東京新聞・中日新聞 2020年4月3日

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前回(三月二十七日夕刊)触れた、子どもの「家庭で育つ権利」。子どもの権利条約が定める基本的人権だが、日本では親と暮らせない子どもの約八割が、児童養護施設や乳児院で養育されている。そこで政府は児童福祉法を大きく改正して「家庭養育優先原則」を定め、三歳未満の里親等委託率を二〇二四年度末までに75%以上とするなどの目標を掲げた。赤ちゃんには毎日同じ「ママ」「パパ」が愛情を注ぐ家庭が必要だが、それがやっと国の方針として示された意味で画期的だ。

都道府県等は先月末までに、新しい原則に沿った、今後十年の「社会的養育推進計画」を作った。作るはずだった、というべきか。

というのは、実に九割が75%目標を拒んだのだ。20%台など、極めて低い目標を設定した自治体もある。専門家は「存続に危機感を持つ地元施設の抵抗」に自治体が折れた結果と指摘する。

既得権や大人の怠慢で、子どもの健全な養育や発達を阻害していいはずがない。先月行われた厚生労働省への緊急要請では、施設で育ち、養子として現在の母親に迎えられた女優のサヘル・ローズさんら多くの著名人も、要請書に名を連ねた。

今が子どもの今後十年を決定づける正念場だ。厚労省には、国の目標に沿って計画の書き直しを都道府県等に求める、そんな果敢な決断を求める。

(ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)