政府軍は避難民を砲撃・拘束、タミルの虎は避難を妨害
2009年02月20日
民間人に対するこの『戦争』は、終わらせなければならない。スリランカ政府軍は、病院と、『安全地帯』に宣言した場所を砲撃し、そこにいる民間人たちを虐殺している。
ジェームス・ロス、ヒューマン・ライツ・ウォッチの法務・政策ディレクター

(ニューヨーク)-スリランカ政府は、北部ワンニでの民間人への無差別砲撃、および、避難民に対する強制収容政策を、直ちに止めるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書で述べた。スリランカ政府軍と分離独立派武装組織タミル・イーラム・解放のトラ(タミルの虎、LTTE )の内戦による民間人の犠牲者が、2009年1月初旬以来、急増している。

42ページの報告書「避難民に対する戦争:ワンニでの、スリランカ軍とタミルの虎による残虐行為」 は、ヒューマン・ライツ・ウォッチが、2月、スリランカ北部で行なった2週間の調査ミッションをもとに作成された。スリランカ政府は、ワンニの戦闘地域に、ジャーナリストや人権監視員(ヒューマンライツモニター)が立ち入ることを禁止しており、実態の把握が困難になっている。

「民間人に対するこの『戦争』は、終わらせなければならない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの法務・政策ディレクター、ジェームス・ロスは述べた。「スリランカ政府軍は、病院と、『安全地帯』に宣言した場所を砲撃し、そこにいる民間人たちを虐殺している。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、タミルの虎に対しても、戦闘地域から民間人が避難する事を認めること、政府支配地域に逃げようとする人々を銃撃するのをやめること、民間人居住地区の近くに軍を配備するのをやめることを求めた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、民間人の犠牲者がこの一ヶ月間で激増している責任は、スリランカ政府軍及びタミルの虎の両方にある、と述べた。現地で活動する複数の中立的なモニターによると、およそ2000名が殺害され、5000名が負傷しているという。 

タミルの虎が、スリランカ北東部海岸の短くて幅も狭い地域に追い込まれる中、タミルの虎の支配下におかれた避難民たちも、どんどんと狭い地域に追い込まれている。タミルの虎は、戦時国際法に違反して、民間人が戦闘から逃げることを許さず、政府が掌握する地域に逃げようとする者に銃撃を繰り返してきた。タミルの虎は、支配下にある民間人たちを、子どもであろうとも、強制的に徴兵したり、極めて危険な戦場での強制労働などにかりだし続けている。

「これまで、すべての戦いで敗北したタミルの虎は、タミルの民間人に対する残忍さを増している」 と、ロスは述べた。「避難しようとする者を撃ち殺し、強制徴兵と強制労働を強化している。」

スリランカ政府は、戦闘地域に閉じ込められたタミル人住民たちを、タミルの虎側の人物と推定し、戦闘員として扱う、と示唆。タミルの虎による違法行為に対し、事実上の仕返しをしている格好だ。スリランカ政府軍は、避難民でいっぱいの地帯を、繰り返し、無差別に砲撃してきた。「安全地帯」と宣言された地帯やワンニでなんとか稼動を続ける病院なども砲撃の対象となっているという報告が多数なされている。

2008年9月、スリランカ政府は、ほぼすべての人道援助機関に対し、ワンニからの撤退を命じ、そのため、ワンニに閉じ込められた民間人たちの状況は悪化した。国連は最小限の役割しか果たせず、一方でスリランカ政府の食糧や衣料品などの援助配給も、不十分だった。戦闘の継続、監視(モニター)の欠如、スリランカ政府軍とタミルの虎双方による援助物資配給のごまかしなどが、人道危機を長引かせている。

安全を求めて政府支配地域まで逃れてきた国内難民たちは、逆に、ワウニヤやその周辺にある「福祉村」という看板を背負った強制収容所に、拘束されている。スリランカ軍が管理する鉄条網で囲われたこの収容所に拘束された避難民たちは、家族全員で、自由を奪われ、移動を禁止されている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「タミルの虎からやっとのことで逃げてきた住民たちは、今度は、外界との接触をほぼ絶たれた状態で、軍の管理する惨めな強制収容所と病院に閉じ込められている」と、ロスは述べた。「政府は、避難民たちの苦しみを世間の目から逸らすため、必死になっているのだろう。」

治安対策上、政府は、到着したばかりの新規避難民たちを、公式にスクリーニングするべきである。しかし、それにも拘わらず、政府はそれをせず、明らかにタミルの虎のシンパである人びとを、秘密裏に拘束したり、あるいは、強制失踪ともいえる取り扱いをしている。スリランカ政府は、スクリーニングのプロセスを中立な人道援助機関にモニターさせるべきである。

ワウニヤの病院の状態も、強制収容所の状態と酷似している。ヒューマン・ライツ・ウォッチが病院を訪問した際、最も基本的な必需品すら不足していた。病院のベッドの多くには、シーツも、毛布も、枕もなかった。負傷者の手当てがとても追いつかないのは明白なのに、スリランカ当局は、病院職員に対し、国際機関にいかなる支援要請もしないようにと指示されている模様。実際、病院に来ることを認められた機関は殆どない。親族が患者を見舞うことも困難で、見舞った親族は、後に、治安部隊の訪問を受けるなどしている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、スリランカ政府及びタミルの虎に対し、今この瞬間も続く民間人の虐殺を直ちに止めるように要求した。両陣営とも、人道回廊(避難路)を確立し、戦時国際法を順守しなくてはならない。タミルの虎は、戦闘地域から民間人が避難するのを許可すべきである。スリランカ軍は、人口密集地域や安全地帯、病院付近に砲撃を加えるのをやめるべきである。政府支配地域にたどり着いた避難民たちは、支援の対象となるべきであって、抑留されるべきではない。スリランカ政府は、中立なメディアと人権保護団体に、戦闘地域への立ち入りを許可するべきである。

報告書「避難民に対する戦争」に掲載された証言の抜粋

1月22日におきたスリランカ軍陣地から「安全地帯」への砲撃について、ある男性の証言:

・        「猛烈な砲撃だった。特に人が集まっている所、学校の近くとか国連が食べ物を配っている所だとかが砲撃された。皆、逃げ回り、泣いていた。避難するところなんてないさ。中には、動物みたいに、木の下に隠れようとしていたひとたちもいたよ。2発の砲弾が俺の50m先に落ちて、ものすごく恐かった。砲弾が落ちた所に行ったら、一人が怪我をして、運ばれて行くところだった。二人は、道路脇で倒れていた、一人は若くて、一人は55歳くらいだった。二人とも死んでて、血まみれだった。砲撃は一日中続いた。後で沢山の人が怪我をしたり、殺されたと聞いた。」

三人の子どもの父親(35歳)が、集団で政府支配地域に避難しようとしたところ、タミルの虎の幹部に銃撃された様子を証言:

・        「150人くらいで、一緒に逃げ始めた。だけど、避難しようとしたら、スタンティラプルアム(Suthanthirapuruam)で、タミルの虎が俺たちを阻もうとした。避難のルートは、ほんの狭い道しかない。タミルの虎は、俺たちを捕まえたんで、喧嘩と言い争いになった。それで、奴らが、俺たちを撃ち始めたんだ。沢山の人が怪我をして、殺された。本当にショックを受けた。タミルの虎の支配地域から逃げ出せた時には、65人しか残っていなかったよ。ある父親は、子どもをおんぶしてたんだけど、タミルの虎から逃げてる時、子どもを落とさないように凄い力でつかんでいたもんだから、子どもの両腕の骨を折ってしまったんだ。」

タミルの虎の強制徴兵について語ったある地元住民の証言:

・        「労働者は、前線に連れて行かれて、塹壕を掘りや、幹部やスリランカ軍兵士の死体からの武器回収なんかをさせられたんだ。民間人には、ひどく危ない仕事だったよ。俺の近所の人25人くらいが、この仕事の最中に殺されたんだ。何の訓練も受けてなかった。タミルの虎の幹部たちは、家から人を連行して、それで、次の日には、その人の遺体を返すんだ。」

現地のある援助関係者は、スリランカ政府の避難民向け「福祉センター」を訪問した時の様子についてこのように述べた:

・        「キャンプにいる一人の女性と話をしました。彼女は泣き叫んでいました。年老いた母親が、負傷して病院に収容されていたのですが、2月7日にそこで亡くなったということでした。老婆の遺体は、ワウニヤに住んでいた息子に引き渡されたのですが、娘は、母親の葬式に出るためでも、キャンプを離れる事を許されなかったのです。最愛の母親の葬式にも出られず、怒り、そして、苦しんでいたのです。」

 

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