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(ワシントン)-昨年6月のイラン大統領選挙結果への抗議が続いているイランでは、非暴力の平和的な抗議行動に積極的に関わっている2つのグループのメンバーたちが、死刑が科されうる犯罪の容疑をかけられ、一部すでに起訴されている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。

イラン政府当局は「リベラル学生・卒業生協会」のメンバーたちを「神への敵意」罪の容疑で訴追するとともに、「人権報告者委員会」のメンバーたちを、反政府武装勢力のメンバーとの容疑で拘束中。

「イラン政府当局には、平和的に集会をもつ権利を行使する市民の諸権利と安全を確保する義務がある」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東局長代理ジョー・ストークは述べた。「しかしそうはせずに、最も重い刑罰を科すための下地作りをしている。」

イラン法には、「神への敵意」罪という犯罪があり、曖昧な文言で定義されている。この犯罪は、イスラム共和国体制の転覆をはかる組織の構成員か、その支持者に適用される。イラン政府内の高位聖職者たちは、抗議行動を行っている人びとは、現在進行中の社会不安を増幅するとともに「扇動」していると非難している。

アーヤトッラー・サイエド・ユーセフ・タバータバーイー・ネジャード師は、エスファハーン市の金曜礼拝導師で専門家会議(国民の選挙で選ばれた合議体。最高指導者を選出)の構成員。同師は、1月1日、抗議行動の参加者はモジャーヘディーネ・ハルクから指令を受けていると主張した。モジャーヘディーネ・ハルクとは、かつてイラン政府に対する武装闘争を展開していたイラクを拠点にする反政府武装組織。

イラン政府当局は、「リベラル学生・卒業生協会」と「人権報告者委員会」が共にモジャーヘディーネ・ハルクと関係があると非難している。だがアーヤトッラー・タバータバーイー・ネジャード師も当局側もその非難を裏付ける証拠を一切示していない。

イラン政府当局は、「リベラル学生・卒業生協会」と「人権報告者委員会」が共にモジャーヘディーネ・ハルクと関係があると非難している。だがアーヤトッラー・タバータバーイー・ネジャード師も当局側もその非難を裏付ける証拠を一切示していない。

リベラル学生・卒業生協会(LSSA)は4年前に結成された学内団体で、6月の大統領選挙後の平和的な抗議行動に積極的に活動している。

2009年11月19日、治安部隊は、LSSAのメンバー7人がエフサーン・ドラトシャフ宅での会議を終えて出てくるところを逮捕。4人は保釈金を納めて釈放されたが、メフルダード・ボゾルグ、ドラトシャフとシーナー・ショコヒーは依然拘束されたまま。当局は、ボゾルグとドラシャフを、モジャーヘディーネ・ハルクと関係があるとの容疑で「神への敵意」罪で起訴。12月24日、イラン国営テレビは、モジャーヘディーネ・ハルクとの関係を「告白」させられる2人の姿を放送した。2人は弁護士を付けることも許されないまま、裁判を迎えることになる。

同協会のスポークス・パーソンであるサイード・ガーセミーネジャード氏は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、2人は、過酷な物理的強迫ゆえに証言せざるをえなくなったと述べた。協会のウェブサイトによれば、釈放された他のメンバーたちも、取調官から身体的な虐待を受けた、と報告している。まだ拘束が続くメンバーたちには特に過酷な扱いが行われている、という。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査に応じた人権報告者委員会(CHRR)のあるメンバーは、テヘランのエヴィーンエヴィーン刑務所の取調官たちは、同委員会のメンバーたちに対しても、類似の容疑で訴追すると脅している、という。同委員会は、イラン国内の人権状況のモニタリングを行っている独立した活動家たちで構成され、約5年前に設立された。メンバーたちは選挙後の抗議行動にも、非暴力で平和的に参加している。

12月20日の夕刻、テヘランのエンゲラーブ・スクエアの治安部隊は、シーヴァー・ナザルアーハーリー、クーヒャール・グーダルジー、サイード・ハエリを逮捕(いずれもCHRRメンバー)。3人は出発直前のコム行きのバスに乗っていた。現地で大アーヤトッラー・モンタゼリ師の葬儀に参列する予定だった。メンバーはヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、同会で「アラービー」と呼んでいる取調官がバスに乗り込んで、リストから3人の名前を読み上げ、その後治安部隊が3人を拘束したと述べた。1月2日には、同じく、同会のメンバーであるパリーサー・カーカーイーとメフルダード・ラーヒーミーの2人が、テヘランの情報省の出頭命令に応じた際に逮捕された。

イラン政府当局は、12月1日から、同会メンバーのサイード・カラナキーとサイード・ジャラーリーファルの2人をエヴィーンエヴィーン刑務所に拘束し続けている。どちらも弁護士をつけることを許されていないほか、正式に起訴もされていない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた同委員会メンバーによれば、12月29日、取調官「アラービー」がアーハーリー、カラナキーとジャラーリーファルに対し、会のメンバーたちにウェブサイトを閉鎖するよう伝えるよう要求。このメンバーによれば、この「アラービー」自身が電話口に出て、同会に対し、もし命令に従わなければ「重大な結果」を招くと脅迫するとともに、同会がモジャーヘディーネ・ハルクと関係があると非難した。

メンバー側によれば、拘束されたメンバーたちには、モジャーヘディーネ・ハルクの関係者であるとの虚偽の証言を行うよう強い圧力が掛けられている。同会側はこの武装組織との関係を否定している。

「平和的な抗議行動をする自由が保障されるべきである。そうした行動をとったせいで、投獄され重刑を科されるなど許されない」と、ストークは述べた。「もしイラン当局側に、特定の人物が暴力行為に関係していたという信頼できる証拠があるなら、公正な公開の法廷で、証拠で容疑を立証すべきである。」

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