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ASEAN:ビルマの人権状況改善には具体的な指標が必要

政府に政治囚釈放に向けた圧力を、戦争犯罪の不処罰に終止符を

(マニラ)-東南アジア諸国連合(ASEAN)はビルマが2014年に議長国に就任する条件として、人権問題に関する明確で具体的な指標を設けるべきだ、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。

指標に盛り込まれるべき事項としては、全政治囚の即時釈放、非暴力の反政府行動を弾圧する法律の廃止、民族紛争地域での人権侵害の停止、戦争犯罪実行者に対する真相究明と責任追及がある。

「ビルマはASEANにとって、同国を2014年の議長国にしても取り除けない長年の重荷だ」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理エレイン・ピアソンは指摘する。「ASEANは人権状況の改善に関する明確で具体的な指標を設定し、その進捗を詳しくモニタリングする必要がある。」

5月と10月に計2回恩赦が行われたが、政治囚の釈放は316人に過ぎず、ビルマ政治囚支援協会(AAPP)の推計によれば現在も政治囚1,669人が獄中にある。また国民民主連盟は、政治囚や家族と接触した自党の弁護士、ソーシャル・ワーカー、各地の党員からの情報を元に政治囚591人分の部分的なリストを作成した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはASEAN諸国の指導者に対し、ビルマ政府に強く働きかけ、非暴力の政治活動に関する罪で収容されていると見られる囚人1,669人全員の釈放を実現するよう求めた。ビルマ政府は、政治的な動機に基づいて収容されている人びとについて、有罪理由がビルマの抑圧的な治安立法によるものか、一般刑事犯罪かを問わず、全員を釈放すべきである。釈放後の再逮捕を確実に防止するため(過去の発生例を踏まえて)慎重なモニタリングが行われるべきだ。

ビルマ政府は、全土のあらゆる政治囚の状況に関して適切な報告を行い、責任を履行すべきだとヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘する。ビルマの司法制度と行刑制度が透明性を欠き、政府が政治囚を僻地の刑務所に移送し、赤十字国際委員会(ICRC)などの独立した機関によるアクセスを拒否していることを考えれば、全政治囚の家族は多大な困難に直面している。政治囚一人ひとりについてそうしたアカウンタビリティの義務を負うのは、家族でもNLDなどの野党でも外部の組織でもなく、ビルマ政府自身だ。

「ASEANはビルマ政府に対し、国際的圧力をそらす切り札として政治囚を利用するのを止めるよう伝えるべきだ」と前出のピアソンは述べた。「ASEAN加盟国は、ビルマの全政治囚に関して完全な形で説明がなされ、責任が履行されること、そして政治的理由で収容されている人物全員の即時釈放を確実に実現させなくてはならない。」

ASEANはビルマ政府に対し、非暴力の政治活動を弾圧する法律すべてを撤廃するよう求めるべきだとヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘する。新議会では労働組合の結成に関する法律のほか、平和的な集会を許可する法律、そして国民民主連盟の参加に道を開きうる政党登録法の改正案も成立した。ASEANは最近ビルマで行われた一連の法律改正についてモニタリングを行い、こうした法律が基本的権利を保障する方向で確実に運用されるようにすべきだ。

ASEANはビルマ政府に対し、民族州での重大な人権侵害を停止し、責任者を訴追するよう強く働きかけるべきだとヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。戦争犯罪に相当するカチン、シャン、カレン三州での深刻な人権侵害は2011年に激化した。6月以降に民間人3万人以上が、ビルマ国軍の人権侵害(非合法な強制労働の使用、超法規的処刑、民間人への攻撃など)によりカチン州で避難民となった。うち数千人が国境を越えた中国側で難民となっている。

紛争地域で進行中の人権侵害が示すのは、ビルマ国軍内部に依然はびこる不処罰の文化だ。ヒューマン・ライツ・ウォッチはASEANに対し、国際人権法と国際人道法の違反行為に関する国連調査委員会の設置を支持するよう重ねて求めた。またこうした調査にビルマを協力させるよう働きかけることを強く求めた。

「ASEAN各国の首脳は、ビルマでASEANサミットを開催するかどうかは、同国政府が現在進行中の人権侵害行為に対処し、実行者の責任追及を行うかにかかっていることをはっきりさせるべきだ」とピアソンは述べた。「こうした措置の実施とは、ビルマでの戦争犯罪の被害者に正義をもたらすために必要な段階の一つとして、国際調査委員会の設置を実現することなのだ。」 

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