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北朝鮮:国連人権調査委員会を創設すべき時

組織的かつ深刻な人権侵害を報告するため 国連による調査が必要

(ジュネーブ)-国連人権理事会の理事国は、2月から3月にかけて開催される会期で、「北朝鮮の人権侵害に関する調査委員会」(以下、北朝鮮調査委)に関する議案に対し賛成すべきである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日、「北朝鮮に関する調査委員会についてのQ&A」を発表。なぜ調査委が緊急に必要なのか、どうすれば設立できるのか、何を調査すべきか、北朝鮮政府に国際人権保護基準を守らせようとする国連人権理事会の努力を北朝鮮調査委がいかに後押しできるのか、などの疑問に詳細に答える内容となっている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのジュネーブアドボカシーディレクターのジュリエット・デ・リベロは「数十年にわたり、北朝鮮は世界で最も組織的かつ深刻な人権侵害を、虚勢と無視という壁の下に隠し続けてきた」と語る。「今こそ国連人権理事会は、政治犯収容所や外国人拉致などの北朝鮮の人権侵害に関する公式かつ本格的な報告を作成し、この問題に対処するべきときだ。」

集団処罰(連座制)、政治犯収容所内での強制労働、組織的な拷問と超法規的処刑、レイプや性的虐待、国民の大部分からの食糧収奪、韓国人や日本人などの外国人拉致など、北朝鮮では延々と続く人権侵害が行われている。国連特別報告者の承認・協力の拒否、北朝鮮の人権状況に関する国連決議の否認など北朝鮮の人権保護に関する国連諸機関に対する非協力姿勢は、最近では北朝鮮政府の国連代表が2013年11月初旬に出した声明でも明らかである。北朝鮮政府代表は、「特別報告者の報告は・・・北朝鮮人民共和国に対する米国と欧州連合の敵対的政策の産物にすぎず、人権問題に関する政治利用、ダブルスタンダード、選択(セレクティビティ)の典型的事例だ」と決め付けた。国連人権理事会の普遍的・定期的審査制度に参加していながら、北朝鮮はプロトコルに従うことを拒否し、他の理事国からの勧告があったとしても、どの勧告を受け入れるのかを表明することを拒否した。

ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官は1月14日、「北朝鮮は、世界最悪の人権状況の国の1つであるにもかかわらず、そのことがほとんど理解されず報道もされていない」と指摘し、北朝鮮国内の「重大な犯罪に対する本格的な国際調査(full-fledged international inquiry into serious crimes)」を求めた。更にピレイ高等弁務官は、北朝鮮における「遺憾」な人権状況は、「国民のほぼ全部に影響を及ぼすと共に、世界の何処にも並び立つ所はない」と指摘、更に北朝鮮政府の「鎖国政策」が、「21世紀では信じられない程に自国民を虐げること」を可能にしていると述べた。

政治犯収容所に関しピレイ高等弁務官は、「収容所は、反対意見を表明するなどの合法かつ平和的な活動をした個人を罰しているだけではなく、人道に対する罪を構成する可能性のある、拷問その他残酷で非人道的な処遇、即決処刑、レイプ、奴隷労働、集団処罰を含む、広範な人権侵害に関与している」と指摘。「これまで長年にわたり、北朝鮮人民共和国政府は、人権理事会が任命した北朝鮮人民共和国における人権状況に関する歴代の特別報告者や人権高等弁務官事務所に対する協力を一貫して拒否してきた。従って、また変わることのない事態の重大性ゆえに、私は、世界最悪であるにも関わらず、殆ど理解も報道もされていない人権状況に対する徹底的な調査が、完全に正当化されるだけでなく、遅きに失していると考えている」と述べた。

ピレイ高等弁務官の今回の声明は、北朝鮮の人権侵害に対する特別報告者マルズキ・ダルスマン氏の姿勢と重なる。ダルスマン特別報告者は最新の報告書の中で、国際社会に自身が指摘した「政治犯収容所の広範な利用、劣悪な刑務所環境、強制労働・拷問・体罰」などの人権侵害に対して「より詳細な調査のメカニズム(more detailed mechanism of inquiry)」を設置することを求めた。餓死をもたらすほどの食糧配給状態、病気、危険な環境での強制労働、看守によって時には命まで奪われるほどの虐待を受けるなどを含む非人道的な環境の収容所に、推計15万から20万の政治犯が裁判なしで拘束されている。

北朝鮮調査委の人権侵害に対する調査は、国連に任命された中立的・優秀な専門家らにより徹底的に行われる。北朝鮮の被害者の声を調査委は真摯に聞くことになる。なぜなら北朝鮮国内でそうした声をあげることは報復処罰を招き不可能だからだ。

国連人権理事会での北朝鮮決議における主要提案国である日本政府とEUは極めて重要な役割を担っている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、現国連特別報告者マルズキ・ダルスマン氏を長とし、その他の優秀な国際的専門家らからなる調査委の設立を求めた。

前出のリベロディレクターは「国連人権理事会理事国は、ピレイ人権高等弁務官が呼びかけた北朝鮮調査委の設立要請に前向きに対応するべきだ」と語る。「北朝鮮の人権侵害を顕在化させ、北朝鮮政府が人権保護基準を無視することがなくなるように、世界各国政府の団結した取組みが必要とされている。」 

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