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シリア:「名誉殺人」の例外扱いの全廃を

刑法改正で前進あるも、女性を殺害した場合の減刑の余地残る

(ベイルート)-シリア政府は「名誉殺人(honor killings)」を他の殺人と同じように扱うべきで、例外扱いはやめるべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。 2009年7月1日、バッシャール・アサド大統領は、名誉殺人に対する刑罰の免除を定めた刑法548条(違法な性行為や不倫をした女性に対し、父親や男兄弟が激怒した結果、その女性の殺害に至った場合には、刑罰を免除するとした規定)を撤廃。この条項は、殺害された女性に何らかの「疑わしい行動」があり、それに基づいて殺害が行なわれた場合の減刑も定めていた。改正後の条項は、減刑の余地を残しているものの、原則として、殺人犯を少なくとも2年の懲役刑に処すると定める。

「2年の懲役は、刑罰免除よりはましだが、殺人罪に対する刑罰としては軽すぎる」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東・北アフリカ女性の権利調査員、ナディア・カリフは述べた。「シリア政府は、例外なく、すべての殺人犯を同じように罰するべきである。」

改正548条には「妻、姉妹、母親、娘が違法な性行為に至っていることを偶然に発見し、殺害、または傷害を負わせた者は、2年以上の懲役に処する」と定められた。今回の刑法改正前には、「名誉殺人」の場合、刑罰が完全に免除されていた。

名誉殺人は、女性の行動により家族全体の名誉や評判に傷がついたとの考える親族が犯す場合が多い。シリア政府は、こうした名誉殺人に関するしっかりしたデータを有していない。2006年3月29日、アルサウラ(Al-Thawra)紙は、「名誉殺人」は年間40件ほど起きている、と報じた。一方、シリアの女性差別の禁止を求める独立系ウェブサイト、シリア女性オブザーバトリー(Syrian Women Observatory)は、名誉殺人の数は年間200件近くに上ると予想している。この数が正しいとすれば、総人口1800万人のシリアで、毎月平均して16人の女性が親族に殺されていることになる。


2008年、シリア家庭委員会(SCFA)が司法庁と宗教庁とともに後援した、名誉犯罪フォーラム(the National Forum on Honor Crimes)は、548条の撤廃を含め、数々の改善点を提案。同フォーラムは、名誉感情に基づき殺害が行なわれた場合、裁判官は短期拘禁や刑期の短縮など、様々な減刑ができるとした刑法192条の改正も提言した。

「名誉犯罪フォーラムの提案は、政府に前へ進む方法を示した」、とカリフは述べた。「しかし、シリアでこの悪質な習慣をなくすには、まだ長い道のりがある。」

しかも、刑法242条によると、違法行為に激怒した結果犯された殺人については、男女をとわずに減刑の対象になる。不倫行為はシリアでは違法行為とされる。

「名誉殺人を許容する条項の1つを撤廃しながら、他の条項を手付かずにすべきでない」とカリフは述べた。「刑法548条の撤廃はほんの出発点に過ぎない。政府は、今こそ、「名誉」のための殺人を他の殺人と異なるよう取り扱っている全ての条項を改正するべきだ。」

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