ロヒンギャ民族住宅への広範囲にわたる破壊が衛星画像で明らかに
2012年10月27日
ビルマ政府は、悪質な暴力にさらされているアラカン州のロヒンギャ民族に、大至急安全を提供する必要がある。衝突が起きた根本原因への対処に取り掛からなければ、事態が悪化するのは明白だ。
フィル・ロバートソン、アジア局長代理

(ニューヨーク)-ビルマ政府は、同国西部アラカン州のイスラム教のロヒンギャ住民に対する宗教暴力を止めさせると共に、同州のロヒンギャ民族とアラカン民族双方への保護と援助を確保するために、直ちに対策を講じなければならない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは新たな衛星画像を入手。これによると、新たな衝突と国内難民が発生した地域のうちの1つ、イスラム教のロヒンギャ民族が大多数を占める海辺の町チャウピュー(Kyauk Pyu)で、住宅などの資産が大規模に破壊されたことがわかる。

2012年10月24日に行われたとみられる焼き打ち攻撃の後、24時間以内に撮影された衛星画像で、ヒューマン・ライツ・ウォッチはチャウピューの東部海岸端において、811棟の建造物が破壊されているのを確認。破壊地域の面積は35エーカー(14ヘクタール強)で、そこに633棟の住宅と海岸に沿って178隻のハウスボート及び艀(はしけ)があったが、それらの全てが焼けていた。その破壊が行われた地域の西側と東側に隣接した場所では、焼き打ちによる損傷は見られなかった。ロヒンギャ民族の住民の多くが、200km北に位置するアラカン州の州都シットウェに向けて海路で脱出したと、メディア報道と地元当局は伝えている。

10月21日、仏教徒のアラカン民族とイスラム教徒のロヒンギャ民族の間で再び衝突が発生。その後1週間、同州の少なくとも5つの町、ミンビャ、ムラウー、ミェボン、ラーテーダウン、チャウピューで衝突が続いた。宗派衝突と、関連した治安部隊によるロヒンギャ民族に対する人権侵害が7月初旬に始まって以降、チャウピューやほとんどの他の地区において衝突が起きたのは初めてだ。ロヒンギャ民族は暴力の矢面に立たされている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンは「ビルマ政府は、悪質な暴力にさらされているアラカン州のロヒンギャ民族に、大至急安全を提供する必要がある。衝突が起きた根本原因への対処に取り掛からなければ、事態が悪化するのは明白だ」と指摘。

ビルマ政府は当初、新たな衝突で2,800棟以上の住宅が焼き落とされ、112人が殺害されたと説明していたが、後に死者数は64人に減らされた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、暴力から逃げてきた目撃者らの訴えと、ビルマ政府がこれまでもしばしば信頼できる証拠に反して過小評価をしてきた過去を踏まえ、実際の死者数が遥かに多い可能性を懸念している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、6月の激しい宗派間衝突の際、ビルマ治安部隊がイスラム教徒のロヒンギャ民族と仏教徒のアラカン民族双方への保護を怠った後、ロヒンギャ民族を殺害・レイプ・集団逮捕した実態を取りまとめている。それ以来、政府はロヒンギャ民族コミュニティーへの人道援助を制約し、一時104,000人にも達した国内難民の多くを、食糧・避難先・医療が不足する深刻な状態に追いやっている。

今回の衝突発生の前、地元のアラカン民族住民は日常活動を取り戻していた。未だに、推計75,000人の国内難民(以下IDPs、大多数がロヒンギャ民族)が、シットウェとチャウトーにある少なくとも40ヶ所のIDPキャンプ内に避難している。最も大きな15個の難民キャンプはシットウェ周辺に設置されている。

シットウェの推定人口は20万人で、仏教徒とイスラム教徒が半々である。現在、シットウェのロヒンギャ民族とイスラム教徒の非ロヒンギャ民族の大部分は、IDPキャンプ内に隔離されており、シットウェにはイスラム教徒がほぼ存在しない状態だ。

ビルマ政府はロヒンギャ民族の殆どに国籍を認めず、それに付随する保護も提供していない。6月にロヒンギャ民族とアラカン民族の間の衝突が発生して以来、ロヒンギャ民族の多くは、十分な人道援助の受給を許されず、アラカン民族民兵の襲撃を受けやすい、アラカン州内にある不潔なキャンプでの生活を強いられてきた。

テイン・セイン大統領は2012年初めに、衝突の原因究明に向けた調査委員会を指名したが、その原因に対処する何の政策も打ち出していない。大統領は時折、ロヒンギャ民族の隔離とビルマからの追放までも求め、それが一般住民のロヒンギャ民族に対する敵意を煽っている。野党指導者のアウンサンスチー氏は、アラカン州での「法の支配」の確立を求めてはいるが、和解の促進やビルマ国籍法上のロヒンギャ民族への処遇差別廃止に向け、彼女自身が持つ道義的権威を行使していない。

衝突が最近再発し、ロヒンギャ民族が新たに数千人難民化している事態を鑑み、同州での人道援助の必要性はますます強まった、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。人道援助機関は、被害を受けたロヒンギャ民族が暮らす遠隔農村地域へのアクセスが全くもしくはほとんどなく、またいくつかのIDPキャンプ内でも適切な住む場所・水・衛生・医療・教育・その他支援を必要としている。更に、衝突前に提供されていた国連と国際機関によるロヒンギャ民族住民への人道援助プログラムは、6月に中央政府によって全て一時停止とされた。その後再開が許されたプログラムは一部に限られている。

ビルマに約100万人存在するロヒンギャ民族は、数十年にわたりアラカン州に居住しているにも拘らず、1982年に成立した市民権法によって、事実上国籍を剥奪されていた。ロヒンギャ民族とアラカン民族のコミュニティーは、ビルマ当局により繰り返される人権侵害を長年経験してきた。

「アラカン州における秩序を公正に取り戻し、基本的人権を保護するために、十分な治安部隊を派遣することが必要だが、それだけでは十分ではない。ビルマ政府当局者と野党指導者は、衝突を非難し、アラカン州の民族問題を恒久的に解決するために努力する必要がある」とロバートソンは語っている。 

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