
(ニューヨーク)-タイ南部国境地域(深南部)の分離独立派反政府勢力は、教師と学校へのあらゆる攻撃をただちに止めなければならない。
マレー族イスラム教徒反政府勢力は2012年12月11日、パッタニー県の学校に昼食時間に侵入、タイ族仏教徒教師2人をその場で射殺。過去6週間で反政府軍はこの事件の他教師3人を殺害、3人を負傷させている。また、反政府勢力関係者とみられる者たちが、少なくとも学校1校を放火している。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは、「教師を殺害するタイ南部反政府勢力の攻撃は、人道を全く無視する卑劣な行為だ。これらの攻撃は教師と学校だけでなく、イスラム教徒学生とその家族、反政府勢力が意見を代弁していると主張するイスラム教徒コミュニティにまで危害をもたらしている」と指摘する。
12月11日の攻撃では、迷彩服を着用しM16突撃銃で武装した男5人が、パッタニー県マヨ郡のバンバゴ学校に侵入した。昼食中の学校の食堂に、男3人が歩いて入り、仏教徒教師2人をイスラム教徒教師5人から分離。仏教徒のティヤラット・チュアイゲオ校長がイスラム教徒教師の陰に隠れようとした時、反政府勢力の1人が彼女の頭部を処刑スタイルで撃ち、もう1人の仏教徒教師ソムサク・クワンマも同様に射殺された。武装した男らはその後逃亡した。
この事件などの教師殺害事件をうけ、12月12日に国境諸県教職員連盟(Confederation of Teachers of Southern Border Provinces)は、パッタニー、ヤラー、ナラティワートの3県とソンクラー県の4郡にある、20万人以上の学生が通う公立学校1,300校を一方的に休校とした。休校期間は、国の治安機関が教育者により良い警護を提供できるようになるまでとされている。12月13日にインラック・シナワット首相と陸軍プラユット・ジャンオーチャー司令官が、深南部を公式訪問した際、反政府勢力は教師への攻撃を続けると脅迫するビラを出している。
パッタニー自由戦士(ペジュアン・ケメルデカーン・パッターニ)と名乗る、マレー族イスラム教徒の分離独立派反政府勢力は、反政府攻撃が激化した2004年1月以降、公立学校の教師及び教育関係者154人の殺害に関与したとみられる。反政府勢力は公立学校とその教師を、政府権力と仏教国タイ文化の象徴と見なし、頻繁に攻撃の標的としてきた。また反政府勢力は、これらの殺害はイスラム教指導者たちが政府治安部隊内の工作員によって暗殺されたとされる事件の報復であると主張している。
反政府勢力は、宗教、民族、職業にかかわらず、教師と教育関係者を含む一般市民および学校に対する攻撃をただちに止めるべきだ。
タイ政府は教師や校長など教育者の意見を聴取し、身の安全を保証する明確な政策をただちに打ち出さなければならない。教師は護衛や集団移動のような防衛対策に参加するか否かの決定の際、十分な自由裁量を認められるべきだ。対策に賛成する教師がいる一方、そうした対策により地元コミュニティーとの信頼関係を構築しようとする学校の努力が損なわれてしまうという懸念や、兵士の近くに身を置くこととなるので危険が増すという恐れをもつ教師もいた。政府治安部隊は、学校が始まる前と終わる前に、登下校ルートを徹底的に捜索するなどして、全一般市民への保護を強化するべく、警備手法の実効性を評価しなければならない。
深南部の教師は、学校への監視カメラの導入や危険手当の増額と共に、暴力を受けた教師の家族に対する賠償金を求めてきた。
前出のアダムス局長は「タイ南部の子どもたちに教育を保障するため、教師は勇敢にも自らの命を危険にさらしてきた。しかし政府は未だに、教師や学生が毎日直面している極めて大きな危険に対し効果の乏しい対策を繰り返しているにすぎない」と指摘した。
最近教育関係者と学校に対する攻撃は増加しており、そうした中で12月11日の殺人事件も起きた。分離独立派反乱勢力が実行犯であるとみられる12月11日以前の最近の攻撃は以下のとおり。
リンク:
[1] http://www.hrw.org/ja/news/2012/12/16