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ミャンマー:批判的な言論を理由に逮捕急増

平和的な表現を犯罪とみなす法律を廃止せよ

Demonstrators shout slogans at a protest against an amendment to Myanmar’s public assembly law in Yangon, March 5, 2018.  © 2018 Thein Zaw/AP Photo
 

(ニューヨーク)- ここ数週間、ミャンマー当局は軍や政府を平和的に批判する人びとを次々と逮捕している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは今日述べた。批判者の言論の自由や表現の自由を弾圧するために適用されている抑圧的な国内法は、2019年4月29日から新たな会期が始まる議会で、廃止または改正されるべきだ。

風刺的パフォーマー、政治活動家やジャーナリストの逮捕者の急増は、国民民主連盟(NLD)政権下のミャンマーで表現の自由が急速に制限されつつあることを反映している。最近起きた報道の自由に対する一撃としては、4月23日に最高裁が国家機密法違反に問われたロイター通信記者2名の上訴を棄却し、それぞれ禁固7年の下級審判決を支持した。今年4月初めにピューリッツァー賞を受賞したワ・ロン氏とチョー・ソウ・ウー氏に対する訴迫は、ラカイン州Inn Din村で軍が関与して起きたとされるロヒンギャ・ムスリムの虐殺事件を取材したことに対する報復とみられている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムズは、「ミャンマー政府は、軍と政府を批判する人びとを訴追するために長らく使われてきた法的な弾圧手段との闘いを主導すべきだ」と述べる。「かつて軍事政権下で、アウンサンスーチー氏と多くの現職議員が表現の自由のために闘った。しかし、与党であるところのNLDは、批判者を投獄する口実となっている人権侵害的な国内法を廃止、または改正するための措置をほとんど何も取っていない。」

当局は様々な国内法、とりわけ電気通信法第66条(d)および刑法第505条の下で、平和的な批判者の逮捕者を出し続けている。第66条(d)はインターネット上の批判者に対して幾度も適用されてきた。一方、広義に解釈できる刑法第505条は公判前の保釈を認めておらず、主に軍によって使用されている。

4月22日、ヤンゴンのマヤンゴン地区裁判所は、ミャンマーで4月の新年のホリデー期間に行われてきた風刺的なパフォーマンスのために、Peacock Generation Thangyat(タンジャット)劇団の団員5人の身柄を保釈なしで拘束するよう命じた。タンジャットはスラム詩の一種で、政治から社会的行動に至るまでをユーモラスに風刺する伝統芸能だ。Kay Khine Tun氏、Zayar Lwin氏、Paing Ye Thu氏、Paing Phyo Min氏、Pho Thar氏の5人は、刑法第505条(a)に基づく容疑でインセイン刑務所に収監された。同条は、「陸軍、海軍または空軍のいかなる将校、兵士、船員または飛行士の反逆、そうでなければ任務放棄、任務失敗の原因となる、あるいは原因となるであろうことを意図した」すべての言説を犯罪と定めている。5人は最長2年の刑と罰金の恐れに直面している。

警察は4月15日に5人の劇団員のうちの3人と、もう一人の関係者Su Yadanar Myint氏を逮捕し、電気通信法第66(d)条違反で訴追している。Facebookで自分たちのパフォーマンスをライブで配信し、その後そのパフォーマンスの様子がYouTubeで共有された4人の団員は保釈された。

4月23日以来、最大で25名のPeacock Generationタンジェット劇団の団員が、電気通信法第66(d)条に基づいて訴えられているとされているが、氏名はまだ公表されていない。団員らは4月29日に出廷する予定だ。

前出のアダムズ局長は、「ただジョークを飛ばしただけの人びとを逮捕するような真似は、ミャンマー当局がいかに神経過敏になっているかをみずから吹聴しているようなものだ」と指摘する。「当局はPeacock Generationタンジェット劇団の団員に対する訴追を即時取り下げ、彼らの表現の自由を認めなければならない。」

ミャンマー2008年憲法のもと、軍の役割を批判したFacebookの一連の投稿をめぐる刑事訴追で、映画製作者かつ人権活動家のMin Htin Ko Ko Gyi氏が当局に拘禁された事案も憂慮されている。4月12日の審問では、肝臓がんを患っているにもかかわらず、同氏は保釈されなかった。

さらには4月22日に軍と民族武装集団アラカン軍との間で発生した戦闘に関する報道を理由に、地元報道機関The Irrawaddy(エーヤワディー)の編集者に対して、軍は、電気通信法第66条(d)に基づき、刑事訴訟を起こした。同紙は、1月に悪化した両軍の敵対関係に巻き込まれた一般市民の犠牲者、および国内避難民について定期的に報じてきた。

アダムズ局長は、「ミャンマーが長きにわたり軍事独裁政権の支配下におかれている間、多くの政府やドナーらは、表現の自由と政治囚の釈放を政策方針の基礎にすえていた」と指摘する。「ミャンマーで今まさに権利を尊重する民主主義への転換がぐらついている中、そうした声はいったいどこへ行ってしまったのだろうか?」

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