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中国は北朝鮮人庇護希望者の権利を守れ

中国は、庇護希望者の北朝鮮への強制送還、および彼等を援助する救援活動従事者の逮捕や嫌がらせを止めなければならない。本日リリースされたヒューマン・ライト・ウォッチのニュース・レポートは、このように述べている。その報告書「知られざる脱北者―中華人民共和国の北朝鮮人」は、中国にいる北朝鮮人たちが耐え忍んできた搾取や長年の潜伏生活について詳しく紹介している。

この報告書は、中国人男性を対象とした北朝鮮人「妻」の人身売買、帰国者を待ち受ける北朝鮮当局による拷問や屈辱をあきらかにしている。報告書は、現在ソウルにいる北朝鮮人難民、人道的活動家、学術関係者、様々な国の政府高官へのインタビューを元に、帰国者が北朝鮮の強制労働収容所や捕虜収容所で受けている人間以下の取扱や虐待の醜い絵姿を浮き彫りにしている。

「自国での飢えや人権侵害から逃れようとする難民の脱北行動の責任のほとんどが北朝鮮にある」とワシントン在住のヒューマン・ライト・ウォッチのアジア担当ディレクター、マイク・ジェンドレージクは語る。「しかし中国にも大きな責任がある。庇護希望者の強制送還は、あからさまな国際法侵害である」。

1982年、中国は、自国で迫害を受ける庇護希望者の強制送還の禁止を条約国に義務付けている1951年の「難民の地位に関する国連条約」および1967年の同「議定書」の締結国となっている。強制送還された北朝鮮人は、脱北が反逆罪と解釈されれば、長期の実刑、さらには死刑を宣告される恐れさえある。

帰国者を厳罰に処すという政策を北朝鮮が変え、国際監視団を受け入れるまで、たとえ脱北の動機が確定していない場合であっても、北朝鮮人の庇護希望者は全員強制送還から保護される資格を有するものと見なすべきである、とヒューマン・ライト・ウォッチは語る。

ヒューマン・ライト・ウォッチは、国際社会に対し、人権義務を遵守するよう北朝鮮に圧力をかけ、来年ジュネーヴで開かれる国連人権委員会で北朝鮮に関する決議を採択するよう呼びかけている。また中国に対しては、庇護希望者にインタビューするためにただちに国連難民高等弁務官の立ち入りを認めるよう要求している。

北朝鮮人による中国への脱出は、1990年代終わりの食糧難でピークに達したが、極貧や弾圧が今なお脱北者を生み続けている。逃亡ルートは、賄賂や口コミで良く知られるところとなった。現在、中国には何千もの北朝鮮人が潜伏している。その多くが北朝鮮と国境を接する吉林省に集中している。しかし実際の数字を確定することはほぼ不可能である。

国際社会は、北朝鮮人たちが今年初めに庇護を求めて北京や他の都市にある在外公館の敷地内にこぞって駆け込み始めるまで、この大量脱北にほとんど見て見ぬふりをしてきた。2002年の3月から9月にかけて、計121名の北朝鮮人がついに韓国に向けて中国を出国した。それらの事件を受けて、中国は、外交関係施設周辺の警備を強化し、大使館に北朝鮮人の引渡しを要求し、国境周辺の警備を強化することで脱北者問題に対応した。

欧州連合、日本、アメリカ合衆国、カナダなど、中国政府と人権問題を協議している国家政府は、庇護を希望する北朝鮮人の苦境に直ちに注意を傾注しなければならない。そういった国々は、中国に対し、難民認定審査の実施につき、国連難民高等弁務官と高官レベル協議を直ちに開始するよう強く働きかけていかなければならない。暫定措置として、中国政府は、すべての北朝鮮人に対し、嫌がらせや強奪の脅威、または北朝鮮への強制送還から彼等を守る無制限の人道的地位を認めるべきである。

「世界はもはや北朝鮮からの庇護希望者の現状を見て見ぬ振りするわけには行かない」とジェンドレージクは語る。「彼等の権利を守るために一致協力した取り組みが必要である」。

知られざる脱北者の証言:中華人民共和国の北朝鮮人

あの瞬間を思い出すたび、冷や汗がどっと出る。あのときつかまっていたら、いったいどうなっていたことか。[私が置かれている家庭環境から]、[北朝鮮]国家安全局は私をスパイか売国奴と見なし、裁判もしないで銃殺刑、あるいは終身刑にしていたかもしれない。強制労働収容所や秘密鉱山に送られたかもしれない。ひょっとしたら私の体は人体実験に使われていたかもしれない。いずれにしても、私はかろうじて息をするだけの生きる屍になっていたことだろう。

―北朝鮮強制労働収容所から脱出し生き延びた人―

豆満江を渡った北朝鮮人女性が、朝鮮系中国人の家の扉を叩いて食べ物を恵んでくれと頼んだ場合、助けの手が差し伸べられるだろう。数日後、彼女の「保護者」の誰かが、結婚した方が良いと勧めるかもしれない。女性が合意すると、夫になる家から保護者に2000~3000人民幣(240~360米ドル)が支払われる。北朝鮮人女性は、まず朝鮮系中国人に売られ、そこからさらに中国人へと売り飛ばされるのだ。彼女たちは奴隷と同じだ。性のおもちゃにされているのである。

―1997年から2001年まで中国で北朝鮮難民の救援活動に携わった人道活動家―

私が収容所に拘留されている間、1200名もの人が収容所に送られてきた。外傷なしでここを出ることができた人は、私が知る限り、たった7人だ。伝染病で多くの人が命を落とし、大勢の人が銃殺された。ここでは、その人間が間もなく死ぬだろうとわかったときにだけ、出所を許される。拘留者の多くが肺結核や他の病気を患っている。収容所にはおよそ300人が収容され、30人のグループ毎に部屋に入れられている。毎月100人もの人が新たに収容所に送り込まれ、毎日10名前後の人が亡くなっていく。1日一回の食事を受けられなければ、その人の体は飢えで弱まり身動きできなくなる。収容所には棺もなく、遺体は厚手の板に載せられて丘の上に運ばれ、そこに埋められるのだ。

―北朝鮮の強制収容所での拘留経験を持つ元国境警備隊員―