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東京新聞・中日新聞 2020年1月24日 © 東京新聞・中日新聞

 

前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告のレバノンへの逃亡で、日本の刑事司法が注目されている。逃亡は許されるはずもないが、否認を続けたゴーン被告の人権が侵害されたのは確かだ。忘れてはならないのは、多くの日本の人びともこの制度の下で苦しみ抜き、冤罪犠牲者も出たことだ。

国内法上も国際法上も、自白強要の禁止や無罪の推定など、多くの被疑者の人権保障が定められている。弁護士になってから、そうした法原則と現実の乖離を私が思い知らされた。突然逮捕された妻子あるサラリーマン。冤罪を訴え続ければ勾留は長期間続くが、自白すれば程なく釈放される。罪は絶対認めたくはない、しかし家族と会いたい。自白圧力の下、彼は精神的に追い詰められていった。彼の境遇は決して例外でない。

容疑者の取り調べに弁護士が立ち会えないことにも、世界は仰天している。原則として制限なく弁護士にアクセスできるのが国際基準だ。

そうした批判に「外圧だ」との声もある。しかし人質司法からの脱却を求める国内からの強い声は、何十年も前から根強い。最近では昨年四月にも、千人を超える法律家が「『人質司法』から脱却を」との声明を公表している。日本のすべての人の人権を守り、世界に誇れる制度に向けて今こそ、森雅子法相のリーダーシップに期待したい。

(ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)

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