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ウズベキスタン:刑事司法制度に内在する拷問

国連委員会は、ウズベキスタン政府に対し、拷問の実施を公的に糾弾し、廃止を迫るべき

(ジュネーブ)- ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本日リリースされたレポートの中で、「ウズベキスタン政府は、刑事司法制度における拷問と虐待を依然容認し、拷問をした者に対する責任追及をせずにいる。」と、指摘した。

ウズベキスタンの人権状況は、2007年11月9日、国連拷問禁止委員会(CAT)により精査される。11月には、拷問に関する国連特別報告者(同報告者は、ウズベキスタンで組織的な拷問が行われていると結論づけた。)によるウズベキスタン訪問から5周年となる。

90頁に及ぶレポート「見捨てられる被害者:ウズベキスタンでの拷問と虐待」(Nowhere to Turn: Torture and Ill-Treatment in Uzbekistan)は広範囲にわたる拷問の実態を記述しているが、その大部分は不問に付されている。報告書は、捜査官、検察官、裁判官が、拷問と虐待を無視し、これを見逃していることや、メディアや政府が、ほとんどの場合、拷問と虐待をうやむやにしていることを明らかにしている。

「ウズベキスタンは、拷問に終止符を打ったと各国政府関係者等に信じさせたがっている。しかし、政府の発言内容と現実は全く違う。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのヨーロッパ・中央アジア担当ディレクター ホリー・カートナーは言う。

レポートは、自白やその他の証言を強いるため、個人の身柄拘束時に始まり、有罪判決言渡し時あるいはその後まで続く虐待の連鎖について詳しく述べている。ヒューマン・ライツ・ウォッチが報告した事例には、警察官が、被拘禁者を巧く言いくるめ、同人が選任した弁護士と面会させないようにしたという事例が複数ある。身柄を拘束された者は、身柄を拘束された直後、警察官から、殴る蹴るの暴力をふるわれ、脅迫されたという。身柄を拘束された時に、被拘禁者は第三者との面会や、救済を求める道を絶たれることとなる。

警察と治安機関は、被拘禁者を虐待し、目撃者や被拘禁者の家族をも脅迫する。時には、責任追及をさせないようにするため、弁護士さえ脅迫する。

「これは、決して周辺的な問題ではない。」と、カートナーは言う。「拷問禁止委員会は、ウズベキスタンにおける虐待が、刑事司法制度に内在するもので、単にほんの一握りの悪党によって引き起こされる問題ではないことを認識する必要がある。」

ウズベキスタン政府は、拷問について責任を追及された警察官の例を挙げてきた。しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチが調査したケースでは、誰1人法的責任追及されたものはなかった。裁判官は、刑事被告人が、法廷で拷問を受けたと証言・主張しても、これを取り調べないばかりか、「被告人は嘘つきだ」と決め付けたり、あるいは、刑事被告人に「捜査期間中に、告訴しておくべきだった。」などと突き放した。ヒューマン・ライツ・ウォッチがモニターしている裁判のうちの1つ事件では、被告人(39歳)は、告訴できなかった理由について次のように説明している。「一度も、刑務官等の立ち会いがない弁護士との秘密接見をさせてもらえなかったんです。もし告訴していたら、強い圧力がかかったろう。私は鉄の男ではないし、動物だって虐待されれば悲鳴を上げる。怖かったんです。だから告訴できなかったんです。」

拷問や虐待では、警棒や水の入った瓶での殴打、電気ショック、ビニール袋やガスマスクでの窒息、性的陵辱、身内に身体的危害を加えるとの脅迫等の手段がよく使われている。

レポートは、ウズベキスタン政府に対し、拷問を廃止するよう勧告している。その他、ウズベキスタン政府に対し、以下の事項を実施するよう勧告している。

  • l 拷問および他の残虐で非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約上の義務を遵守するため、即時かつ具体的な措置を講じること。
  • l 国連特別報告者が、ウズベキスタン訪問後に発表した2003年2月の勧告を、全て実行すること。
  • l ウズベキスタンにおける大規模な虐待の存在を公に認めること。
  • l 拷問と虐待の慣行について徹底した全国調査を行うこと。
  • l 拷問と虐待の禁止を完全に実行し、これが実際に尊重されることを確保するために講じる予定の措置を公表すること。
  • l ウズベキスタンの人びとが、メディアやその他の適切なフォーラムを通じて、この情報を身近に得られるようにすること。
  • l 被拘禁者が自らの権利の告知を受けることを確保し、自ら選任した弁護人との秘密接見交通を確保し、裁判において自己の弁護人と妨害なしに打合わせできることを確保すること。
  • l 拷問と虐待を行った者に対し、法律の及ぶ限り責任を追及すること。そして、被拘禁者が、報復を恐れることなく拷問に対し告訴できるよう確保すること。

本レポートは、ウズベキスタンで根強く広範囲に行われている拷問についての懸念を表明するため、拷問禁止委員会に対し、本審査の機会を十分に活用するよう要求している。また、本レポートは、ウズベキスタン当局上層部に対し、拷問の実施を公的に糾弾するよう要求している。拷問禁止委員会は、拷問や虐待との闘いに尽力している市民団体、独立メディア、国際機関の重要な役割も強調すべきである。そして、拷問禁止委員会は、このような組織が、ウズベキスタンにおいて自由かつ効果的に活動するのを確保するよう、ウズベキスタン政府に要求すべきである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国際社会に対しても、ウズベキスタン政府との外交の一環の中で、国連の反拷問機関の勧告の実施を働きかけることで、これらの機関の取組みを支援するよう呼びかけた。

「国際社会のアクターたちは、原則に則った立場をとるべきだ。ウズベキスタン政府とのすべての対話において、拷問の撤廃を主要な議題とすべきだ。」と、カートナーは述べた。

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