イラン暦年末に大量逮捕とウェブサイト強制閉鎖
2010年03月24日
イラン政府は外国諜報機関の関与説や陰謀説を飽きもせずに再度持ち出して、数少ない国内の野党勢力や政権を批判した人びとを沈黙させようとしている。これは人権活動家を攻撃する理由をひねりだそうとする当局の必死の戦術と思われる。
ジョー・ストーク、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局長代理

(ニューヨーク) - イラン国営メディアと司法権、治安部隊はこの数週間、「サイバー戦争」からの防衛と称して人権団体への組織的攻撃を行っている。

当局は人権活動家の恣意的逮捕、人権団体が運営するウェブサイトの閉鎖のほか、市民団体が外国の諜報機関やテロ組織と共謀していると非難するメディア・キャンペーンを行っている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局長代理ジョー・ストークは、「イラン政府は外国諜報機関の関与説や陰謀説を飽きもせずに再度持ち出して、数少ない国内の野党勢力や政権を批判した人びとを沈黙させようとしている」と述べる。「これは人権活動家を攻撃する理由をひねりだそうとする当局の必死の戦術と思われる。」

イラン暦新年を約1週間後に控えた2010年3月13日、テヘラン一般革命検察庁は、CIAが資金提供する「サイバー戦争」計画に関与し現体制の不安定化を企図したとして、30人が治安部隊に逮捕されたと発表した。

検察庁は、反体制組織のネットワークが、コード・ネーム「イラン・プロキシ」なるこの計画を実行したと主張した上で、人権報告者委員会と人権擁護協会、「イラン人権活動家」などの国内人権団体を名指しした。検察庁は誰をいつ逮捕したかは明らかにしていない。

政府は公然とこれらの団体を攻撃し、イラン人権活動家が運営する複数のウェブサイトを閉鎖した。検察庁を監督する司法権は、この「ネットワーク」が様々な罪を犯したと非難しており、容疑として国営ウェブサイトへの不正侵入、国外の反政府組織やテロ組織(非合法組織のモジャーヘディーネ・ハルクなど)の組織化や支援、違法な抗議行動の実施、虚偽の情報の流布、「心理戦争」や諜報活動への関与などを挙げている。しかし当局はこれらを裏付ける具体的な証拠をいずれも提示していない。

政府は、彼らが存在を主張するこの「計画」への関与を理由に逮捕された30人の身元を公表していないが、イランの人権団体側は、治安当局による最近数週間の弾圧で逮捕された活動家の一部が含まれているのではないかと懸念している。ファールス通信やケイハーン紙、ゲルダブ(革命防衛隊組織犯罪捜査本部のサイト)など政府関係メディアに一連の記事が掲載された直後から、検察庁は人権報告者協会が「イラン・プロキシ」計画の準備と実行を支援したと非難した。協会自身の説明によれば、協会は全イラン国民の生活向上のために人権侵害を記録、報告することを目的とした独立・無党派の組織だ。

協会の報道官はヒューマン・ライツ・ウォッチに対して次のように語った。「逮捕された人の家族によると[人権活動家の]自宅に現れた当局者が手にしていた逮捕令状に「サイバー」の語があった。一連の容疑が明らかになったことで、家族はようやく当局の意図を理解し始めた。」

一連の記事によれば、政府は人権報告者協会の中央執行委員会10人のうち3人の身柄を拘束した。シーヴァー・ナザルアーハーリー、クーヒャール・グーダルジー、ナヴィド・ハーンジャーニーの3人はエヴィーン(エヴィン)刑務所に、立件・起訴なしで何週間も拘束されている。ナザルアーハーリーとグーダルジーは2009年12月に、ハーンジャーニーは2010年3月に逮捕された。

「サイバー戦争」計画に関与したとして政府が名指しした他の2組織は、ノーベル平和賞受賞者シーリーン・エバーディー(シリン・エバディ)氏が代表を務める人権擁護協会(CDHR)とイラン人権活動家(HRA)。両者は共にイラン国内の人権状況改善を目指す非政治的な組織と主張している。

治安当局によるHRAへの最近の攻撃は特に際だっている。ヒューマン・ライツ・ウォッチにもたらされたある書簡で、HRAは2010年3月2日に「構成員や同志の逮捕を目的とした、治安部隊による大規模で組織的な作戦」が行われたと指摘。この書簡によれば、グループの構成員やシンパ29人が逮捕の標的となり、15人が実際に捕まった。逮捕された者は一人としていかなる容疑でも起訴されていない。この中には、元代表で今は国外在住のケイヴァーン・ラフィーの女姉妹にあたるファリデフ・ラフィーが含まれる。HRA側はファリデフが組織の構成員ではないと主張している。

3月14日にウェブサイト「ゲルダブ」は、「人権活動家の皮を被って運営されていた[......]スパイ・ネットワークに属する29のウェブサイト」の閉鎖に革命防衛隊が成功したと発表した。政府によってペルシア語と英語のウェブサイトが閉鎖された3日後、HRAは、イラン治安部隊がウェブサイト管理者の一人を拷問し、サイトのパスワードを無理矢理聞き出したと非難した。

人権団体への今回の弾圧の一環で、国営テレビは団体に関係するとされる個人の氏名や顔写真、個人情報を放映した。人権活動家側は、これらの情報の少なくとも一部はこの弾圧で逮捕された個人のハードディスクから得られたものと考えている。写真などの個人情報は、HRAなど、一部組織の幹部が反政府テロ組織と接触しているとの主張を行うために用いられた。

「『サイバー戦争』罪に問われる人物が仮にいるとすれば、それはイラン政府自身だ。当局は国内人権団体への全面的なプロパガンダ攻撃を行い、インターネット上の表現の独占を目指している」と上述のストークは述べた。

最近数週間で、これら3団体は揃って、当局が主張するところの「イラン・プロキシ」計画への一切の関与を否定する声明を出した。そして外国政府から資金提供を受けていないことを公言すると共に、イラン政府が不誠実で危険な政治工作を行っていると非難した。人権擁護協会は2008年12月に強制的に閉鎖させられたが、ウェブサイトは健在だ。同協会は今回の弾圧が「人権活動家と市民社会に対するフレーム・アップ」に他ならないとした。

ペルシア語サイト「ルーズ・オンライン」との3月21日のインタビューで、「イラン人権活動家」報道官で現在は米国在住の元学生活動家アフマド・バーテビーは、HRAが外国政府と通じているとのイラン政府の非難を退けた。バーテビーは「今日まで、HRAはいかなる団体や組織からも[金銭的な]支援は一切受け取っていない」と述べた。