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(マナマ)バーレーン政府当局は、著名な活動家7人を直ちに解放するとともに、2011年3月17日に逮捕された外科医1人を直ちに釈放すべきである。釈放しない場合は、刑事法上処罰規定の存在する罪で起訴するとともに、逮捕された人びとに、独立した司法機関(裁判所)の審査を受けさせるべきである。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本日こう述べた。重ねて、バーレーン政府当局に対し、彼らの所在を明らかにするとともに、弁護人と家族に彼らへの面会アクセスを与えるよう要求した。

バーレーン国営テレビは3月17日、バーレーン治安部隊が「体制打倒を目指し、諸外国と情報授受を行っていた、扇動的な政治闘争の煽動者数人」を逮捕したことを発表した。その発表は、「市民を殺害し、私有財産を破壊する」暴力を誘発させたと7人のデモ指導者非難するものだった。3月15日、ハマド・ビン・イサ・アール・ハリーファ国王は3ヶ月間の非常事態宣言を発令。今なお続く平和的な抗議デモを、なんとか鎮圧しようと画策を続けている。

「民主主義を求める平和的なデモにおいて指導的な役割を果たしたというだけの理由で、バーレーン政府は極めて恣意に、彼らの自由を奪っている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局長代理ジョー・ストークは述べる。 「逮捕された活動家たちの弁護士も家族も、どこに、そして誰によって彼らが拘束されているのかさえ、現時点でも知らされていない。」

バーレーン政府治安部隊は3月17日、午前2時から5時にかけて活動家7人を逮捕。外科医のアリ・アレクリ氏(Ali Alekry)も同日中に拘束された。 その7名とは、国民民主行動協会の指導者であるエブラヒム・シャリフ(Ebrahim Sharif)氏、及びハック自由民主運動の指導者であるハッサン・ムシャイマ(Hassan Mushaima)氏、ウェファク(al-Wefa)イスラム運動の指導者であるアブド・アル-ワッハーブ・フセイン(Abd al-Wahab Hussein)氏、ハック自由民主運動の幹部であるアブドュル・ジャリル・アル-シナス(Abdul- Jalil Al Singace)氏、そして聖職者であり政治活動家であるシャイク・サイード・アル-ヌリ(Shaikh Saeed al-Nuri)氏、同じく聖職者でありかつ政治活動家であるシャイク・アブド・アル-ハディ・アル-ムフザー(Shaikh Abd al-Hadi al-Mukhuther)氏、失業者委員会のメンバー、ハッサン・アル-ハダッド(Hassan al-Haddad)氏である。

アレクリ医師が逮捕されたのは、バーレーン最大の公共医療機関であるサルマニヤ(Salmaniya)総合病院を治安部隊が包囲した際のこと。聖職者であり政治活動家のシャイク・ムハンマド・ハビブ・アル-モダド(Shaikh Muhammed Habib al-Moqdad)氏も現在行方がわかっていない。ただ、ヒューマン・ライツ・ウォッチは彼が逮捕されたという情報の真偽について独自に確認できていない。

シャリフ氏、アル-シナス氏、ムシャイマ氏、そしてフセイン氏はそれぞれ民主化改革を求める団体の幹部で、これらの団体は緩やかな連合体を形成している。シャリフ氏の世俗的な左派国民民主運動(ワアドWa'ad)と、シーア派の野党グループ(アル-ウィファ-クal-Wifaq)は、バーレーンが立憲制へ転換することを求めていた。また、ムシャイマ氏、アル-シナス氏及びフセイン氏は、君主制の廃止を求める「共和制に向けた連合(Coalition for a Republic)」を結成していた。シャイク・アル-ヌリ氏、シャイク・アル-ムフザー氏、シャイク・アル-モダド氏は、権力構造のより根本的な変革を求める勢力と近い人物と見られていた。

アレクリ医師は、2月17日の早朝、真珠広場において政府がデモ隊を攻撃した結果、バーレーン国民4人が死亡した事件に関する最も著名な批判者。近時は、アレクリ医師が中心となって、負傷したデモ参加者の治療を政府が妨害している事実を明らかにしていた。

シャリフの妻であるファリダ・コラム(Farida Qolam)は3月17日に夫が逮捕されたことについて詳述してくれた。午前1:50頃、ドアのベルが鳴ったのを聞いてシャリフ夫婦がドアを開けると、門の外に黒い平服を着た覆面の集団が見えた、という。1人がシャリフに銃を向けると、シャリフは、彼に対し銃を降ろして下さいと丁寧に言った、という。

シャリフ夫婦が繰り返し男たちに身元を尋ねたところ、ついに1人が「国の治安部隊」(amn el dawla)と明かしたという。その覆面集団は門を開けるよう命令、シャリフは彼らと話そうと門の外へ出た。妻コラムの証言によれば、合わせて35人から40人のうち6人が銃を持っていたという。彼らはシャリフをどこかに連行していってしまったが、その場所は今もわかっていない。

活動家たちの弁護士2人がヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによれば、弁護士たちは、治安部隊が活動家を逮捕した数時間後には、文民検察局および軍検察局両方に、逮捕された活動家と接見する要求書を提出した。しかし、当局はこれを拒否し、活動家の拘束状況について一切情報を明かさなかったという。

また、弁護士らはヒューマン・ライツ・ウォッチに対して、戒厳令下、治安部隊の行動を制限する法律がバーレーン法上存在しないと語った。バーレーン憲法36条(b)の覚書によれば、「緊急事態」の場合、政府は、国内の治安の維持のため必要な限度で、人びとの権利と自由を制限する権限を有するとのみ記されている。

緊急事態権限を行使することによって、国家は恣意的に自由を奪い、あるいは非公式拘束を正当化することは国際法上許されない。また、推定無実を含めた公正な裁判の根本原則からも逸脱できない。緊急事態が合法的に宣言されている場合に行政拘禁されている人であっても、逮捕後速やかに司法機関(裁判所)に審理され、拘禁の理由を告知されるとともに、弁護士や家族への迅速な面会の権利を有している。また、公平な聴聞の機会において、拘禁の合法性に対して異議を申し立てる権利を認めるとともに、虐待や恣意的な拘禁に対し救済を求めることも許可されなくてはならない。

バーレーン政府が2006年に批准した市民的及び政治的権利に関する国際規約は、「国民の生存を脅かす」緊急事態の場合において、その緊急事態の存在が公けに宣言されているときは、一定の権利の制限を可能にしている。国連規約人権委員会(国家の条約遵守状況を監視する国際的な専門家機関)によれば、緊急事態におけるいかなる権利の逸脱も、例外的かつ一時的でなければならない。そして「事態の緊急性が真に必要とする限度において」厳密に限定されるべきである、とする。生命に対する権利や、拷問又は残虐な、非人道的な、若しくは品位を傷つける取扱いを受けないといった基本的人権は、緊急事態においても、常に尊重されなければならない。

「我々の知る限り、バーレーン政府当局はいわゆる国家保安法の下の規則やルールを一切公開していない」と前出のストークは述べる。「政府当局は何でも望み通りに行動できると思っているようだが、それは誤りである。」

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