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インドネシア:国軍ビジネスに対する改革 まだ「全く不適切」

軍の商業活動によって、違法行為への責任がうやむやにされ、シビリアンコントロールが阻害されている実態

(ニューヨーク)-インドネシア政府は、国軍ビジネスに対する新規制を導入した。しかし、この改革も、有害で危険な国軍によるビジネス帝国を解消する内容となっていない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表したレポートで述べた。インドネシア国軍ビジネスは、長い間、人権侵害・犯罪・汚職の原因となってきたほか、不正に対する責任の追及を妨げ、軍に対するシビリアンコントロールを阻害している。

国軍がビジネスを行っている問題を解決するため、インドネシアでは、2009年10月に大統領令と国防省規制ルールがつくられた。20ページの報告書「破られた約束:終わらないインドネシア国軍ビジネス」はこの規制の実態を詳細に検討。インドネシアでは、軍のプロフェッショナリズムとシビリアンコントロールを強化するため、2004年、国軍をビジネスから引き上げさせる内容の法律が成立した。しかし、2009年10月の大統領令とその施行令は、この2004年法の要求を満たしていない。本報告書はこの点を詳細に明らかにする内容となっている。

「インドネシア政府の改革案は全く不適切である。」とヒューマン・ライツ・ウォッチのビジネス&人権上級調査員で本報告書を執筆したリサ・ミソルは語った。「2004年法は、政府に対し、軍をビジネスから排除するよう定めている。しかし、現実には、2009年改革は、軍ビジネスの存在を認める内容となっている。ビジネスをより厳密に監視するという約束だけでは、不十分だ。」

2004年成立の法律第34号は、インドネシア政府に「国軍が直接または間接に所有または経営するビジネスをすべてを解消」するとし、その期限を5年間としている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが2006年の報告書「高すぎる代償:インドネシア軍の経済活動による人権侵害」で明らかにしたとおり、国軍ビジネスは、恐喝・暴力・財産没収など、民間人に対する犯罪の温床となっている。国軍による利益追求は利害対立を促進しているほか、予算プロセスで承認された以外の独立した収入源を軍に与える結果となっている。

会社売却やビジネスの失敗によって、膨大なインドネシア国軍ビジネスの規模は縮小の傾向にある。それでも、インドネシア共和国軍(TNI)は、今尚相当規模の資産を保有している。2007年の公式データ(入手可能な直近のもの)は、国軍が23の財団及び千以上の協同組合を所有し、これを通じて、55の会社を所有し、数千もの物件を賃貸していることを明らかにしている。国軍は、合計3.2兆ルピア(3億5000万米ドル)の資産を所有し、2007年、2680億ルピア(2850万米ドル)の利益を上げた。

本レポート「守られない約束」は、インドネシア政府に、国軍ビジネスを禁止するつもりがない実態を詳述している。スシロ・バンバン・ユドヨノ(Susilo Bambang Yudhoyono)大統領が10月に署名した命令とその施行令の内容は、国軍のビジネス活動をいくぶん制限する法律(軍の協同組合と財団は長い間この法律を無視し続けてきた)に関して、国軍がこの法律を順守しているか審査するための省庁横断監視チームを創設することとなっている。同チームは11月に設立された。

この監視チームは、インドネシア国軍や軍のビジネスに対する明確な権限を有していないほか、独立性に欠け、その職務の状況を公開することも義務付けられていないし、任務完了の期限も設けられていない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。加えて、インドネシア政府の改革案は、ビジネス活動に関係した軍の不正行為が起きた場合の責任を明確にしていないほか、個人所有形態のビジネス・民間企業からの見かじめ料・違法ビジネスなど、そのほかの数多くの国軍の金儲けの形態を無視している。

「インドネシア議会は、インドネシア政府に対し、すべての国軍ビジネスの解消を定め、その期限を5年とした」とミソルは語った。「議会のこの指示にも拘わらず、国軍ビジネスの所有権や経営権の解消に向けた計画がなにひとつない実態は、言語道断である。」

2004年法は、インドネシア政府に対し、全ての国軍ビジネスを解消することを義務付けている。2004年法は、その方法については特定していなかったものの、2008年、政府諮問機関は軍ビジネスを「清算」する方法を提案。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ユドヨノ大統領と新たに国防大臣に就任したプルノモ・ユスギアントロ(Purnomo Yusgiantoro)氏に対し、改革案を見直すよう提案。最低限でも、広範な国軍ビジネスの形態をカバーする内容に変更し、民間人による適切なモニタリングと透明性と責任の明確化を盛り込んだ計画に見直すことを求めた。

「軍ビジネスに対する改革の目的は、シビリアンコントロール強化とともに、軍の説明責任と責任追及の体制を整えることであるべきだ」とミソルは語った。「そのためには、政府が計画を見直すことが必須である。」

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