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ブルンジ:大量殺害から10年 法の裁きはいまだ実現せず

ガツンバで起きたコンゴ難民殺害の加害者を訴追すべき

(ナイロビ)ブルンジ関係当局は、2004年に起きたコンゴ民主共和国からの難民の大量殺害事件の加害者たちの責任を問うべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2004年8月13日、難民キャンプがあったガツンバで、そのほとんどを女性と子どもが占める150人超の難民が殺害され、100人超が負傷。特定の民族を標的にした攻撃としては、1990年代以降ブルンジで最悪の事件のひとつとなった。犯行を認めた武装集団の指導者層は、現在に至るまで法の裁きを受けないでいる。

被害者のほぼ全員が、コンゴ民主共和国東部にある南キブ州出身のツチ系コンゴ人バニャムレンゲ民族だった。同国の武力紛争から逃れ、国境近くにある隣国ブルンジの町ガツンバに設置された難民キャンプで暮らしていた。攻撃は民族性を理由にしたもので、被害者たちは発砲され、焼かれて殺害された。当該難民キャンプのほかの部分で暮らしていたそれ以外の民族集団やブルンジ人は、被害を受けていない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局局長ダニエル・ベケレは、「ガツンバの大量殺害は、意図的に非武装の一般市民を直接狙った攻撃だった」と指摘する。「事件はかなり詳細に調査・検証されているにもかかわらず、誰も訴追されていないのが10年後の今の現実である。」

ブルンジ政府は事件の10周年を機に、ガツンバの大量殺害ほか非武装の一般市民に対する重大犯罪をめぐる不処罰に、終止符を打つという決意を示すべきだ。

攻撃した集団の主はブルンジのフツ系過激派「解放のための国民軍」(Forces nationales de libération, 以下FNL)。FNLは反政府組織では最後に武装解除したなかのひとつで、2009年に政党となった。が、戦闘員の一部はいまだブルンジおよびコンゴ東部で活動している。

大量殺害があった直後にFNLが犯行声明を発表。FNLのパスツール・ハビマナ報道官(当時)は、難民キャンプで戦闘員をかくまっており、難民も武装しているとして攻撃を正当化した。彼はまた、攻撃がそれまでにあった何千もの一般市民殺害に対する応酬であることを示唆し、自衛権を引き合いに出した。しかし数年後にはその発言をくつがえし、大量殺害がFNLによるものであることを否定している。

2004年にブルンジ政府がハビマナ元報道官とFNLのアワトン・ルワサ元議長に対し逮捕状を発行したが、いずれも逮捕されていない。両名とも現在に至るまでブルンジに暮らしており、所在もはっきりしている。ハビマナ氏はブルンジ与党に近いFNL支部の主要メンバーでもある。

おりしも、ガツンバの大量殺害10周年の3カ月前に、ブルンジ議会は1962年〜2008年に起きた人権法および国際人道法の重大違反のために、「真実と和解委員会」の設置を定める法案を採択した。この期間にブルンジでは何万人もの人びとが殺害されており、攻撃の多くは民族性に起因するものだった。1993年に始まった戦争でも数多くの大量殺人が発生したが、ガツンバの悲劇はなかでもひときわ大規模な攻撃のひとつとして記憶に新しい。

2014年新法は、戦争犯罪や人道に対する罪、ジェノサイドといったもっとも重大な犯罪の加害者を訴追する特別法廷の設置を規定するものではない。

前出のベケレ局長は、「真実と和解委員会法に特別法廷設置条項が含まれないことで、不処罰終焉および何十年も続く苦難終結の機会を逸してしまっている」と指摘する。「とはいえ特別法廷の不在を理由に、裁判制度を通じて生存者と犠牲者遺族のために法の裁きを実現する責任から、政府が逃れることはできない。」

ここ数年、ブルンジでの大規模な民族的殺害は小康状態にあるとはいえ、政治的な暴力事件は続いている。2010年の大統領選を含む一連の選挙後の混乱で、2010年〜12年に多くの人びとが政治的な理由で殺害された。犠牲者の多くは、ルワサ派に近いとみられていたFNL現・元メンバーで、治安部隊や与党に関係する人びとの手にかけられた。FNLほかのメンバーとみられる武装集団も、報復攻撃で与党メンバーを標的とした。これら犯罪はその大半が不問に付されて現在に至る。

隣国コンゴ民主共和国でも、バニャムレンゲ民族とそのほかのコンゴ系民族集団間の緊張が続いており、全陣営による残虐な攻撃に繋がっている。

2011年10月4日に南キブ州のカルンゲで、バベンベ系コンゴ人が大半を占める武装集団「マイマイ・ヤクトゥンバ」の戦闘員が待ち伏せし、人道支援に従事するバニャムレンゲ系コンゴ人7名を殺害。犠牲者の民族性を標的の理由にした攻撃だった。

2014年6月6日にも同じく南キブ州のムタルーレでもうひとつの民族集団バフリロ民族およびバニャムレンゲ民族、そしてブルンジ系のバルンジ民族の間で緊張が高まった。この時の被害者の大半はバフリロ系の人びとだった。

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