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東京新聞・中日新聞 2020年4月24日

新型コロナウイルスでクラスター(感染者集団)発生が特に懸念されるのが、多人数の密集を余儀なくされる刑務所などの刑事施設や、外国人の収容施設などだ。居室を共有することが多く、いわゆるソーシャル・ディスタンス(社会的距離)をとることがほぼ不可能。そこでイタリア、ドイツ、韓国、トルコ、米国などさまざまな国は、一部の受刑者を釈放するなどの措置を取っている。

一方、日本では受刑者の釈放を検討しているとは聞かない。刑務所医療の慢性的な人員不足や、近年著しい受刑者の高齢化を考えると、リスクは特に高い。欧州では新型コロナによる死亡事例の95%以上が六十歳以上だったと報告されている。

一方で、高齢の受刑者の多くが、万引や薬物の使用・所持など比較的軽い罪で拘禁されていることも考えると、新型コロナ感染という事実上の死刑判決になり得るリスクを、高齢受刑者にもたらすことは、人道的にあってはならないことだ。

各国では、社会奉仕や被害者への賠償など、収監にかわる代替刑の導入が広がり、ベストプラクティス(最善の手法)とされている。日本もこれを機会に、刑務所人口の多くを占める薬物依存症の人たちや万引を繰り返す人たち、さらに高齢者や障害者、妊婦、幼い子どもを抱える親についても、収監以外の対応を問い直す機会にしたい。

(ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)

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