南部アフリカ開発共同体は選挙に向けた「民主的空間」作り 働きかけを
2013年03月19日

警察によるNGO活動家への嫌がらせと逮捕は、選挙が近づくにつれて激化している。政府は警察による権力濫用を止めさせ、責任者を処罰する必要がある。

アフリカ地域アドボカシー・ディレクター、ティセケ・カサンバラ

(ヨハネスブルグ)-ジンバブエ政府は、NGOコミュニティへの弾圧をただちに止めなければならない。在ジンバブエNGOは総選挙に向けて活動を強化している。

ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(以下ZANU-PF)と民主改革運動(以下MDC)の間で合意された連立政権設立に向けた「グローバル政治合意」のもと、2013年3月16日に新憲法に関する国民投票が行われ、それが今年後半の選挙に道を開いた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ地域アドボカシー・ディレクターのティセケ・カサンバラは、「警察によるNGO活動家への嫌がらせと逮捕は、選挙が近づくにつれて激化している。政府は警察による権力濫用を止めさせ、責任者を処罰する必要がある」と指摘する。

ZANU-PFの支配下にある警察は2012年12月以降、NGO活動家やNGOに対して、政治的な弾圧を幅広く行っている。

警察は2013年3月17日、著名な人権弁護士ベアトリス・ムテツワ(Beatrice Mtetwa)氏を首都ハラレで逮捕し、司法手続き妨害の容疑で立件(charge)。3月18日に高等裁判所が釈放を命じたにもかかわらず、拘束は続いている。ムテツワ弁護士は、同じく3月17日に警察に逮捕された官邸スタッフ4人に対する弁護活動を行った結果、逮捕された。官邸スタッフ4人は拘束され続けているが、立件はされていない。

「ジンバブエ平和計画」のジェスティナ・ムココ(Jestina Mukoko)代表は首都ハラレで3月8日、民間ボランティア組織(以下PVO)法上の未登録団体を率いていた容疑、および放送サービス法と関税消費税法に違反して複数のラジオと携帯電話を同国に密輸入した容疑で立件された。PVO法違反の容疑は結社の自由を侵害するものであり、ほかの容疑は同団体の人権活動を妨害するための政治的動機に基づいた試みとみられる。

警察は2月15日、ジンバブエ・コミュニティ開発センター(以下CCDZ) の職員ジョージ・マコニ(George Makoni)氏と、ハラレの西に位置するチェグトゥで教会集会を主催しているある地元牧師を、恣意的に逮捕・拘束した。教会集会には事前の届け出は義務づけられておらず、マコニ氏と牧師はその後立件されることなく釈放された。

ハラレとブラワヨの警察は2月13日と14日、ウィメン・オブ・ジンバブエ・アライズ(以下WOZA)のメンバー約190人が年に1度行うバレンタインデーの「愛」デモを強制的に中断した。その上でWOZAの国内コーディネーターであるジェニィ・ウィリアムズ(Jenni Williams)氏などのデモ参加者を逮捕・拘束し、一部を警棒で暴行。弁護士らが介入したころから、逮捕・拘束されたデモ参加者たちは立件されずに釈放されている。

警察は2月11日、マスビンゴにある「全国NGO協会(以下NANGO)」と「コミュニティ・寛容・和解・開発(以下COTRAD)」およびハラレにある「ジンバブエ平和計画(以下ZPP)」の事務所を家宅捜査した。事前調整されたとみられる一斉捜索だった。

ZANU-PFの支配下にあるジンバブエ選挙管理委員会(以下ZEC)は3月8日、警察の捜査対象であるNGOによる国民投票と選挙の監視活動を禁じる、と発表。この決定は、ZPP、ジンバブエ人権協会(以下ジンライツ)、ジンバブエ選挙支援ネットワーク、ジンバブエ危機連合といった主要なNGOのジンバブエにおける活動に直接影響を与えてしまう。

NGOに対する最近の警察の対応は、警察最高幹部の承認のもとで行われているとみられる。ジンバブエの警察幹部らが出席して昨年11月に開催された「上級警察官会議」では、きたるべき国民投票に対し、NGOと市民社会団体による「悪影響と破壊活動が懸念される」と指摘する公式声明が承認された。

「それぞれの分野で活動する全団体の活動記録を取りまとめ」、「団体の活動に関してその指導者と意見交換し」、「法の規定外で活動していることが判明した団体に対して適切な措置を取る」など、団体の「活動監視に関して諸情報機関を効果的に活用する」ことを、その声明は決議している。

この決議と類似の決議は、昨年12月に全治安機関責任者が出席したZANU-PFの年次会議でも採択されている。ZANU-PFは、「政府が認可事項からはずれた活動をしている団体の登録抹消を執行するよう、我が党に指示する」旨も決議した。

それらの声明が承認された直後から、警察は継続的かつあからさまに組織的なNGOに対する嫌がらせ活動を始めた。警察は昨年12月13日にジムライツの事務所を家宅捜査、同団体の職員1人を含む4人を逮捕した。1カ月後の1月14日には、ジムライツ全国代表オーケイ・マチサ(Okay Machisa)氏を逮捕。逮捕理由が同団体の代表であるためであることは明白だが、表向きは有権者登録キャンペーン関連の容疑だった。同氏は保釈されるまで2週間以上拘束された。

ZANU-PFのサヴィオール・カスクウェレ(Saviour Kasukuwere)青年育成・現地化大臣は1月18日、すべての青年団体にジンバブエ青年会議への登録を義務づけ、登録しない場合は非合法化されるという規則を正式に承認した。それにより、青年会議の承認がなければ青年団体は資金や寄付を受けられなくなり、更に登録団体の全会員および傘下の団体は、青年会議に法外な年会費を支払うことを義務づけられた。この規則は、全国にある青年団体の活動の障害となる可能性がある。

ブラワヨでは1月、有権者登録を推進する運動を始めた「ナショナル・ユース・フォー・デモクラシー・トラスト」に対し、警察が同団体のメンバー40人以上に逮捕や嫌がらせを行った。

前出のカサンバラ ディレクターは、「NGOへの警察による組織的な弾圧は、その活動を妨害し、選挙に向けての人権状況の監視活動を妨げる狙いがあるとみられる。ジンバブエ政府は、NGOの自由な活動を尊重し、そのための民主的空間を保護すべきだ」と指摘する。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは南部アフリカ開発共同体(SADC)のメンバー国に対し、信頼できる自由で公正な選挙の前提となる環境づくりの極めて重要な要素として、NGOが政府から嫌がらせを受けることなく自由に活動できるよう、ジンバブエ政府に働きかけることを強く求めた。

カサンバラ ディレクターは、「NGO活動家への弾圧、嫌がらせ、脅迫を行っている現状では、ジンバブエ政府当局が選挙に必要な人権を尊重した環境作りをするとは期待できない」と指摘する。

More reporting on: