(ジュネーブ) -  2018年6月25日、「スポーツ人権センター」が創設された。これはスポーツに関連する人権侵害抑制と被害者支援の新たな可能性になりうると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ジュネーブを拠点とする同センターは、オリンピックや、現在ロシアで開催されているW杯といったメガスポーツイベントに関連した人権侵害も取り上げる予定だ。

センターは、人権ビジネス研究所(IHRB)の後押しで設立された。代表はアイルランドのメアリー・ロビンソン元大統領。かつて国連人権高等弁務官も務めた人物だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのグローバル・イニシアチブ担当ディレクター ミンキー・ワーデンは、「大規模スポーツイベントは、ジャーナリストの投獄や嫌がらせ、労働者の権利侵害、環境破壊、人権侵害的な貧困地域の一掃で台なしにされている」と指摘する。「スポーツファンは、搾取され、騙され、虐待された労働者によって建設されたスタジアムで観戦したいとは思っていない。」

スポーツ人権センターは、世界のスポーツイベントに常々伴う重大な人権侵害を抑え、最終的には根絶するため、学びや調停などの場の提供を目指す。関係者が責任をしっかり果たすとともに、被害者が体験を共有して法の裁きを模索する動きを支援し、かつスポーツに関連した人権侵害が今後起こらないよう支援する。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この度のセンターの前身となったメガスポーティングイベント・プラットフォームに積極的に参加してきた。同プラットフォームは、政府機関・政府・スポーツ団体・選手・地元組織委員会、スポンサー・放送局・NGO・労働組合・雇用者・各国人権機関から成るこれまでに例のない連合で、 スポーツがポジティブな変化を生み出す力を持っていることを示そうと活動してきた。

次回のW杯は2022年にカタールで開催される。2010年にカタールが22年のW杯開催国に決定して以来、同国は8つのスタジアム、ホテル、交通機関、そのほかのインフラの修復または建設など、大規模な建設ラッシュにわいている。カタール政府当局はW杯関連のインフラプロジェクトに、毎週5億米ドルを費やしていると述べているが、労働者の権利を尊重し、あらゆる人権侵害に救済措置を講ずることが重要だ。 同国の厳しい暑さや湿気を考慮すれば、スタジアムほかの施設を建設する労働者にとって事態は特に急を要する。

前出のワーデン ディレクターは、「ビジネス人権センターがカタールのW杯をめぐる諸問題にどう取り組むかが、人権侵害の根絶と救済を支援するセンターの力を知る最初のテストになるだろう」と述べる。

関連大会に関連する人権リスクをよりよく管理したいと望んでいる国際サッカー連盟(FIFA)や国際オリンピック委員会、UEFA(欧州サッカー連盟)、コモンウェルスゲームズ連盟ほかのスポーツ団体もセンターのメンバーだ。また、ヒューマン・ライツ・ウォッチやアムネスティ・インターナショナル、トランスペアレンシー・インターナショナルといった非政府系監視団体、国際的な労働組合、国連高等弁務官事務所なども名を連ねている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまでにも、2008年の北京オリンピックから2018年のロシアW杯にいたるまで、メガイベントに関連する重大な人権侵害を調査・検証してきた。ロシアW杯では、国際建設労働組合連盟 (BWI)が、スタジアム建設で21人の犠牲者が出たことを調査・報告している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「スポーツ&ライツ・アライアンス(SRA)」のメンバーでもある。NGOならびに労働組合の世界連合で、人権・労働権・腐敗防止に関する国際基準の尊重を目指して調査や国際スポーツ団体への政策提言活動を行っている。

ビジネス人権センターが焦点を当てる事項は以下のとおり:

       スタジアムやその他のインフラ建設現場における労働者の死亡や負傷を根絶するために、労働者の安全性を向上させること

       大規模な世界スポーツイベントをめぐる人権侵害の被害者の救済を強く働きかけること

       スポーツ内外における分野で、女性やLGBTの人びとに対する構造的差別に取り組むこと

       選手、権利監視者、ジャーナリスト、権利活動家の保護を確保すること

ワーデン ディレクターは、「スポーツには人類の偉業を鼓舞し、祝福する可能性が秘められている。だからこそ、大規模スポーツイベントを実施するために労働者が犠牲になったり、ジャーナリストが投獄されたりしていい理由はない」と述べる。「ヒューマン・ライツ・ウォッチは、労働者・ジャーナリスト・選手・環境活動家・スポーツファンの権利を保護するために、センターが活躍することを期待している。」