、午前中の半ばから午後の早い時間帯で火災を確認した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この期間中について、使用した環境観測衛星のセンサーの解像度と雨期特有の厚い雲が原因で、ラカイン州北部で他にも多くの火災が実際には確認されなかった可能性があると指摘した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれらの火災の位置について、独自に収集した証言とマスコミの報道を比較した結果、住民から放火の訴えがあった複数のケースで相関関係があることがわかった。例えば、ヒューマン・ライツ・ウォッチが火災を確認した場所に近いタウンピョーレッヤー村からバングラデシュ側に逃れたある男性は、治安部隊が武装グループを追跡中に人びとに発砲し、住宅に火を放ったと証言した。「今ではもうすべて焼けてしまいました」という。

Map depicting sites where satellite sensors detected active fires between August 25 and 28, 2017. (Note that the size of the box does not represent the size of the fire detected.) © 2017 Human Rights Watch

衛星センサーが感知した火災の原因を判別することも、火災が武力衝突とは無関係な自然発火である可能性を除外することも技術的にはできない。しかしヒューマン・ライツ・ウォッチは、収集した情報について、2012年2016年のロヒンギャへの暴力事件に関連し、ラカイン州で広く放火が発生した際に発見された情報と極めて似ている点を強調した。

火災が確認された範囲は長さ100kmに及ぶと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2016年10月~11月にビルマ政府治安部隊による火災が発生したときの5倍だ。2016年10月の国境警察支部襲撃殺傷事件発生後、ヒューマン・ライツ・ウォッチが行った衛星画像の分析により、放火が原因で家屋1,500棟以上が焼失したことが明らかになっている。

ビルマ政府と国軍はロヒンギャ住民と過激派が一部の建物に放火したと主張するが、裏付けとなる証拠は今のところ提示されていない。ラカイン州でのこの種の広範な火災は、2016年10月9日のロヒンギャ武装グループによる政府治安部隊への襲撃事件以来発生していない。このとき犯行声明を出したのがアラカン・ロヒンギャ救世軍(Harakah al-Yaqinから名称変更)。ビルマ国軍は武装グループが潜伏しているとみられる地域で「掃討作戦」を展開し、ロヒンギャ住民への深刻な人権侵害を多数引き起こした。ヒューマン・ライツ・ウォッチは放火以外にも、超法規的処刑成人女性と少女のレイプを確認した。

治安部隊が2016年10月から2017年3月まで行った作戦で大量の避難民が発生し、隣国バングラデシュにはロヒンギャ87,000人以上が逃れた。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の2月3日付報告書は、ロヒンギャへの攻撃が人道に対する罪に該当する「可能性は高い」と結論づけている。

2017年3月、国連人権理事会は独立した国際事実調査団を設置し、ビルマ国内、とくにラカイン州で最近発生した人権侵害の訴えの調査をマンデートとして与えた。政府は調査団への協力を拒んでおり、任命された委員3人へのビザ発給拒否を示唆している。

「ビルマ政府は、ラカイン州での人権侵害の訴えについて、信用に足る公平な調査を行う関心も技術も備えていないことが繰り返し明らかになっている」と、前出のロバートソン局長代理は述べた。「関係国は深刻な人権侵害について独立した調査を求め、ビルマ政府に圧力を掛けるべきだ。放置すれば被害者はさらに増えることになる。」

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