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国連人権理事会、北朝鮮に対する 画期的調査委 設立

アカウンタビリティを求める被害者の声に  満場一致で応える

(ジュネーブ)-国連人権理事会北朝鮮の人権侵害に関する調査委員会(以下COI)の設立を決めた。これは画期的な前進だ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。同委員会は北朝鮮での「人道に対する罪」などの人権侵害を調査すると共に、アカウンタビリティ(真相究明・責任追及)を求める勧告を作成することとなる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアドボカシー・ディレクター、ジュリー・デ・リベロは、「このCOIは、北朝鮮政府が数十年にわたり行ってきた人権侵害を明らかにする一助となる」と指摘。「今回のCOI設立は北朝鮮政府に、世界が注目しているのだから人権侵害を止めなければならない、という強いメッセージを送っている。」

本委員会の設立を決めた人権理事会の決議は、コンセンサスで採択された。同決議は、北朝鮮の「重大で広範かつ組織的な」人権侵害と共に、「朝鮮民主主義人民共和国の政治犯および送還された一般市民に、拷問と政治犯収容所での拘束が行われていること」も非難している。本決議は日本と欧州連合によって提案された。

COIには、従前より同理事会から北朝鮮の人権状況に関する専門家として任命されていた、マルズキ・ダルスマン氏が含まれる。その任務は、「食糧確保の権利侵害、強制収容所に関連した人権侵害、拷問および非人道的処遇、恣意的拘禁、差別、表現の自由の侵害、生命の自由の侵害、移動の自由の侵害、外国国籍者の拉致を含む強制失踪について、特に『人道に対する罪』を構成する可能性のある人権侵害について、完全なアカウンタビリティを確保する見地をもって」、1年間の調査を行うというものだ。

前出のデ・リベロ ディレクターは、「北朝鮮の指導者交代が北朝鮮国内の人権状況に進展をもたらすかもしれないという期待はあっという間に消え失せた」と指摘。「COI設立が圧倒的支持を受けたのは、北朝鮮が世界から必死に隠そうとしていた人権侵害を明らかにする時が来た、という強いコンセンサスが世界にあることを反映している。」

国連のナビ・ピレイ人権高等弁務官は、COI設立を支持して2013年1月に、「ほとんど理解されず報道もされることがない、世界最悪の人権状況の国のひとつについて徹底的な調査を行うことは完全に正当化されるのみならず、長年待ち望まれてきたことと考える」と訴えた。同高等弁務官は、長年にわたって北朝鮮に拉致されている多数の韓国人と日本人の消息を明らかにし、長年苦しみ続けてきた被害者家族のために、真相究明、法の正義実現、救済提供の緊急性もまた、浮かび上がらせた。

人権理事会への報告でダルスマン氏は、北朝鮮における厳しい差別や食糧確保の権利侵害などを含む、主要な9パターンの人権侵害を詳述。同氏は、政治犯収容所に送られて餓死寸前の状態にあり、強制労働をさせられ、日常的に拷問と非人道的で品位を傷つける処遇に苦しむ、北朝鮮国民の悲惨な体験を調査してまとめるための調査委員会を設立する必要性を指摘していた。

北朝鮮における人権侵害の被害者らは、これまでにも人権理事会に対し行動を起こすよう求めてきた。中でも今月半ばに同理事会で開催されたイベントの際、悪名高い北朝鮮の政治犯収容所から脱走したシン・ドンヒョク氏による衝撃的な証言は注目を浴びた。人権活動家らは、北朝鮮の核開発計画に対する懸念により、北朝鮮の人権状況に対応する必要性の影が度々薄くなることについて失望の意を表明。北朝鮮は自国民の権利を侵害しただけではなく、多くの外国国籍者、特に韓国人と日本人を拉致している。今回の同理事会によるCOI設立決定は、親族の所在に関する情報と安全な帰還を求めて働きかけてほしいと国連に求めてきた拉致被害者家族たちの求めに対応したものでもある。

前出のデ・リベロ ディレクターは、「COI設立で、被害者は達成感を実感している」と指摘。「COIの設立決定は、北朝鮮での人道に対する罪などの人権侵害に対するアカウンタビリティ実現に向けた非常に重要な前進といえる。」

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