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国連:出来レースの理事国選挙 人権理事会を弱体化

日本など新選出の理事国は 人権保護への一層の取り組みを

(ニューヨーク)-国連人権理事会の理事国選挙が、競争がほとんどなく出来レースとなっている現状は、国連総会が定めた人権理事会の水準を損なう、と人権3団体(ヒューマン・ライツ・ウォッチ、フォーラム・アジア、東アフリカ及びアフリカの角地域におけるヒューマン・ライツ・ディフェンダー・プロジェクト)が本日抗議した。国連総会は、2012年11月12日、国連人権理事会の理事国18カ国を選出したが、議席を得るのに選挙の洗礼を受けたのはそのうちたった3カ国だった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのグローバル・アドボカシー部長ペギー・ヒックスは、「総会での出来レースを“選挙”と呼ぶことは、現状を美化している。国連人権理事会入りに向けて真の競争が行われなければ、せっかく定められた理事国の『選任基準』も絵に描いた餅のままだ」と指摘する。

人権理事会の議席は、地域グループごとに割り当てられている。西欧州その他グループ(Western Europe and Other Group、以下WEOG)だけが、定数を超える立候補国を立てた。WEOGではドイツ、ギリシア、アイルランド、スウェーデン、米国の5カ国が立候補して3議席をめぐって争い、結果的にはドイツ、アイルランド、米国が理事国入りを果たしている。

  WEOG以外の地域グループから選出されたのは、アフリカグループからコートジボワール、エチオピア、ガボン、ケニア、シエラレオネの5カ国、アジアグループから日本、カザフスタン、パキスタン、韓国、アラブ首長国連邦(以下UAE)の5カ国、東欧グループからエストニア、モンテネグロの2カ国、中南米・カリブグループから、アルゼンチン、ブラジル、ベネズエラの3カ国。

国連人権理事会の理事国となるには、設立決議である国連総会決議60/251のもと、人権の「最高水準を維持する(uphold the highest standards)」と共に、人権理事会に「十分協力する(fully cooperate)」ことを求められている。

  国連人権理事会の質を改善するために活動しているNGOのグループは、理事国入りを狙う国の一部(エチオピアパキスタンUAEベネズエラ)に対して、各国内での人権状況に対する懸念ゆえ、立候補に当たって自国内での人権問題の改善に向け具体的な措置をとるよう求めていた。 

「人権理事会に選出された国々の政府は、来年1月、ジュネーブの理事会で獲得した席に座る前に、自国での人権問題に関する懸念に対処すべく、実質的な措置をとるべきだ。たとえばパキスタン政府は、宗教的少数派に対する差別と襲撃を防ぎ、人権活動家とジャーナリストをまもり、強制失踪をなくすといったことのために、具体的な改善措置をとってから理事会に出席するべきである」と人権と発展のためのアジア・フォーラム(フォーラム・アジア)」代表ヤップ・スウィー・セン(Yap Swee Seng)は指摘する。「アジアグループの一員である日本政府は、より質の高い理事会の実現に向けて無風選挙に終止符を打ち、アジアグループに競争を導入するよう、声をあげるべきである。」

アフリカグループ諸国は、理事国の水準を満足させるかにかかわりなく、あらゆる国に事実上議席を保証するローテーション制をとり、選挙の競争原理を骨抜きにしてきた。アフリカ諸国のうち比較的健全な人権状況の国々も、アフリカグループのこのお決まりの立候補国「閉鎖」リスト手法に異議を申し立てないできた。

  ケニア政府が今年7月末、人権理事会への立候補を表明した際、アフリカグループがこの手法ととうとう決別するかにみられた。しかし、スーダンが国際的圧力の結果立候補を辞退し、アフリカグループは再び5議席に対し立候補国5カ国だけという、例年通りの「閉鎖的立候補国リスト」を提出する結果となってしまった。

「アフリカグループのこのローテーション制は、毎年、エチオピアなどの重大な人権侵害国家の当選を事実上保証してきた。選挙に競争という良薬を注入すれば、より質の高い理事国が選ばれ、人権理事会がより成果を出す組織になるはずなのに」と、東アフリカ及びアフリカの角地域におけるヒューマン・ライツ・ディフェンダー・プロジェクト(EHAHRDP)事務局長のハッサン・シーレ(Hassan Shire)は述べる。

  人権NGOのグループは、過去、ベラルーシ(2007年)、スリランカ(2008年)、アゼルバイジャン(2009年)の人権理事会の理事国当選に反対する運動を繰り広げ、成功。またイラン(2010年)とシリア(2011年)も、人権NGOからの圧力で立候補を辞退している。しかしリビア(2010年)やキューバ(2009年)、サウジアラビア(2009年)を含む数多くの人権侵害国家が、競争の洗礼を受けることなく人権理事会の理事国に選出されてきたのが、国連人権理事会の実態である。

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